症例

2018年08月03日(金)

無月経 [婦人科系疾患]

41歳女性 平成29年5月下旬初診
主訴::無月経

【主訴】
5年前の夏ごろストレスから突然月経が来なくなる。約半年間様子を見ていたが兆候もなく、一度も来潮しなかった為、婦人科を受診。女性ホルモン2種類の内服を続け、4年半は毎月順調に来潮。(無月経時の半年間の随伴症状は胃もたれ、食欲減退、体重減少、便秘、痔等)。今年、月経3か月連続微出血となり(初診の約半年前〜)、女性ホルモンを強めに処方されるも月経不順が続き、閉経の不安から当院を受診される。

増悪因子:5年前のストレス
緩解因子:薬(女性ホルモン)

【既往歴】
・小学生時 肺炎
・中学生時 急性腎炎の診断を受け2年間激しい運動禁止。

【病因病理】
5年前(36歳)の突然のストレスから主訴が発症している事から、強烈なストレスが肝の疏泄作用を抑え、それが衝脈へ影響し、無月経を引き起こしたのではと思われます。東洋医学では子宮を女子胞といいます。この女子胞は、肝経、腎経と関係が深いだけでなく衝任脈や督脈とも密接です。特に、腎と衝任脈の異常は妊娠、月経等に大きな影響を及ぼします。
患者さんは、小学生時代何らかの原因で急性腎炎を発症されています。減塩等行い完治はされているものの、現在も特に下半身が多汗、下焦を表す顎に湿疹が出来やすい、尿切れや尿勢が弱く、また体表観察からも腎気の弱りが認められます
 強烈なストレスは肝気の疏泄を滞らせ、その影響は必ずと言っていい程、弱い部分に影響を及ぼします。

患者さんは無月経になってから4年半という期間、ホルモン剤で月経を起こしていました。子宮が自分で働く能力を停止してしまいます。その上、更に強いホルモン剤を服用しても微量の出血や無月経になり、腎虚から陰血不足に迄進行していると考えました。



【治療と経過】
陰血を増し気を巡らせ本来の子宮胞の機能を取り戻すように治療を開始する。

★1診目〜3診目迄:太衝穴。
陰血を補いつつ肝気の疏泄を巡らせるため、肝経の原穴「太衝」を使用。

★4診目〜11診目迄:申脈穴。
足の浮腫みが顕著なため腎経の裏、膀胱経の「申脈」で調節。

★12診目〜21診目迄:太衝か申脈どちらかを使用。
11診目ごろから月経出血量が増える。

★22診目〜43診目迄:三陰交
34診目ごろにホルモン剤をストップする。
30日経過しても月経が来ないが、様子をみるように勧める。
40診目で自力で月経来潮。(普通量)

★44診目〜現在迄:照海
2回目も順調に来潮。

【まとめ】
 数か月間、しっかり陰血を補いつつ気を巡らせる事に重点をおいて治療を続けました。すると、月経量が増え、足の浮腫み等も改善されてきました。22診目から三陰交を使用し、気血も補いつつ衝脈の気を通じさせていくことに重点をおきました。
34診目頃からホルモン剤をストップしたものの、1ヶ月間月経が来ず本人はかなり不安になってましたが、5年もホルモン剤を使用した為、子宮も中々本来の機能を取り戻すのに時間かかります。「待ってあげたら?」とアドバイスしました。
その後、月経が来た時の喜びはいうまでもありません。お会いするたびに晴れやかなお顔になっていく患者さんにこちらも嬉しさでいっぱいです。





2018年04月14日(土)

起立性調節障害 [内分泌疾患]

【主訴】起立性調節障害 11歳 男子 135cm、25kg

【症状】寝つきが悪く朝起きれない、易疲労、じっと座っていられない等。

【経過】小学校4年生から塾に通い帰宅が夜10時になる。その頃から寝つきに1時間以上かかるようになり、学校や塾で頭痛から嘔吐を繰り返す。学校も塾も無い土日には起こらない。病院で起立性調節障害と診断。学校にも塾にも全く行けなくなり来院される。自宅では読書とゲーム(1時間)をして過ごす。食欲もなく(普段から)痩せている。

【七情】真面目で正義感が強く、集中力があり感情の波が殆ど無い(母親談話)。問診中も爪を噛んだりソワソワと落ち着かない様子で口数はかなり少ない。

【その他】多汗(頭、足底と手掌)、1歳からアトピー、よく風邪(発熱のみ)を引く、副鼻腔炎。

【診断】幼いころから神経過敏の上、感情を内に込めるタイプのため、肝気(発散できないストレス)が脾胃(胃腸)の働きを抑え食欲不振を起こしていると考えました。
また、若い男子(陽体)、アトピー(熱性疾患)等体内に邪熱を篭らせ身体を潤す陰液も消耗している所、塾等のストレスでそれらが更に助長され入眠困難(陽過多陰不足)が発症したと思われます。
この様な症状が一年以上継続すると、肝の臓から心の臓(心気の巡りが悪くなり心血の不足の悪循環)の異変が生じ易くなります。

【治療方針】心血を補いつつ気鬱を緩解し心身に緩みを与える治療を施す。神経過敏の為かざすだけの古代鍼を使用。

【治療】18診中15診は公孫、2診は百会、1診は太衝にそれぞれ翳す鍼を施す。

【効果】初診時から顔色が明るくなり3診目には寝つきがよくなる。7診目には塾の算数の試験が受けられる。9診目頃は朝も起きやすくなり体重も増え体力が出てくる。15診目には塾に通えるようになり学校にも週3回程行けるようになる。現在、毎日学校に通えるようになる。

【考察】
公孫の古代鍼で顕著な効果が現れました。乳幼児や敏感な人(鍼が恐い人や肌理が非常に細かい人等)にはこのように刺さない鍼を用いています。
体表を守っている衛気というのは気の動きがとても速いです。況してや敏感な男の子です。反応のあるツボに翳しただけで全身の気血が素早く巡り効果が現れるのだと思います。

公孫は、藤本蓮風著『経穴解説』には、衝脈が関与し血に関わる、気が衝きあがるものに有効、心腹五臓の病を治す、腎経寄りに取ると腎の絡脈の気もうける等々言われています。

上焦(上部)特に心の臓に衝きあがった気を引き下げながら、全身に気血を巡らせる心持ちで古代鍼を使用しました。

御家族も元気になっていく姿に驚かれています。体重が増え笑顔も見られるようになりました。体から心へ働きかける鍼が奏功し嬉しい限りです。

最近同症状の思春期の子供達が急増しています。この男の子をみていても学校に行かなくなってから「ゲーム1時間」と上記にありましたが、1時間で止めれるのが驚きです。親が決めたか本人の意志かは分かりませんがいずれにしても「真面目で優しく我慢強い」が過ぎてしまって「反抗出来ない子」に多いように感じます。

反抗は発散でもあります。自立しようとする時期には反抗はつきものです。反抗出来ない性格や状況にある時、バランスが偏り逃げ場が無くなって発症するようにも感じました。



2017年02月24日(金)

月経不順から不妊症が治癒した症例。 [不妊症]

30代女性。
初診:平成28年3月下旬初診。
主訴 月経不順、不妊

【主訴】
20代半ばに初潮(初潮が来ないことをおかしいと思いながらも誰にも言えなかった。)
以後、3ヶ月又は半年ペースで来潮(出血量は普通、痛経2日目に左下腹部痛)。
31歳結婚後、婦人科で多嚢胞性卵巣症候群と診断、ホルモンで毎月月経をおこすが(1年間)、身体が怠くイライラや体重増があり薬中止。通院もやめ仕事復帰する。
基礎体温、高温期・低温期は安定せずバラバラ。

【その他の症状】20歳ごろ不整脈といわれる、ストレス時に逆上せ・心下部痛・動悸あり。
便秘で仕事中は排便するとこは皆無。お酒を飲むと翌日快便。
夢が多く追いかけられる夢や高いところから降りていく夢を見る。

【七情】
幼少期から気を使い過ぎて言いたいことが言えず、緊張する事が多く、感情を内に溜め込むことが長年続いていた。

【病因病理】
衝脈・任脈・督脈は胞中(子宮)から起こるといわれてるように、これらの諸脈に病変が生じると気血の過不足が生じて生殖機能に障害をもたらします。特に任脈は、胞胎を主とし生殖機能、月経周期と密接な関係があります。

彼女は長年の感情鬱積により肝鬱気滞が長引いたことが任脈に影響し、生殖機能に気血の不通がおこり月経が来なかったと思われます。

また気血の停滞が気血を巡らす心の臓にも及んだことにより多夢・動悸・顔色淡白、舌淡白等の所見がみられたと思います。

【正邪弁証】
上記のように心血不足傾向はみられますが、脈力がある事や、ツボの実(特に合谷左や太衝右、厥陰兪や心兪等の反応顕著)、または、負荷試験で休日に散歩4時間後もスッキリして気持ちが楽になる事から、邪気の実>正気の虚と考えます。


【証と治療】
証:任脈不通証

初診〜3診目:胆兪(右)2番鍼20分置鍼。
4診目〜11診目:後渓(左)
12診目:申脈
13診目〜20診目:公孫
21診目〜現在45診目:後渓、太衝、外関、申脈のいずれか1穴。


【治療効果】
初診の治療後、脈幅、脈力が復活し、舌色が紅に変化。3診目で快便になりました。4診目から心血を補いながら気実を瀉す事を11診目まで続けました。

6診目で月経が来て心身がスッキリし、月経前の過食が無くなった事に大変驚かれていました。(かなり酷かったようです)
更に、2か月続けて月経がきた時は本人と家族もびっくり。その後も順調に月経が来るようになり、25診目に妊娠陽性反応がでました。

妊娠後も治療を継続していますが、つわりもなく浮腫みや便秘等の症状も全くなく仕事を続けながら母子共に順調です。

【まとめ】
このように速く鍼の効果が出て、妊娠にまで至った事は虚証ではなく実証体質だったからだと思われます。長年、誰にも言えなかった無月経をここで話が出来たことも心が緩んだと思いますし、初期に実を胆兪というツボで瀉したことが功を奏したのではないかと思います。

初めにお会いした時に、ご自分の症状までもしっかり蓋が出来る程かなり我慢強い女性だと直感しました。

彼女との信頼関係も初めから自然に流れるように出来ていましたし、治療はとてもし易かったです。彼女が素直だったため心がどんどん鍼によって解放されていった結果だと思います。

どれだけ可愛い赤ちゃんに会えるのかと心から楽しみです。





2017年02月01日(水)

突発性難聴 [耳鼻咽喉関係]

68歳女性 平成28年5月中旬初診
主訴 突発性難聴

【主訴】
1ヶ月前、法事のため遠方(高知県)に出かけ神経を使った上、なま物を過食。帰宅した翌日の起床時、右耳に突然の激しい耳鳴りと耳閉感が起こる。眩暈も伴う。その2日後、左耳にも同じ症状が出現。約1週間のステロイド内服で激しい耳鳴りは治まるが、右耳の低音(時々高音)の耳鳴りが残る。聴力は左右共に正常。

増悪因子: 夜寝入り時、室内(耳鳴りがよく聴こえて苦痛)、雨天前、春と秋
緩解因子: 入浴中、ウォーキング中、屋外

【既往歴】
・幼少期から虚弱で扁桃腺炎や、心臓神経症(動悸、息苦しい、不安感、不眠)をよく起こしていた。
・第一子出産1年後、回転性の眩暈(嘔吐)メニエール氏病と診断。
・更年期頃から風邪を引くと喘息発作を起こすようになり、その後、副鼻腔炎、甲状腺機能低下症、間質性膀胱炎等を発症する。
・4年前春 右耳のみ低音の耳鳴り発症。
・1年前秋 右耳のみ低音の耳鳴り再発。持病の喘息症状も同時に出現。

【病因病理】
小さい頃から心臓には器質的な問題はないものの(検査済)心臓神経症の症状(動悸、不安感、不眠等)がよく起こる事から、体質的に心気の弱りがあったと思われます。心気を消耗すると心血が減少し益々不安感や動悸、不眠になり悪循環に陥ります。
また、患者さんは、かなり我慢強い方で様々な事があっても発散することなく生活されてこられたようです。(かなり酷い便秘で薬を長年常用)。便秘薬使用に関して常にストレスを感じておられます。
出産後は、腎が弱ったところ肝鬱により肝の臓の表裏である胆経に左右差をおこして回転性の眩暈が発症したと思われます。
更に、更年期あたりから腎が益々弱り、上下バランス(肝と腎の臓を中心に)が乱れ、上記のように様々な病気を発症されます。
加齢のため腎が弱ることにより、それを支える脾の臓の運化作用も低下し、上焦に湿熱を溜め副鼻腔炎や喘息発作を起こしやすくなったと考えました。
今回の突発性難聴の爆音は脾胃の湿痰が胆経に沿って上逆し、痰火となって塞いだ為に発症したものと思われます。主訴の低音の耳鳴は脾腎の弱りが中心と考えますが、心身安寧の為に心の蔵に関わる穴にアプローチし心気を補い、後、脾>腎に対する治療を施します。


【証と治療】証:腎虚、脾虚湿盛

初診〜3診目:心兪(2番鍼、初診のみ5分、他25分置鍼)
4診目〜24診目:滑肉門、魂舎、天枢のいずれか1穴。(5番鍼で30分置鍼)
        (21診目のみ打診+古代鍼で十井穴…熱中症の為)
25診目:公孫(右)(2番30分置鍼)食欲不振の為。
26診目〜27診目:不容(右)2番30分

【治療効果】
初診の治療後から夜中目覚めず、ぐっすり眠れるようになり、夜間尿も無くなりました。心兪3回の治療で耳鳴りもかなり小さくなり今まで出来なかったお昼寝も出来るようになり、5診目ごろから喘息のステロイド(吸入)を使用しなくても発作は出なくなり、たまに咳が出る程度になる等、鍼の効果が顕著に現れました。耳鳴りは高音の日や低音の日など、日によって症状はまちまちでしたが、12診目頃には耳鳴りは消失しました。


【まとめ】
70歳前の患者さんで脾腎の弱りが顕著でしたが、耳鳴りだけでなく喘息も完治されました。医者に診てもらうと雑音が無くなっていると驚かれたようです。一生薬は切れないと言われた喘息が治った事でご本人も信じられない様子で喜ばれています。
患者さんは今までご苦労が多かったようですが、とても素直な方で鍼をされるたび心身が安定されるのがこちらも感じました。
元気になると正直なもので手づくりのビーズのくまさんや素敵なリース等作って下さる等、動作も表情も本当に若々しくなられました。
ご苦労してこられた分、益々お元気で幸せな充実の毎日を過ごして頂きたいです。




2016年11月14日(月)

眩暈[神経内科]

60歳女性、平成28年3月下旬初診。

主訴:回転性の眩暈→ フワフワした眩暈。

(眩暈履歴)
★1回目約6年前12月→ 夜布団の中で眩暈(回転性)身体動かせず首を右下のまま静止。
★2回目約5年前5月→ 夕食後7時〜翌朝6時迄同上の眩暈(回転性)で一睡もできず。
★3回目約半年前10月末から11月→ 起床時に眩暈(回転性)し初めて嘔吐。安定剤と眩暈止め薬服用し改善。血圧も突然180/110に。3回とも眩暈時は息苦しさも伴う。

*1回目と2回目は家族介護で多忙時、3回目は引っ越しで多忙後ホッとした時。

増悪因子:精神的ストレス、不眠。緩解因子:ぐっすり寝た時。息苦しさはゲップで緩解する。

七情:心配性、娘さん曰く「母は全ての人の苦しみを自分のものにしてしまう」

(体表観察所見)
舌(写真)、脈(4至半強、滑脈、尺位左虚、幅無、力有)、原穴:太衝左虚、太白〜公孫(左)、内関右実、外関左虚、百会(左)熱実、右心兪実、右脾兪虚、左陶道から神道までの1行実。
その他:手顔中心にかなり黄色、スタッフ体表観察中に腹部、背中が発疹出現。

【チャート図】

画像(250x120)・拡大画像(572x276)

(チャート図上をクリックしたら大きくなります)


(治療)
初診:申脈(右)2番10分。
2診目〜4診目:後渓(右)→(左)→(右)30分
5診目〜25診目:太衝(左)。

(治療効果)
初診後よく眠れて、2診目から不安感が半減。回転性の眩暈はなくややフワフワした眩暈有り、3診目には公孫や太白等の穴の状態が改善される。眩暈消失。鍼治療後眩暈は一度も出ず。心配し過ぎる事も全くなくなり精神的に安定。

(まとめ)
遠方から根気よく通院して下さり感謝いたします。小さい頃から虚弱の上、ご家族や人の心配ばかりして身体を酷使されてましたが、鍼をされてから体力が出てこられました。

5診目から25診目までは、左太衝穴を使用しました。ツボの左右差が整う事が大事なのですが、整うのには時間がかかりました。これほど身体のバランスが偏っていた証拠です。

何より精神的に安定され、その姿に現在、娘さん夫婦、お孫さん達も通院して下さっています。鍼は心身共の健康を得られる優れものです。

【 過去の記事へ 】

症例検索



カテゴリーリスト

最近の記事

RSS1.0 RSS2.0 powered by a-blog

[ Login ]

spモード