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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2013年1月29日(火)

生理前のイライラ []

西宮市在住 女性 43歳
主訴:生理前のイライラ
初診日:平成24年6月初旬

(現症状)
約3年前頃から生理前の便秘とイライラがひどく、ご主人にきつくあたってしまう事と、生理の2~3日目からレバー状の血痕がひどく経血量も多かったため、ピルを服用するようになる。ピルを服用してからは、血塊量は減少したが経血量は変化なし。イライラもましになったが、医者からピルは閉経するまで服用するように指示される。また、ピルを服用してから4kg体重が増えて、食事等気を付けても痩せなくなった。2年前からは生理前に腰痛がおこるようになる。ピルは止めたいものの、自分ではコントロールしにくいイライラのため友人の紹介で来院される。

(既往歴)
23歳の時、出産してから生理前のイライラが出始める。この時、ご主人の出張や引越し、子育て等かなり多忙にしていた。また同時期に食後1時間後、右の背中が激痛になることがあったが、すぐ消えるのでそのままにしていた。結局40歳の時に胆石が見つかり胆のうを摘出する。現在も食べ過ぎると同じ場所が痛くなる。高音の耳鳴りと耳閉感がある。

(生活環境)
・1年前ごろから内容的に不規則なパートの仕事に就く。
・お子さんが高校生になり少しホッとして気分が落ちる時がある。

(その他の特記すべき問診情報)
食事:味付けは濃い方。飲み物は一気にゴクゴク飲む方。コーヒーも多い。
発汗:あまり汗をかかない。
睡眠:熟睡感が無く、朝4時に目覚め、寝るのに30分はかかる。
二便:便秘のため薬を使用。

(主な体表観察所見)
舌診:暗紅色、薄白い苔、舌に力はいる。舌裏はやや淡紅色。
脈診:弦脈で1息4至、脈力脈幅共に有り、左尺位が他に比べて弱い。
原穴診:虚(左後溪、左照海、右太白)実(左臨泣、右太衝、右衝陽)
虚中実(左臨泣、左太衝、左衝陽)
背候診:左肺兪~心兪実、右肝兪~胃兪まで実、神道・命門・十七椎下などの圧痛。
腹診:右脾墓から肝の相火、胃土邪実。
空間診:百会、懸枢は右上に実。

(診断と治療方針)

肝鬱化火(かんうつかか)証>腎虚(じんきょ)証

全ての気の巡りを支配しているとされる肝気が長く停滞しているため、熱化してイライラし易くなったと考えます。このように、上に気が常に昇っていることから、下に位置している腎の気が空虚になり、上下のアンバランスを更に増長させたものと考えます。
体表観察をしても、肝がメインですが、舌裏のやや色褪せと腎の脈の弱さ、腹部における腎の弱り具合などから、肝と腎を同時に動かす穴を使用しながら、徐々に肝の熱をダイレクトにとる治療方針へ変更しようと考えました。

(配穴)
初診から3診目まで:照海穴。
4診目から5診目まで:天枢穴。
6診目から8診目まで:百会穴。
9診目から:太衝穴。

(治療効果)
鍼をしてから睡眠状態が良くなり、6診目前からピルの服用を中止する。その後の生理は、イライラする時はあるものの今までよりかなり楽だった。その後、何か行事などがある時は心配なのでピルをたまに服用するも、18診目ごろからピルなしでもイライラが無くなる。また、便秘薬も服用せずに快便になる。
現在も、2週間に1回程の間隔で鍼灸治療を継続中。

(考察)
生理前の自分では止められないようなイライラは、肝気のうっ血(停滞)から火邪に転化してしまう為と考えられます。イライラすると頭に血がのぼるとは正にこのことです。

東洋医学では「将軍の肝」とされる荒々しい性格の肝の臓は、精神的にある程度伸び伸びと発散していることが肝本来のやる気や勢いを生みます。  
彼女の場合は、心配事や多忙など日々の生活に追われ過ぎて起こったものでしょう。

生活自体は多忙のままのようですが、治療をすることによって気を巡らせると、過度のイライラという症状は起こらなくなります。また、治療をしてから生理の問題だけでなく、便秘解消やよく眠れるようになったことも肝気のめぐりが良くなった証拠です。鍼治療で体全体のバランスが整えられたのです。

どの人も日常生活において、多忙や心配等々、気が滞るような事ばかりかもしれません。
どうか身体が悲鳴をあげる前に、身体から調節し、快適な清々しい気分で毎日を送られますことを願っています。

2013年1月15日(火)

腹痛、便秘 []

西宮市在住 8歳 女子
主訴:腹痛、便秘
初診日:平成24年12月下旬

(現症状)
小学校1年生の夏ごろから便秘になり、5日目に病院にて浣腸で排泄(粘稠で緑色の臭い便)。それ以降、便が出ない時は、坐薬か浣腸を使用するようになる。
昨年12月の初旬に5日間ほど自力で便が出たが、腹痛が酷いため大きな病院にて検査をする。腸にたくさん便が詰まっているため、「1年半くらいは毎日浣腸しないと自力では無理です」と医者から言われる。現在、浣腸してコロコロ便か未消化便が出るが、起床時と食後2時間経つと必ず腹痛(お臍の上下が痛む)になる。力みすぎて排便後はぐったりしている。硬い便の時は、排便後も腹痛は治まらない。

(家庭環境)
2歳の妹と両親の4人家族。主訴発症当時、習い事(あまり好きでないのも有り)が多く忙しい上、祖母が入院したため友人宅へあずけられたりしていた。
母は仕事をしながら、祖母入院前までは、母親自身も習い事等、多忙な毎日をおくっていた。

(本人の性格)
一人っ子の時から感受性が強く人の気持ちに敏感。小学校入学時ごろ妹さんが誕生。同時に、夢をよく見るようになった。(剣を持ったママに追いかけられる夢や、パパに意地悪される夢など)実際夢を見ながら叫ぶことがある。

(主な体表観察所見)
舌診:紅舌、舌先紅、舌先~舌辺に紅点多数。
脈診:滑脈の中に枯脈。
腹診背候診:こそばくて詳細に触診できず。
原穴診:左太溪、後溪、照海が虚。右太衝、内関、合谷が実。特に太衝と内関が熱感強。

(診断と治療)
彼女の腹痛を伴うひどい便秘は、上記の様に精神的な事(妹さん誕生や母親多忙等)が引き金となっています。精神的な葛藤などが本来の腸の動きを停滞させてたものと考えます。これは、中医学では肝脾気滞(かんひきたい)の便秘といって、肝気(様々なストレス)が高ぶりすぎて、脾の臓の運化作用に影響を及ぼして便秘になるというものです。
肝気の高ぶりは、腹診や背候診(こそばくて触れない、督脈上の上部の圧痛等)、舌診(苔はそんなに分厚くはなく、舌が赤く舌先から舌辺にかけて紅点が多数見られる)などからも明らかです。

治療は、敏感な子ですので鍼を刺さずに、古代鍼を使用しました。

(治療結果)
2診目ごろから腹痛が楽になってきて、3診目ごろから便がサッと出るようになってきました。浣腸をすることも中止。腹痛が完全になくなりました。現在7診目ですが毎日排便できるようになりました。

(考察)
彼女は、2年生とは思えないほど大人っぽく、人への観察力がとても冴えていると感じます。何か凄い芸術家になりそうな予感・・・そんな感じの子です。(実際、図工が大好きとのこと)それだけに感受性も強く環境の変化にも敏感です。子どもは大人が思っている以上に口には出さなくても傷つき精神的に堪えてるものです。

このような子どもの体調の変化に気づき、ネットで調べて院に来てくださったお母さんの対応が速くてよかったと思います。

このように親子は一体です。子どもの体調の変化は、何かを親にうったえているものと思い今後も共に進んで頂きたいと心から念願します。

2013年1月7日(月)

動悸 []

大阪市在住 26歳女性
主訴:動悸
初診日:平成24年7月上旬

(現病歴)

小学生の頃から、緊張したり、運動したりすると動悸し脈拍が通常の2倍(150―160)になるため、深呼吸しておさまるのを待つ。(2分~5分程)

今まで検査をしても異常は無かったが、昨年の検査にて「発作性上室性頻拍」「心室期外収縮」と診断され、脈を調える薬を朝夕一錠ずつ服用するも変化は全く無かった。

ここ1~2年仕事で緊張することが多く、冬は便秘になり動悸が頻繁に起こる。その時、心臓が上がってくる感じがして、貧血様症状になりふらつく。また、寝入ったところ首を締め付けられるように息苦しくなり、動悸して目覚める事が、10分~20分単位で2~3時間続くとき有り。
この時の動悸は上記の発作とは違う感じがするが、何れにしても動悸に対する不安感が大きく、実千代鍼灸院に通っている友人の紹介にて来院される。

(その他の症状)
・高音の耳鳴りが最近は頻繁に起こる。また、肩こりや肩甲骨の凝りから頭痛になること(両こめかみ)が以前からある。

(その他の問診事項)
・動悸は、緊張時、焦ったとき、飲酒後、蒸し暑いとき、走った後などに悪化する。
・飲み物は、冷飲を好むが常温にしている。
・汗は多い方で冬でも時々寝汗をかくとき有り。
・睡眠は、寝付くのに30程かかり、夢も幼い頃から追いかけられる夢や、火事や津波の夢も多い。
・生理痛(生理1日目)も酷く、生理前に過食や便秘になり、生理後身体はスッキリする。(医者に芍薬甘草湯など処方されるが、甘草が入っている漢方薬を服用すると吐き気がするので中止)

(特記すべき体表観察)
顔面診:心・肝・腎の部分が色抜けている。
舌診:暗紅舌、舌先紅点多数、白粘苔、老舌(舌力有り)。
脈診:1息4至半、脈幅力とも有り。
原穴診:虚:左太淵・神門・外関・太衝・照海・申脉。
虚中の実:左後溪。
腹診:やや右大巨、胃土、左肝之相火、右脾募の邪。
背候診:督脈上神道から下全て圧痛熱感有り、左厥陰兪~心兪実、右志室虚。

(診断と治療)
この動悸は、緊張した時、飲酒後、蒸し暑いとき、走った後など一時的に体の中に熱がこもった時に起こるのが特徴です。
更に、汗が多く冬でも寝汗をかく事があり、寝付きが悪いという症状を伴います。

これは、東洋医学の動悸の原因の中では、心火上炎(しんかじょうえん)に属すると考えられます。ストレス過多によって本来、熱性の強い「心の臓」に更に熱をこもらせて発症するというものです。

心の臓の火が盛んになるということは、陽と陰の関係で言えば陰が減少するということになります。陰が減少すれば、特徴として上記のような寝付きが悪い、寝汗をかくという事が起こりやすくなります。

よって、治療は、心の火(熱)を取り去り、同時に陰を増やすツボ、今回は左の後溪というツボを中心に使用していきました。

(治療結果)
一回目の治療の後、身体の緊張が緩みましたと言われ、数回の治療で夜がよく眠れるようになってきました。心の火が冷まされると、眠れるようになります。すると徐々に、陰も補われて動悸もなくなってきました。

多忙時や緊張が強いとたまに寝付きが悪くなることがありますが、鍼灸の治療で直ぐに回復できるようになり、首が締め付けられるという症状もなくなりました。

(考察)
患者さんは、性格的に控えめで我慢強い方なので発散を上手くできずにバランスを崩されたのだと思います。

心の臓は、程よい陽気に支えられて精神活動を安定させています。上記のように、陰と陽のバランスがとれれば、体調も調い、それが精神面にも影響してきます。本来ご本人が持っておられる優しさと芯の強さがバランス良く発揮されますよう心から願っています。