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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2010年12月28日(火)

肝機能障害後の心疾患を伴う更年期障害 []

西宮市在住 初診時54歳 女性 音楽家
主訴:肝機能障害後の心疾患を伴う更年期障害
初診日:平成22年3月初旬

(現病歴)
今年1月末、突然の発熱(38℃)と共に胃がムカムカする症状を伴い病院にて検査を受ける。肝機能数値が非常に高く、即8日間の入院となる。入院してから入眠剤を使用して何とか4~5時間の睡眠がとれるが、薬が無いと途中で覚醒するようになる。
現在、両方の肩甲骨が痛く、胸が絞られるように苦しく重くなる。少し動いただけで息切れがするため仕事が出来ず鍼灸治療を開始する。

(更年期の症状)
2年前から生理がストップする。(ホットフラッシュ無し)
昨年5月から体調に変化があり、気分がすぐれず身体が重くなったため、9月からホルモンで生理を起こす。元気になったが今年1月入院してから一切の薬を中止した。
退院後、突然上半身が逆上せて汗をかくようになった。

(既往歴)
高校2年から:ぎっくり腰など腰痛多数回。
49歳ごろ:副鼻腔炎。
32歳:声帯ポリープ手術。
体重減少(1年で14キロ減):中性脂肪が高かったため食事制限と、便通をよくする薬を使用してから。
今年8月:胃炎(仕事のストレス)

(家族の病気)
実父:心筋梗塞で他界。(63歳)

(特記すべき体表観察)
舌診:淡暗紫、色あせ、白苔
脈診:弱のため触診が困難。
原穴診:陽池虚(右>左)太白左虚、太衝・衝陽右虚中実。
背候診:右肝兪実(酷い硬結)、左心兪実、右心兪虚。
腹診:全体に虚軟特に下焦(臍の下)の著しい虚、右肝相火
左脾募冷感強。

(診断と治療方針)
:(標)心気陽虚証。(本)肝鬱気滞証。
心身ともに多忙な生活を長く続け、肝気を常に昂ぶらせていたところ、昨年5月、身体が重く調子が悪くなると共に、中性脂肪が高かったため急激な食事制限をした。
更に更年期によるホルモン療法で無理に生理を来させるなどする。
これらにより、肝気実(過剰なストレス)から、心気虚~心陽虚(虚とは弱りの意味)に転化し、更年期時期に心疾患を伴い体力のみでなく精神的にもやる気が無くなったものと思われる。
この「心の臓」の重症度合いは、殆ど赤みが無く、淡い紫色るで潤っているなどの舌診に明らかである。且、脈が殆ど触れず、更年期障害による逆上せ時の汗が冷たくダラダラとかく。これは東洋医学では、心陽(心臓の陽気)が非常に弱っている事を示し重篤な状態にあることを示す。

東洋医学での負荷試験(北辰会による)においても、少し動くと動悸がし、入浴数分で疲労感が増すなど、虚(弱り)が大きい(心の気虚)と考える。
心臓の陽気を高めるために陽池に多壮灸を施し、胸苦しい症状と共に舌診、脈診、浅黒い顏色が赤みを持つことを急ぎ、それらを心の陽気回復への効果判定とする。

(選穴)
週3回の治療を施す。
1診目~:陽池左右の灸(多壮灸)
右熱さ弱い。+肝兪。
5診目~:陽池左右の灸、時々気候が寒いときに
+関元灸
、公孫または、心兪に15分置鍼。
29診目~:陽池左右の灸、照海。
35診目~:灸を中止、天枢に20分置鍼。

(経過)
5診目ごろから少しずつ元気が出て起きてられるようになる。
12診目ごろからホットフラッシュの回数が減少。
17診目から数時間の仕事を開始できるようになる。
38診目ごろから脈がはっきり取れるようになり、歩行時の息切れが無くなり、丸一日元気な日が出てくる。
舌診:淡紫色から淡紅色~暗紅色、顏色に赤みが出るなど回復所見が見られた。

(考察)
重症な状態でしたが、薬を服用することもなく鍼灸治療のみで現在毎日元気に働けるまでに回復されました。
お父様を心臓疾患で亡くされており、途中何度も弱気になった事も。また少し元気になると無理をし、心臓の圧迫感で苦しくなる症状の繰り返しでした。

北辰会代表藤本蓮風先生は、著書「経穴解説」の中で、「陽池という穴処は、西洋医学でいう強心剤のような働きをします。したがって、おしっこが出にくい時、脾腎の陽気が弱ったり、あるいは湿困脾土みたいな形で、水邪の停滞するものに効果があります。」と言われています。
実際、陽池に灸をすると尿の出が良くなり、心気・心陽が回復してきたことはその顏診、脈診、舌診、そして腹診にも明らかに現れました。(下記写真:しっかり力強く出せるようになる。)

現在も週1回、治療に来られていますが、今まで何度も繰り返していた腰痛も起こらなくなりました。このように、肝気の昂りが高じると、「心(しん)の臓」に影響が及びます。同書の中で「心(しん)を調整すれば、五臓が安定する」と言われている通りです。更年期頃は特に、よく散歩しリラックス時間を持つように養生を心がける事が必要です。


12月10日舌背

2010年12月24日(金)

手根管症候群 []

西宮市在住 女性 初診時54歳 デスクワーク
主訴:手根管症候群
初診日:平成22年5月下旬

(現症状)
18年前から両手の指先が痺れるようになり病院にて手根管症候群(最後に症状など記載)と診断される。
特に右手指の痺れはひどく、電話で話したり、自転車のハンドルを握るなど同じ姿勢時に指のしびれ感がひどくなる。
また、心臓より高く手を挙げると手全体がしびれてくる。
長年、仕事でタイプを打ち続けていた(1日約8時間)事が引き金になったと思われる。また、パッチワークを趣味にしていたがそれも現在できなくなる。最近、パソコン上での仕事が多く、指のしびれが益々ひどくなり来院される。

(その他の症状)
・更年期で2年前から生理が無くなる。最近になって軽い運動でも動悸がし、のぼせ(ホットフラッシュ)が起こるようになる。
・右手中指の第一関節が腫れる。(へパーデン結節):2年前母親の闘病中に発症。
・普段から痰が多く、咽喉に何か詰まった感じがする。

(既往歴)
1年前:腰痛

(その他の問診事項)
・冷たい飲み物を好む。飲酒毎日ビール(350CC)。

(特記すべき体表観察所見)
穴診:神道圧痛、肝兪右熱感、左照海虚。
舌診:暗紅、白苔、歯痕(舌に歯形がついている状態)有り。
腹診:心下、左脾募の邪、左大巨虚、両肝の相火実。
脈診:滑脈。

(診断と治療方針)
指先の痺れは、18年も前(35歳ごろ)に発症しています。当初は、タイプやパッチワークなど手を使う事が多かった事と、多忙による気の上昇が重なったため発症したものと推測しました。
北辰会方式での「空間論」においては、「手先は頭であり、人間の身体をひとつの磁石と考えれば南に相当する。」とあります。手指の使いすぎは、上に気を集めすぎます。と共に、多忙により気は更に上昇します。

そこへ、出産を経て、更年期を迎えたことにより、今度は腎などの下焦(した)が弱っていきます。人間の身体は全て上下、左右、前後とバランスを保っていますが、更年期は「下が弱る」事によって「上に気が上がり」更に上下のバランスを崩し易くなるためホットフラッシュ、五十肩など上の症状が出やすくなるのです。この「腎を中心とする下の弱り」が、益々「上にあたる手指の痺れ」を増悪させたものと考えます。

飲酒飲食過多(胃の気がしっかりしている)や脈力有力、舌の紅色などを考え上の百会を瀉(しゃ)すことにより、下の腎を強化する治療方針をとる。百会を瀉すとは、過剰な気の上昇の(偏り)を平らかにするという事。(下記考察の「経穴解説」引用を参考に)

(配穴と経過)
週1回の治療を開始
1診目~7診目まで:百会穴
8診目~13診目まで:肝兪穴
14診目~18診目まで:百会穴
22診目~:脾兪穴

★15診目ごろからどんどん痺れがましになってくる。22診目には全くしびれを感じなくなる(10月時点)。

(考察)
18年間の手指のしびれが週1回、約半年の鍼灸治療のみで完治しました。人間の身体全体のバランスを調整することにより、1本の鍼で効果を出す事も可能なのです。

北辰会代表藤本蓮風先生は「経穴解説」の中で、百会の穴(ツボ)について「陽気が盛んになり過ぎたものを降ろす。あらゆる気の上昇というものがありますね。(略)上実下虚という、上が実して、上焦が実して下焦が冷える。そういった場合に、百会を瀉(しゃ)す事によって気を下す、気を下して戻す。(上下のバランスをとる)」と言われています。

特に、更年期など男女共に50歳前後、腎、膀胱など下が弱る時に、仕事など多忙のため過剰に気が上がる状態を続ければ、「上実下虚」という身体のアンバランスを生じます。そして、耳鳴りやめまい、甲状腺の問題、眼精疲労、頭痛などなど上に症状が出やすくなり、共に尿漏れ、腰痛、膝痛など下の問題、いわゆる老化現象が現れやすくなります。

常にバランスをとっておくことは、単に指先の痺れの問題解決だけでなく、今後大きな病気を未然に防ぎ、老化を遅らせることにもなるのです。

(西洋医学的における手根管症候群の見解)
手首の手のひら側にある靭帯に囲まれた手根管というトンネルの中を、正中神経と9本の指を曲げる筋肉の腱が通っています。このトンネルのなかで神経が慢性的な圧迫を受けてしびれや痛み、運動障害を起こす病気です。

原因は、手の過度の使用、姙娠によるむくみ、骨折や腫瘤によるトンネルの圧迫、アミロイドという物質の沈着などが原因で中年以降の女性に多発します。

症状は、初めは人差し指、中指を中心に親指と薬指側にしびれと痛みが起こり、進行すると母指球筋が痩せてきて細かい作業が困難になります。
手首の手のひら側をたたくと、痛みが指先にひびくティネル徴候がみられ、手首を手のひら側に最大に曲げるとしびれや痛みが増強します。
首の病気による神経の圧迫や糖尿病神経障害、手指の他の腱鞘炎との鑑別が必要です。

治療は、軽度から中程度なら装具を使用したりステロイド薬のトンネル注射を行い、これらが効果の無い時は手術を行います。(ホームページより)

2010年12月22日(水)

更年期障害 []

明石市在住 初診時49歳 女性 主婦
主訴:更年期障害
初診日:平成22年4月28日

(現在の症状)
今年1月、2月と生理はあるものの少量で終わり、3月には完全にストップする。その後、冷えのぼせ(ホットフラッシュ)、寝汗、動悸、不安感に襲われるようになった。
特に仕事から帰った夜に発症。4月の初め、疲れているのに眠れず、眠りに入っても1時間毎に起きるようになる。
益々不安感が増すようになった頃、自覚症状も無く突然、血圧が上昇(180/110)したため、来院される。

(既往歴)
・幼少期~20歳まで:喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性 皮膚炎、アレルギー性結膜炎、時々中耳炎。
・26歳時:喘息発作

主訴に対しての
(増悪因子)悪天候時、仕事が休みの日、仕事の日の夜は特に酷くなる。
(緩解因子)散歩など運動後。

(その他の症状)
・腰がだるくて抜けそう。
・常に頭上が凝っている感じ。
・胃がもたれる。
・喉の閉塞感。

(最近の生活環境)
介護施設にて仕事従事。2人の子どもが就職してから帰りがバラバラのため遅くから食事の支度をし、朝早くからの(5時半ごろ)お弁当作りなどで睡眠不足が続いていた。

(体表観察)
舌診:紅舌、舌先紅点多数、色あせ、白膩苔。
下記写真1、白苔が多いが舌の先は 苔が剥げて
紅い点点が多数有り。気が上に上がっている事を 示す。

下記写真2舌の色は舌腹(裏)を 中心に見る。 かなり赤く内熱を示している。

脈診:1息4至半、滑弦脈の中にやや濇脈。有力。
原穴診:左太淵、神門、大陵、腕骨虚。左合谷虚中実。左太白虚。左太衝虚中実。臨泣左実。右照海虚。
背候診:神道圧痛、全体的に右肺兪~胃兪まで虚中実。左心兪虚中実。
腹診:左脾募、左肝相火実、左大巨虚。

(診断と治療方針)
-心腎不交証 -
更年期障害の症状は人によって多少の違いはあるものの、上記の様に、突然起こるホットフラッシュ、動悸、寝汗、不眠に加え、不安感がその特徴である。
東洋医学では、これら一連の症状は「心の臓」と「腎の臓」
のアンバランスを原因とする。
「腎の陰(液)」が不足すると、元来陽気の強い「心陽」が昂ぶり、不眠や不安感が起こる。心の臓の熱を冷ましながら腎陰を守る治療として、後溪穴を選穴した。

1診目~6診目まで:後溪穴(10分~15分置鍼)
7診目:天枢穴(20分置鍼)
8診目~16診目:心兪穴(20分置鍼)

(治療結果)
1診目で眠れるようになる。2診目で精神的な不安感は無くなる。最近(8診目ごろ)、職場で気を張ることがあり背中~腰にかけてのだるさが発症。同じく心神を調節する心兪穴に変更する。
北辰会代表、藤本蓮風先生は、著書「経穴解説」の中で「後溪穴は、一身の熱に関与し、心神を支配する作用も持っている」と言われている。

(考察)
東洋医学での「腎の弱り」は、頻尿、尿漏れなど尿の問題、腰痛、物忘れ、足腰が冷える、白髪、歯や骨がもろくなる等いわゆる老化現象として現れます。
更年期は、老化の入り口であり体調が大きく変化する時です。老眼になるのも50歳前後、これらは、下焦(腎や膀胱)が弱ることにより、上焦(心)や肝が昂ぶり易くなり上部の症状(めまい、五十肩、耳鳴り、ホットフラッシュなど)が起こりやすくなります。この時こそ、散歩などで十分下半身を鍛え、上に上った気を引き下げる(リラックス)必要があります。


1、舌背(上)


2、舌腹(裏)

2010年12月16日(木)

アトピー性皮膚炎 []

川西市在住 初診時6歳 男の子
主訴:アトピー性皮膚炎(全身)
初診日:平成22年6月初旬

(経過と初診時の症状)
生後2ヶ月でアトピー(顏、頬~両ふくらはぎ~身体全体)が発症する。ステロイド軟膏、リンデロン、ワセリンなど使用するも効果なし。
赤ちゃんの時、蛇口の水の滴る音で目が覚めるほど敏感で、夜鳴きがひどく母親はだっこしっぱなしだった。
高熱もよく出し嘔吐していたがスイミングにより解消する。
今年1月からステロイドを減らしていくが乾燥して痒みが増大し、中旬からステロイドを中止すると、歩けないほどアトピーが全身に出て夜も眠れなくなる。ステロイドを再び使用するが(量は半分に)寝ていても掻きむしる。皮膚は苔癬化しひどい状態のため知人の紹介にて来院される。

(その他の症状):便秘傾向、汗が少ない、鼻炎、多夢(追いかけられる)。食欲不振。

(血縁者の体質):父花粉症。

(増悪因子):犬、秋など乾燥している時、運動後・精神的ストレス後、カレーとお寿司には反応する。

(顕著な体表観察所見)
舌診:淡紅、舌先紅点、薄白苔。
腹診:胃土・肝相火・臍周。
原穴診:太白
背候診:心兪熱、肝兪熱実、脾兪。

(診断と治療方針)
証:心肝火旺~化風,肝脾不和証
生まれた時からの激しい夜鳴き、物音に敏感など肝気が高い
傾向
にあったところ、その肝の高さが脾胃(一般での胃腸)
に影響を及ぼし食不振などが現れたものと思われる。
小学校に入り、痒みなど更なるストレスにより肝気が益々高
ぶりそれが「心(しん)の臓」にまで影響。
「心の熱」(舌尖の紅色、多夢(恐い夢)など)のために風(ふう)が生じ、乾燥し痒みがきつくなった
熱の割に舌に潤いが有り、赤みがひどくないのは、口の渇き
などで冷たい飲料を多く摂取しているためと考える。

(週1回の治療を開始。)
4診目まで:百会置鍼(10分):皮膚がややしっとりしてきた。
5診目から23診目まで:後谿置鍼(10分)たまに古代金鍼で太白を補う。

9診目ごろ:顏が徐々に綺麗になり改善へ向かう
9月新学期が始まり、担任の先生からも綺麗になり驚かれる。
便通も早くから改善され、現在殆どの皮膚も綺麗になり痒み
もほぼなくなる。(下記写真)

(考察)
北辰会代表、藤本蓮風先生は、著書「臓腑経絡学」の中で、「アトピー性皮膚炎の殆どは肝の暴走によって、少陽枢機に異常を起こす。少陽枢機というのは、腠理(毛穴)を開闔(開き閉じる事)し発汗させたり、二便(尿と便)を促したりする・・・」と言われています。
肝の暴走とは、肝の異常な高ぶりのことです。それが、発汗をさせなくし、便秘を招きます。結果、体の内に熱を溜めてしまいます。その熱が、陽炎の様に風(ふう)となり皮膚の強烈な乾燥を引き起こします。皮膚炎など「炎」がつくものの根本原因は熱にあるのです。
1回目の治療の後、不安げな顏が明るくなり、大好きなポテトチップス(油脂は身体を熱化させる)も自分から食べないようにする等、本人とご家族の努力、鍼に対する信頼が良好な結果を生みました。


平成22年11月


同年月 腹部


同年月 背部

2010年12月14日(火)

頭部ヘルペス []

西宮市在住 初診時40歳 女性 主婦
主訴:頭部ヘルペス(左側頭~右側頭、耳にかけての刺痛)
初診日:平成22年9月27日

(現病歴) 10年前から緊張型偏頭痛が発症、頭全体がハチマキを巻いたように重く、吐き気を催す。数週間前、旅行から帰ってきてホッとした翌日、左側頭が刺痛し、10分おきに同症状が起こる。この刺すような痛みは初めてで、3日目から左耳もキーンと痛み出し耳閉感を伴い、徐々に右側頭部から右耳にかけ、痛みが広がってきた。
ヘルメットをかぶったような、締め付けられる痛みが朝に起こるとその痛みは一日中継続する。
検査しても異常はなく痛み止めを処方され、後日、医者から頭部ヘルペスと診断される。
薬を服用すると両肩が張り、身体が重くなるため来院される。

(既往歴)
29歳:甲状線乳頭ガン(左)摘出手術。
30歳~:緊張型偏頭痛(酷い時は嘔気)。

痛みの増悪因子)イライラ、生理前。
痛みの緩解因子)薬(バッファリン、ロキソニン)、入浴中尚、緊張型頭痛は肩を温めると楽になる。

(その他の症状)
・口内炎ができ易い
・便秘
・風邪を引き易い

(生活状態)
何かに挑戦していないとストレスが溜まり、何事も魂を詰めてしまう性格。偏頭痛はかなり多忙な時期に発症。その後3人の子育てをする中、多忙時に偏頭痛は頻繁に起こる。しかし、気が張っている時は風邪は引かない。

(発症当時の環境)
8月キャンプに行き、疲労したまま多忙な生活を続けた後、風邪を2週間引き扁桃腺を腫らした。多忙のため休めず、そのまま旅行に出発。子ども達をはじめて飛行機に乗せるため緊張していた。その旅行は初めて頭痛もなく快調だったが、帰ってきた次の日から主訴が発症する。

(体表観察所見)
舌所見:暗紅、白膩苔、やや胖大。脈所見:滑弦脈。穴(つぼ)所見:外関左冷、神門左・太淵右・腕骨左虚・太衝右虚中実、心兪左熱、神道、八椎下圧痛、帯脈黒。

(診断と治療方針)
頭痛の原因は何種類もあるが、偏頭痛はイライラ時や生理前に発症していることから肝気が過度に上昇した故の頭痛と思われる。そこへ風邪を治さないまま内陥(奥に沈めてしまう)させ、病を少陽に追い込んだために激しい痛みが出たものと思われる。少陽胆経の経絡、経筋が丁度、痛い部分を通っていることからも明らかである。
風邪も関わっていることから、左心兪穴を選穴した。

(治療経過)
1診目~5診目まで心兪
6診目~9診目まで天枢

現在完全に頭痛は消失する。途中かなり痛いときもあったが、チョコレートケーキを毎日食していたとの事。チョコレートケーキをやめ、散歩を勧める。

(考察)普段から緊張状態にある人は、ホッとした時などに風邪を引いたり、症状が悪化する時があります。
患者さんも、緊張状態の中、旅行に出かけ、帰宅してホッとした時に発症しています。
刺痛になったのは、風邪を治さず、病を少陽という一歩深いところに追いやったことが考えられます。北辰会代表、藤本蓮風先生は、「臓腑経絡学」の中で、「肺結核等に使用するストレプトマイシンやカナマイシンを使って耳が聞こえなくなるのも、殆どが病を少陽に追い込んでいるのであり、風邪引きの途中で耳が聞こえないとか耳鳴りがするのも同様である」と言われています。
1回目の治療の後、久しぶりに頭痛が無くなったことを喜ばれていたのですが、途中、チョコレートを過食し再度痛みが発症しました。肝気を熱と共に上げてしまったからです。
頭痛の前に頭がピリピリして熱くなることから、過度のストレスや、にんにく、ピーナッツ、油物など熱化する食は控える事。頭のピリピリが起こったら休むという習慣をつけることが今後、大きな病を防ぐことに繋がると思います。