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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2011年5月21日(土)

痒み疾患 []

阪南市在住 41歳 女性
主訴:痒み疾患(両頚、後頭部、右眉の上、両脇、上腕、骨盤等)
初診日:平成23年2月上旬

(現病歴)
若いころから口内炎ができやすい体質だった。26歳ごろストレス(仕事多忙)のため胃潰瘍になる。30歳過ぎてから便秘になり薬を服用し始める。またこのころ年齢とともに仕事へのプレッシャーも大きくなる。
そんな昨年2月上旬、両後頚あたりが赤くなっていたので市販の薬を購入。塗った後から赤く腫れあがってきた。皮膚科を受診し抗生物質を服用。薬で痒みは治まっていたものの、また10月ごろから後頭部の髪の生え際を中心に右目瞼の上、右側頭部がかゆく、皮がポロポロ落ちてくるようになる。2か月後には、両脇から両腕外側に小さいプツプツができ、両骨盤あたりにも同症状が発症したため、ステロイドを塗って抑える。ここ1~2年晩御飯の後、ケーキやチョコを食べたくなる。

(増悪因子):会社に行くと悪化する。夕方から夜にかけて特にかゆい。身体が温まるとかゆい。冬場乾燥時悪化する。
(緩解因子):家でホッとしたときはましになる。

(その他の問診事項)
・乗り物酔いをする。
・手足が冷える。(最近特に足が冷える)
・眩暈がする。
・胃が痛む。
・頭が痛い。
・肩がこるなど。
・運動はほとんどしていない。
・生理後に身体は軽くなる。
・生理前便秘し食欲も亢進する。
★上記の問診から気の停滞が上部にあることが考えられる。

(特記すべき体表観察)
・舌診:暗い赤から紫色、舌先赤い点々多数、舌辺が剥けている。
・脈診:1息4至、緩滑脈、尺位弱、脈力あり。
・原穴診:左合谷虚中実、左太衝虚中実、左衝陽実、左照海虚、右合谷虚中実、右神門やや虚。
・背候診:神道、霊台、八椎下、筋縮、中枢、脊中、命門圧痛。右肺兪から心兪虚中実、左肝兪から腎兪実で持ち上がり。
・腹診:右肝相火実、左脾募実。
★肝の気が停滞し熱化していることが舌診などからもうかがえる。

(診断と治療方針)
肝鬱化火(かんうつかか)証・内風(ないふう)証

痒み疾患は、東洋医学では熱の範疇に入る。
本来、胃が弱いところ、仕事でのプレッシャーから甘いものの過食、運動不足などが重なり、体の中に内熱という邪熱をこもらせてしまった。
そこへ寒さなどで毛穴が塞がれ、更に熱をこもらせる結果となり、肌表に邪熱が停滞し、かゆみが発症したものと考えた。これが冬など乾燥時期に
悪化した理由と思われる。比較的、頚から上にかゆみが酷いことから、肝の熱が上部を襲い、内風(ふう)を起こしたものと考える。(火が盛んになると風が起こるとされる)

(配穴)
初診日~4診目まで:合谷穴
5診目~9診目まで:百会穴
10診目~14診目まで:後渓穴
★4診目には痒みがましになり、かゆみが治まる日が出てきた。
★ストレスで甘いものの過食をしたり、生姜紅茶を飲んだ後は、かゆみが増す。
13診目ごろ生理痛と生理不順が無くなっているとこにきずく。
14診目で全く痒みもなくなり皮膚も綺麗になる。

(考察)
藤本蓮風氏の著書「経穴解説」(メディカルユーコン社)の中に、合谷というツボは肝鬱化火から生じた内風(ないふう)には文句なしに効果があると言われています。彼女も合谷というツボに明らかに反応が表われていたいたため、その効果が顕著にあらわれ短時間で改善されたものと思います。

その上、治療の中で、生理痛や生理不順も改善されました。これは、身体全体の気の巡りが良くなったためだと思います。

もともと色が白く肌理の細かい方ですので、肌は非常に敏感です。そのような人が、チョコや甘いものを食べ、ストレスが過多になると、身体に内熱を溜めてしまう結果となり、その熱が弱い皮膚を襲います。甘いものが非常に欲しくなったときは、身体がストレスを訴えているのだと自覚し、リラックスの時間を持つように心がけることが大事です。
これから夏になると発汗し内熱は取れ易くなりますので、少々甘いものを食べても大丈夫だと思いますが、あまり根を詰めないように気を付けてください。

2011年5月10日(火)

脊髄梗塞後遺症による足の違和感 []

阪南市在住 71歳 女性
主訴:脊髄梗塞後遺症による足の違和感
初診日:平成22年9月初旬

(現病歴)
3年前の朝、腰が抜ける程だるくなり目が覚める。みるみるうちに右腰から下腿にかけて急に冷えだし、力が入らず立てなくなり病院へ運ばれる。
脊髄梗塞との診断を受け点滴にてステロイド治療を開始する。
3週間で退院したものの退院後、高血圧とともに足のひどいほてりとチクチクとした痛み、重だるさ、締め付け感などが臀部から足の裏まで(後面と側面に)発症する。(右から左に徐々に移動)
その他足の冷えがひどく(特に左足)、尿量も減少し残尿感を伴うようになった。歩くのがつらく砂利の上を歩いている感じがする。

(増悪因子):雨天前、じっとしている時、エアコン、階段の下りなど。
(緩解因子):温泉。

(その他の症状)
・ふくらはぎが浮腫む
・冷え性(足、腰)
・小便の出が悪い、夜間尿がある。
・胸焼けする。
・口内炎ができやすい。
★上記の情報から上半身の熱、下半身の冷えが考えられる。

(特記すべき体表観察)
舌診:右方向へ歪斜、暗い赤色、薄い苔、舌縁の剥け、舌先赤い点々多数。
脈診:1息5至、弦脈、左関枯弦脈。
原穴診:虚:太白左、丘墟左、陽池左、太淵右、照海左。
実:太衝右、衝陽右
背候診:左肺兪から心兪実、右肝兪胆兪の熱、脾兪虚。右の腎兪冷え。
★上記の情報から肝胆の熱、腎の冷え、さらに胃腸の弱りが考えられる。

(診断と治療方針)
足の特に後面全体、裏面と外側面の違和感から腎膀胱経と肝胆経のバランスの乱れが考えられる。また、その他のツボの状況と、足の重だるさなどから「脾の臓の機能をアップ」をさせる治療方針を立てる。その後、肝と腎の上下のバランスの乱れを調え、足の痛みを取るように治療方針を立てる。脾の臓のアップは東洋医学では免疫力アップにも通じるほど重要で脾は五臓の中心と考えられている。患者さんの体表観察では脾兪右のみジトッと発汗しており、まずここのツボの調節を優先することとする。

東洋医学では、脾と腎は後天の元気と先天の元気に対応しており、肝と腎も上下のバランスを取るうえで外しては考えられない。

初診時から2診目:右脾兪
★2回の治療にて脾兪のツボの発汗が無くなり踵の痺れがましになる。
3診目から5診目:天枢
★少し足の状態がよくなってくる。
5診目から22診目:照海、百会
★肝と腎の上下のバランスを整える治療とするためツボを変更する。
★6回目の治療にてしびれは残っているものの足の痛みは時にましになる。歩きすぎたりするとまた痛み出すものの歩幅が広くなり早く歩けるようになる。
23診目から以降:後渓穴を使用。
★21診目には足が暖かくなってくる。27診目には自分でも足の暖かさが自覚できるようになる。
★現在、走ったり長い時間歩いたりできるようになる。治療継続中。

(考察)
遠方から治療に頑張って通われたことにまず敬意を表したいと思います。ご家族の理解があってこそと感謝します。
主訴が発症してから数年が経っているため、時間はある程度かかると思っていましたが、回復していくスピードは非常に速かったと思います。
まず免疫機能である脾を立て、その次に肝と腎のバランスを調えたことで治療効果が早く出たのではと思われます。
このような、後遺症的な疾患で痺れなどは、西洋医学でも薬が無く、かなりの時間がかかる事は周知の事実です。
来院されるたびに歩き方が良くなっていかれました。つい無理をして歩きすぎたり、また食べ過ぎたりして、胃腸である脾を痛めると痛みがまたでることは十分考えられます。
また、足の裏には腎臓の出発のツボがあります。ここに反応があることからも塩分の取り過ぎには気を付けていただき、治療を継続されますことを望みます。