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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2010年12月9日(木)

アトピー性皮膚炎 []


尼崎市在住 初診時1歳0ヶ月 女の子
主訴:アトピー性皮膚炎(特に両頬と薬指)
初診日:平成21年8月20日

(症状と環境)
生後1ヶ月半ごろからアトピーが発症する。膝と耳(切れる)にも出るが両頬が一番ひどかった。今年1月からステロイド剤を塗り、よくなっていくが暑さと同時に今までにない程ひどく顏に出るようになった。両頬は真っ赤に腫れあがり、掻きすぎて血が出ることもある。顏を床にこすりつけて痒がる状態。ステロイド剤も効果なく鍼治療を開始する

(その他の症状)
3~4ヶ月は母乳。途中出なくなりミルクに変えるが湿疹は出ない。6ヶ月~7ヶ月までは、2、3時間おきにキーキーと甲高い声で泣いていた。離乳食は6ヶ月後から開始する。最近食欲があまりない。肌の色は透けるように白い。右手薬指が赤くただれている。

(両親の健康状態)
父親がアレルギー有り、母親は胃腸が弱く現在、同鍼灸院にて治療中。

(治療方針)
東洋医学でも、皮膚疾患には様々な原因や種類がある。多くは皮毛と関わりの深い肺経と、肝経(肝気の高ぶり)が関与する場合が多い。
顔面診では、全体的な色の白さ度合いは「肺の臓」に、眉間~目の周りが青白いことは「肝の臓」に関わる。
初めての治療時も、目がよく動き、行動も過敏で、甲高い声で泣いていたことからも、肝気が高ぶりやすい子である事が容易に予測できた。両頬の酷い赤みと痒さは、肝気と肺気が相互に影響し、それが酷くなると熱となって胆経へ波及。耳や両頬に発症したものと考えた。
中心となる肝気を下げる事が、肺経、胆経の改善にも繋がることから、肝を中心に、証(治療診断)を肝鬱化火証とし古代鍼(こだいしん)を用いて治療を試みた。

尚、古代鍼は、北辰会代表の藤本蓮風先生が生み出した接触鍼のことで皮膚への刺入はしない。主に過敏な方や乳幼児など子供に用いられる。

(治療経過)
百会と背部への散鍼(接触鍼)を継続する。10診目から手の指(十井穴)への接触鍼を加える。

鍼をした後、母親の横でぐっすり眠るようになる。(下記写真左)
18診目ごろから頬の赤みは落ち着き、肌が丈夫になってくる。また、同時に便もしっかりした形のものが出るようになる。24診目ごろから薬指の赤みも良くなってくる。(下記写真右)

(考察)
現在、彼女は院の人気者です。現在、人見知りが嘘のように、人に興味深々で院内をニコニコしながらちょこちょこと走り回っています。
両頬がどんどん綺麗になっていく姿は、他の患者さんにとっても鍼の効果の大きな証明となっています。
完全にステロイドを止め、このように綺麗になったばかりでなく、本来の伸び伸びした性格も如何なく発揮。これが鍼灸治療ならではの素晴らしさだと思います。
鍼は刺さないため、1歳のお子さんでも気持ちよさそうに背中を向けてくれます。お母さんも共に治療を徹して受けてくださった事に感謝します。


平成22年9月15日撮影


平成22年11月28日撮影

2010年12月8日(水)

脂漏性皮膚炎 []

神戸市在住 初診時23歳 男性 大学院生
主訴:頭皮の痛み
初診日:平成22年10月19日

(現病歴)
約3年前から頭髮部分、特に頭頂部にチクチクした痛みが発症する。入浴時、軽い洗髪以外は痛みで触る事が出来ない。髪の毛も細くなり抜け易く、ぱさついたりするようになる。頭皮の痛みはどちらかと言えば左のほうが強い。
医者には脂漏性皮膚炎と診断され、半年間、痛み止めの薬とステロイド塗り薬を使用するも、症状の変化が無く友人の紹介にて来院される。

(既往歴)
4年前と3年6ヶ月前:自然気胸
3年前:肺に影(結核の疑い)

(痛みの増悪因子)
・飲酒が過多の時・夏・発汗時(入浴中の発汗はまし)・集中した後
(痛みの緩解因子)
・入浴中・勉強中など集中している時

(生活習慣)
今年から、朝4時から4時間スーパーの品出しのアルバイトで重い物を持つ事が多い。
日5~6時間の勉強により夜に目が充血する。

(その他の主な症状)
・冷飲で胃が重くなる。・疲れやすい・口内炎が出来やすい。

(特記すべき体表観察所見)
・脈所見:1息4至半で弦脈。舌所見:暗紅、白膩苔、舌尖紅点多数。(下記の写真参照)
腹診所見:右脾募~肝相火、臍周、胃土の邪が顕著。
・ツボの状態:百会左熱感、右太淵虚、左太谿、照海虚、左太衝、衝陽実、
左心兪穴虚中実がそれぞれ顕著。
・頭皮が赤く発疹が多数みられる。


初診時の舌の写真。舌先が赤く点々が多い事から気の上昇を示す。

(診断と治療方針)
頭部は、陽気が最も集る所で、百会穴はその代表である。
この頭皮痛も上に気が揚がり、気と共に熱も上昇したために発症したものと考えた。
それは、増悪因子(どのような時に悪化するか)にも明らかで、頭皮の痛みは、飲酒過多の時、夏、発汗時(入浴中の発汗はまし)、集中した後などで、これらは全て「気」と「熱」が上(頭部)に上がったためと考える。しかし、口の渇きがあまりなく、温かい飲み物を好むことから、熱はそれほど酷いものではなく、また、入浴で頭皮痛がましになる事から、「熱」よりも「気」が上部(頭に)あがり過ぎた為に起こったものと考えた。(入浴は上がった肝気を下げ緩める)
また、このように肝気が上昇過多になったのは、精神的なストレスがその原因と考え、心神(精神的作用)にアプローチをするツボを選穴した。

上記の理由から、肝気上逆証>化火証とし、心兪穴(左)に10分置鍼する。

(治療経過)
1診目~5診目まで心兪穴を使用し、ほとんど頭皮の痛みは消失し体調もよくなる。
腹部の邪(硬い部分)が緩んだ事は、心身共に緊張が取れてきた事の証明になる。

(考察)
なぜ頭皮痛を起こす程までに気が上がったのか、東洋医学では、これを本人の生活習慣の中に原因を見出し明らかにしていきます。患者さんは、ご自分が挑戦していた事に対して長年、緊張状態にあったことがその引き金になったと考えました。
考え事や緊張すること(精神的にも肉体的にも多忙過ぎるなど)が度を越えた時、かつ、どこかに(東洋医学で言うところの腎や脾の臓)弱りがあると、気の上昇を制御できなくなり、頭皮の痒みや痛み、また、回転性のめまいなど、頭部などの上部に症状が現れやすくなるのです。この事を踏まえ、心兪穴を選穴しました。
北辰会代表、藤本蓮風先生は、「経穴解説」の中で、「心兪穴は過敏な方は反応し過ぎますので、置鍼時間に考慮するとか、鍼の種類を変えて古代鍼にするとか慎重に」と述べられています。
この症例のように、既往歴に自然気胸などがある場合や緊張状態が長く継続している時は反応が過敏になるため特に慎重を心がけました。
3年弱の頭皮の痛みが、1本の鍼で、数回で効果が出たことは、肝気の上昇に対して有効な選穴であった故だと考えます。彼の秘めたエネルギーが最高に発揮される時が来ると信じます。

2010年12月7日(火)

唾液過多、喉の閉塞感 []

西宮市在住 初診時24歳 女性 臨床検査技師
主訴:唾液過多、喉の詰まり。
初診日:平成22年9月22日

(現病歴)
8年前から喉に塊があるような違和感を感じ、詰まったようになり耳鼻咽喉科にて検査する。異常は無く漢方薬(半夏厚朴湯)を処方されるが効果なし。また、4年前から、唾液が多く出るようになり意識して飲み込まないと口の中にどんどん溜まるようになる。病院にて喉の検査をするがこれも異常は無く、精神的なものではないかと言われ、抗不安剤を3ヶ月間服用する。症状の変化無くホームページを検索し来院された。

(既往歴)
小学校:アトピー発症。
中学生:便秘、口内炎もよく出来ていた。
高校生:頭痛、酷いときは嘔吐して寝込む。喉の詰まり感。
20歳:唾液が多く出はじめる。

(増悪因子)ストレスがかかった時など緊張時。
(緩解因子)仕事の後ホッとしたとき、1人でいる時、集中しているとき。

(その他の症状)
便秘、両肩こり、手足の冷え性、口唇上下とも荒れ易い。

(特記すべき体表観察)
脈所見:1息4至、力有り、左の関上と尺位に硬くてカサカサした(枯脈)がある。舌所見:紅舌でやや色があせている、白膩苔、湿潤、やや腫脹している。腹診所見:左脾募、肝相火、臍周辺の緊張。ツボ所見:神道の圧痛、太衝(右)虚中実、太谿(右)虚。

(主訴発症時の生活精神状態)
喉の詰まり感(8年前~)は高校生の時で人間関係などにストレスがあった。
唾液過多(4年前~)は臨床検査技師として実習や課題が多く多忙だった。

(現在の生活環境と食生活)
現在は、一日中パソコン作業や新薬開発の研究や実験などで魂をつめている。食事はコロッケ、肉食、油物が多くストレス時にチョコやポテトチップスを食べてしまう。

(診断と治療方針)東洋医学では、口中に唾液が大量に湧き、頻繁に唾を吐く事を「多唾(ただ)」といい、また、喉の詰まったような閉塞感を「梅核気(ばいかくき)」と呼んでいる。
患者さんは脾の臓が弱っているところ唇の荒れ、唇内側の口内炎、便秘、やや貧血など)ストレス過多となって肝気が高ぶり、更に脾を弱らせたために発症したものと考えた。
肝の臓と脾の臓は密接に関係している。
多唾は、脾虚湿生証(脾が弱ったため余分な水が口に溢れ出る)梅核気は、肝鬱気滞証(肝気が停滞している状態)とする。

配穴:1診目~3診目:百会
4診目~9診目:天枢
10診目~13診目:太衝

(治療経過)
1診目で良く眠れて3診目から梅核気がややましになる。7診目ごろには便通が良くなり、現在唾液も梅核気もかなり改善され、ストレスがかかっても発症しなくなってきた。

(考察)
様々なストレスがかかっても、うまく発散出切る人と出来ない人がいます。彼女は、沈思黙考型でどちらかと言うとストレスを内に溜め込み易いため、気の流れが停滞しがちです。
その上、誰もが経験するようにストレスで過食になりそれが脾に影響を与えてしまいます。脾の臓は血液を生成したり、水分をうまく代謝したりする作用があります。治療後、肝の気を巡らすことにより、便通と尿の出が良くなり身体の中の水分が排出され、唾液が溜まらなくなったのです。
彼女の様に、身体を治していけば多少のストレスには負けない身体になり、性格もよい方向に発揮されます。