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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2010年1月21日(木)

シェーグレン症候群 []

(膠原病の概念)

膠原病は、結合識病とも言われ、多くの場合、細菌やウイルスから自分を守ってくれるはずの免疫が、何らかの原因で反対に自分を攻撃してしまうという自己免疫疾患と考えられている。
全身性エリテマトーデス(SLE)は代表的な膠原病で、全身性硬化症、皮膚筋炎、多発性筋炎、関節リュウマチ、シェーグレン症候群なども一連の膠原病の疾患とされている。
原因は明確には分かっていないが、多くの臓器に慢性炎症性病変を生じることが特徴で、神経系(中枢神経、末梢神経、筋肉)にも様々な病変が生じる。
西洋医学での治療は、ステロイドまたは、消炎治療薬を用いることが多い。

(シェーグレン症候群)

シェーグレン症候群は、感覚障害を中心とした末梢神経障害や脳神経である三叉神経障害などが起こることがあるといわれている。
また、涙腺や唾液腺の分泌を障害し、ドライアイやドライマウスなどという症状が起こる。
男女比は1対14と圧倒的に女性に多く40歳から60歳の中年女性に比較的多く見られる疾患である。

(症例1)

主訴:膠原病(右頬の腫れと円形脱毛症)
患者:29歳、女性、会社員
初診日:平成21年3月27日

(病状の経過)

昨年(平成20年)4月頃、右耳から後頭部にかけ大きな円形脱毛症があることに気づき、11月末頃から右の頬が赤く腫れて、触ると響く様な痛みや熱さを感じるようになってきた。12月に入ってからはそれが右頬全体に広がり、口の渇きや手掌の痒みと乾燥等が出てきたため病院で検査を受ける。
検査では、IGE(アレルギー抗体)の数値が高く、ガムテストなどでも唾液分泌が少なく、唾液腺に炎症がみられたためシェーグレン症候群ではないかと診断される。
翌月1月からステロイド(副腎皮質ホルモン)治療を始め、プレドニンを使用。(25?を2日間→3日目から15?を3日間→後7.5?を服用)。この時点で右頬の腫れは引いたものの、しばらくすると目の下の腫れが再び出現しステロイドが増量される。またステロイド剤による副作用で、肝臓数値が高くなり、顔の腫れもなかなか引かず(MRI検査で炎症が認められる)西洋医学の治療のみでは不安になり当鍼灸院を受診される。

(東洋医学での診断と治療)

(内熱体質)

この疾患は、西洋医学でもいわれている様に炎症性の疾患である。
問診から得た情報でも、患者さんの体質が熱に傾いているという事は明らかで、口の渇きがある、普段から便秘(3日に1回兎糞状のコロコロ便)、口内炎が出来やすい、頭が痒くふけが出易い、胸焼けなどの情報からも察知できる。
また、仕事のストレスなども重なって夜寝つきが悪くなるなどの症状も起こる。
寝つきが悪いのは、様々な原因が考えられるが、仕事などでストレスがかかり肝が高ぶった事により起こったものと考えた。

(気滞体質)

更に患者さんは、大学卒業後就職してから運動不足と共に気を使うことが多く、常に肩(右>左)が凝る様になってきた。ひどくなると偏頭痛や頭のピリピリ感もおこる。肩こりは、気滞(きたい)といって気の流れが悪くなり滞ってくる、いわば気の交通渋滞のようなもの。肩、特に右肩で気の交通渋滞が常に起こっている状態といえる。

(肝鬱化火・内風証)

以上の情報を体表の観察(実際にツボの状態、舌診、脈診などを診る事)と合せた結果、
「肝鬱化火・内風証」と診断。熱は上に上がる。気の偏りが普段から右上にあるところ内熱が上(特に右側)に上がったため、右の顔面が腫れ、その熱が1.内風(ないふう)を起こし右の後頭部に円形の抜毛がおこったものと思われる。
治療は、百会(頭上にあるツボ)や霊台(背中の中央やや上にあるツボ)のどちらか1本、風邪が少しでも進入した時は、外関を加え鍼を施す。

1.内風→上焦(上部)に熱が盛んになると、陽炎のように風が起こること。緊張して手が震えるなども病的なものではないが、内風にあたる。

(治療経過)

初診時に遅れていた生理がきて、ひどい口の渇きがなくなりる。顔の赤みと腫れは2~3回の治療で大分引き、便通もよくなってきた。16診目ごろには肝臓の数値がかなりよくなり、24診目にはアルバイトが出来るまでになる。脱毛もほとんど無くなり30診目には社会復帰を果たす。
ステロイドは肝臓の数値がかなり高くなっていたため4診目くらいで使用はしていない。
現在は、肝臓数値も全て正常に戻り上記の症状も改善され元気に働かれている。

(考察)

患者さんは、病院を何度か変えられ当鍼灸院に来られた。
鍼灸に対しても確信が無い中、悪化してくる症状に不安そうに来院されたが、数回の治療でどんどん改善されていくのを感じ、まず表情が明るくなっていった。
特に難病と言われる病気を若くして抱えてしまうとそれ自体で心が塞がってしまうもの。途中、我慢強い本人も当然、何度か不安になったこともあり、自分から友人に話をしたり心をオープンにしていくようアドバイスなどもさせて頂いた。
北辰会代表藤本先生は、常々、「鍼灸は身体と心と魂をも変えていくことが出来る」また、「特に難病を診る場合は、治らない病ではなく原因が心因(抑うつやストレスなど)の場合が多いので、何より診察するこちらが難病を恐れたり負けてはならない」と言われたことがある。
患者さんが少しでも良くなっていったことに希望を持たれ、その希望が益々身体によい影響を与えたのだと感じる。
ただ身体のみを診ただけなら完治は難しかったかもしれない。
心の変化をしっかりキャッチしながらお互いの信頼関係の中で治療を進めさせていただけたことに感謝します。