14歳女性 中3 2022年11月来院
【病歴】
同年6月に「特発性側弯症」の診断を受ける。背中の筋肉は、左側が側弯のため、かなりもち上がり右との左右差が顕著。
更に、中学生になった頃から歩行中に両膝が不意に痛む。痛みは片側ずつ出現、痛みの強さ、頻度ともにL>R。X線は異常無し。
また、来院の10日位前から、左股関節(外側)がズキズキと痛み、その後、持久走後に右股関節(外側)、右腰もズキズキと痛む様になった。
【その他の所見】
◎6年生の時、帯状庖疹になる。
◎吹奏楽部ではバリトンサックス演奏の為カバンがかなり重い。
◎中2から塾に通うも先生と合わずストレス過多。
◎中3、10月にコロナ陽性、39°近い熱2日続く。喉痛。
◎中3になってから、入浴後に背中と胸部の痒み出現。
【病因病理】
元々、食も細く無口な女性で、発散するのが苦手。様々なストレスを心にため込んでしまうタイプのようです。また、食少や嫌なことがあると腹痛下痢になる事から、脾の弱りがベースにあると考えます。中学に入り、我慢強い性格ゆえ、肝鬱傾向(ストレスによって発散できず気が停滞する)のところ、嫌な塾をかなり我慢して通い、背骨が変形していったと考えます。
これは、まだ成長期なので骨が柔らかいということと、偏食で食生活の乱れや朝抜きで学校に行き、骨、血の成長が軟弱という事からも十分考えられます。
【治療方針】
過敏な体質なので、鍼は使用せず、腹部の邪気(気の停滞)を散らしていく方法をとりました。
夢分流打鍼術というものです。
【治療経過と考察】
1診目~基本的に同様の治療:火曳きの鍼と左脾募散ずる鍼。
2診目から脾の弱りを立てるために、公孫の千年灸1壮。現在15診目。
1診目で膝の痛みがなくなりました。背部も3診目ごろから左右差が無くなっていき、背骨が真っすぐになってきました。背中が伸びてきたので腰や膝のアンバランスも解消されていったと思います。治療中は受験のストレスがかなりあったものの、治療度ごとに背中の筋肉の左右差はとれていきました。高校も無事に合格し喜ばれています。
先日、側弯症と言われた整形外科の先生に診てもらうと、「これ鍼だけで治ったんですか?」と
驚いておられたそうです。「それも刺さない鍼でお腹をトントンしただけです」とお母さんが先生に言ったそうですが、先生の頭の中は??だったようです。
身体は繋がっています。精神とも密接です。今、学校に行けない子が急増しています。眠剤や頭痛薬、血圧上げる薬等々、若い子たちが薬づけになっているのが現状です。
子供は大人が思っている以上に何倍も真面目ですね。エネルギーに満ちあふれた子供たちが3年間、様々我慢し、怖がり、注意され、バランスが崩れないはずありません。子供たちが元気になるのを楽しみにこれからも治療させて頂きます。まだ少し背骨が曲がってますので治療は時々した方がいいですね。
先日のレントゲン写真を添付しておきます。
右(治療前) 左(治療後)
57歳 女性 既婚 2022年8月来院
【主訴】左肩甲骨の圧迫感
【病歴】来院10日前に、マッサージ(強め1時間)を受けた翌日の夜から、左肩甲骨に違和感が発症。整形外科受診時、背中を軽く叩かれた時、飛び上がるほどの激痛が走る。X線検査問題無し。鎮痛剤と湿布1週間分処方されるも、口内炎で舌が痛くなったので、5日で服薬は中止。現在背部圧迫感のため、上を向いて寝れない。
増悪因子;吸気時(深呼吸)、座位にてだるくなる、冷風(不快感)
寛解因子;鎮痛剤、湿布(ロキソニン)
【その他】
・10代の頃からしている剣道で常にむちうち状態。
・仕事はかなりの激務だがやりがいを感じていた。出産後は仮眠なしの36時間勤務時もあり。
・病歴に卵巣がん、甲状腺がん手術。37歳月経ストップ。
・50代、尻もちついて、T10~12辺りを圧迫骨折。
・ここ2年リポビタンを日々服用し出勤。
【主な体表所見】
舌診:膩苔、紅舌、舌尖紅。
脈診:滑弦脈、力(+)、幅(-)、重按ok、尺位(左)弱。
腹診:心下胃土に停滞、右肝之相火熱感。
切診:虚(陽池、太谿、太衝、外関、照海、申脈、三陰交すべて左)
【八綱弁証】実>虚
虚:腎虚(臓腑弁証参照)
実:肝鬱気滞~血瘀(臓腑弁証参照)
排泄・発汗・入浴にてスッキリ、強マッサージでスッキリ、
熱:紅舌、寒い日も冷物(アイス)欲す
【臓腑弁証】
肝鬱気滞:仰臥位にて腰痛増悪
腎虚:ギックリ腰起こしやすい、生理時の腰痛、尻もちで圧迫骨折、抜け毛多数。
【診断と治療】
当患者さんは仕事にやりがいを感じてる故に、身体を酷使して頑張り過ぎてしまう所があります。
癌を数回経験されてますが、様々な原因はあるものの、ご自身の体調不良のセンサーに気づかず、働き続けてしまった結果、癌や50代前半で圧迫骨折、背部の圧迫感等の体調不良が出現したものと思われます。
若いときは多少の無理も大丈夫ですが、50代に入ると今までの無理が一気に身体に出てきますね。
基本的にはお元気な方ですので、肝気の停滞をほどく治療を施し、少しずつからだの緊張を緩めることで、気の流れをよくしてきます。
治療は、主にツボの状況から上下のアンバランスを調える為に、1診目に百会穴(やや右側)に10分置鍼。2診目から5診目まで、左の胆兪を置鍼。背部の圧迫感がなくなり呼吸が楽になりました。
その後、適宜ツボや体調に合わせて、申脈や合谷等1穴を選び治療。
現在20診ですが、起床時も楽に起きられるようになり、リポビタンで毎日鞭打ちながら頑張ってた身体も、強壮剤なしで元気に働けるようになられました。
また、患者さんの声にも書いていただきましたが、血液検査の結果、全て正常値になりお医者さんが驚いてました!と言われたそうです。このように無理をしつつも精神力が強い方は、ご自身のメンテナンスを忘れず頑張って下さいね。
24歳 女性 未婚 2022.4月来院
【主訴】口腔アレルギー(唇の周囲)
【病歴】一昨年の夏マスク生活の中、口の周りが痒くなり始める。皮膚科にて弱ステロイド性の軟膏を処方され塗布時のみマシになる。
その後、別の皮膚科にて「口腔アレルギー」と診断。果物・米・小麦・ピーナツ等に陽性反応あり。フェキソフェナジンを処方され一ヶ月服用でマシになるも、薬終了後全身に蕁麻疹が出現。
今年の春、仕事が多忙で疲れが溜まり、唇周囲の赤み(口腔アレルギー)が常に出ている状態 になる。薬の服用は嫌なので来院される。
【その他】
・0歳時に突発性血小板減少性紫斑病と診断(現在経過観察のみ)
・小児~小学生頃まで頻繁に喘息症状があり、高校2年以降症状は治まる。
・中学生頃から食後に肘膝窩の痒み出現。大学受験時は蕁麻疹が酷かった。
・よく中耳炎や外耳炎、外耳道炎になっていた。
・仕事はシフト制かつ日勤夜勤様々で、生活リズムがバラバラで疲れる。
・趣味:ライブ鑑賞
【主な体表所見】
舌診:舌尖紅、暗紅舌、薄白苔
脈診:緊脈、力(+)、幅△
腹診:(表)胃土、左脾募、右肝之相火邪
切診:(虚)左神門、照海、申脈、右肺兪、心兪、両膀胱兪。(実)肝兪、右下腿陽明経絡上。
【気血津液弁証】
肝鬱気滞:生理前にイライラ、ストレスにより増悪、肩こり、緊張により便秘。
血虚:立ちくらみ、目の乾燥、夜勤明け増悪、経血色淡く3日目以降少量。
【臓腑弁証】
肝:上記の肝鬱気滞、血虚参照。
腎:生理痛(腰痛)、扁桃腺腫れやすい、腎のツボの反応、顔面気色診にて主訴部位が腎。
【診断と治療】
(証)肝鬱気滞>腎虚・血虚 *若さもあり虚(腎虚・血虚)を補うより、
邪実を巡らせる方法で治療。
(治療)1診目~6診目迄 肝兪
7診目~8診目迄 三陰交
9診目~12診目迄 肝兪
13診目~胃兪か、胆兪の1穴を使用
(効果)1診目から効果が出て湿疹も痒みもマシになる。夜勤明けはいつも酷いが3診目で酷くならず、4診目以降から痒みも湿疹もかなり良くなる。ただ、夜勤中に眠れない日の翌日は悪化。
7診目は夜勤明けと生理が重なったため穴を三陰交に変更。
9診目以降は、口の周りのアレルギーは緩解する。
【考察】
幼少期の喘息、皮膚の痒み、また、紫斑病(血管にアレルギー炎症が起こり血管が脆くなって出血、紫斑が出来る)等々、アレルギー体質のところ、多忙で不規則な生活が続いたために口の周りにアレルギー反応が発症したと考えます。
なぜ口の周りに発症したのかは、ひとつはマスクの着用によって気血の巡りが悪くなったため、もう一つは、胃腸の弱りも多少あるものの、口の周囲は顔面気色診では、腎の蔵が関与します。生理時の腰痛や扁桃腺が脹れやすいこと、中耳炎や外耳炎等、耳に関する疾患によくかかる事、腎のツボの反応等から腎の弱りを考えます。
更に、仕事による夜勤等不規則な生活も腎を傷めます、血の不足も招きます。また、コロナで好きなライブに行けなかったことで、肝鬱(肝の気が停滞)し発散できずに悪化したものと思われます。
肺は皮毛と呼吸器と関係してるため、皮膚にアレルギーが出たり、反対に喘息が出たりします。このような方は、乾布摩擦や、山登り、水泳等、皮膚又は呼吸器を鍛えると共に、ストレスを上手に発散していくとアレルギーは治っていきます。
47歳 女性 既婚
【主訴】耳鳴り(左)とめまい(に伴う不安感)
【病歴】18歳の時、大学受験のストレスで、ひどい便秘と共に突発性難聴と眩暈(めまい)を発症。その後、高音の耳鳴りや耳閉感でゴーッとこもった音がし、低音が聞こえづらい。
更に、就職してから多忙な日々が続き、酷い回転性の眩暈により3週間入院。長引く症状に不安感が昂じ、鬱っぽくなり心療内科の薬も併用する。
今年3月初旬、数日酷い耳鳴りが続いた後、朝気持ち悪くなり、頭を動かすとふわーっとなる。今までのトラウマで身体中がこわばり、肩こりや頭痛等も発症し来院される。
増悪因子:ストレス、睡眠不足、冷え、就寝前、第一子出産後。
緩解因子:入浴、頭を動かさない。
【その他】
・幼少期は、扁桃腺が腫れやすく、時々中耳炎に。また高所・暗所恐怖症。
・ストレスによる胃痛。冷飲食で下痢し易い。
・6年前頸椎ヘルニアに。(左半身痛)
・常に自分が頑張らねばと家事や育児を責任をもってこなしてきた。
・スマホで常に健康の事を調べる毎日。
【主な体表所見】
舌診:紅舌、白膩苔、舌尖紅点、やや胖大→気が上(首から上)に上がり胃腸に負担がかかってる状態
脈診:滑弦脈、力+、脈幅△、寸口(ℓ)枯弦脈→上に気が傾き過ぎて、疲労してる状態
腹診:(表)右肝之相火、(深)右胃土→胃の気が停滞してる状態
切診:実(三陰交右)、右原穴の多くが虚→左右バランスの乱れ
【診断と治療】
証:肝実>肝血虚による、肝気上逆証
頑張り屋さんで几帳面な性格により、肝鬱気滞(気血の巡りが悪く滞り易い)体質と考えます。このような方は過度のストレスで気の流れが常に上へ上がってる所、年齢的にも下半身(特に腎の蔵)が弱り、上下のバランスが乱れ、身体の上部に症状が出易くなります。(肩こり、耳鳴り、めまい、頭痛など)また、頸椎ヘルニア(左)で左右のアンバランスもあるため眩暈や片側の耳鳴りは発症しやすいです。
更に、神経を使い過ぎたり、多忙による睡眠不足も重なり、目の乾燥、爪が割れやすい、腕の痺れ、月経の遅れなど、肝血不足の所見もみられます。このように、血虚(血不足)になり、相対的に気が簡単に上へ上がってしまい悪化したと考えました。
よって、治療は、肝臓の血を補いつつ、全身に気血が均等に巡るようにしていきます。
【治療穴】
1診目~4診目迄:肝兪。
5診目~16診目迄:三陰交。その後、肝兪や脾兪、三陰交等どれか1穴を使用。
【治療効果】
1診目の治療で頭が軽くなり眩暈も無くなり、腎蔵の重要穴、照海や太谿の穴も整いました。ご主人にも目が輝いてると褒めてもらったと喜ばれてました。
長年の眩暈だったので、「正直、先生には申し訳ないんですけど…まだ信じられないんです」と何回も言われてましたが、「いいんですよ、病歴(30年)長いですからね~」と、こんなやり取りが暫く続きました。耳鳴りは急には治りませんでしたが、11診目頃に耳鳴りが小さくなってきました。
その後、疲れたり神経を使うと耳鳴りが出現しますが、18診目に耳鳴りが当初10から現在2ですと言われてました。また耳鳴りが消失するときも出てきました。台風時は心配されてましたが、耳閉感のみで終わり、やっと(笑)鍼って凄いですと言って下さってます。
このように速く効果が出る人は、虚(弱り)もありますが、基本的に実証タイプです。気血の流れさえ良くすれば様々な症状は取れていきます。
現在22診目で継続中ですが2週間に一度程度来て下さっています。更年期にもかかってますのでしっかり治療しましょう。軽く済みますので。
17歳 高2 女性
【主訴】左腕の脱力感
病歴:来院1週間前、授業中に急に両腕に力が入らなくなる。当日は早退し以降は学校休む。来院時は右腕は改善、左腕のみの脱力感。更に、左下肢外側に筋肉痛に似た違和感もあった。
発症の1ヶ月前に学校でプレッシャーがかかる事が起こり、その状況は現在も継続。内科・整形を受診するも問題なく心療内科を勧められた為、鍼灸治療を希望し来院。
【主な体表所見】
舌診:淡白舌
脈診:1息4至、滑弦脈、力あり、幅△
腹診:全体的にくすぐったく、腹部、背部共に触れられない
切診:実(厥陰兪、心兪、肝兪左等)、左原穴の多くが虚。
【その他の症状】
・幼少期は便秘で3~4日に1回刺激し硬めの排便。現在は普通便。
・小学校低学年頃まで毎年インフルエンザに罹患。
・中高校では、部活で特に腕を使う競技をしている。時々肉離れ(左大腿前面)右シンスプリント。
【診断と治療】瘀血<気滞による痿証
元々頑張り屋さんで緊張型便秘傾向のため、肝気実(気が停滞し易い)と思われます。このような人は、緊張することが続くと、気逆がおこり易く、上部に症状が出やすくなります。実際、高音耳鳴り、上半身多汗、歯ぎしり、肩こり等々、上部の気の停滞症状がみられます。
最近学校で急なプレッシャーが重なり、心神(東洋医学での精神)が不安定に。これが心血(心臓の血流)に影響し、動悸、寝つき悪く多夢などの症状が発症。
心血と肝血は連動してますので、血不足が更に気の停滞を引き起こし、その停滞が、普段からあるスポーツで使っている腕や大腿部に影響が及んだものと考えました。
気の停滞を取ることによって緩和されると思い、気を巡らせる特効穴、肝兪(8割使用)を中心に使用しました。
【経過】
一回目の治療により、舌の色褪せが改善し、腹部や背部の酷い拒按(くすぐったい感覚が酷く、触られる事を拒否)がましになり、酷い気の停滞が改善するのは速かったです。
3診目には腕に力が入るようになり、更に、起きた時、ぼーっとすること(頭に血流が行きにくい状態)が無くなったと言われてました。学校に行くのが不安でしたが現在は元気に学校に通われてます。