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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2013年2月27日(水)

両卵巣のう腫再発予防 []

宝塚市在住 女性 28歳
主訴:両卵巣のう腫再発予防
初診日:平成24年5月初旬

(現病歴)
3年前、腹部の激痛のため内科に行き腹膜炎と診断される。薬で痛みは治まったが、念のため婦人科で検査を受けると両卵巣のう腫が見つかる。
1年の間に大きくなったので、2年前卵巣のう腫の摘出手術を受ける。
術後、1年間生理を止める注射を打ち、その後の1年間は錠剤にて生理を止め現在も継続中。3ヶ月に1回検査を受けている。たまに、少量の鮮血がある。
生理を止めてから、周期的に身体が怠くなり気分も低迷して仕事を休んでしまうことがあり、生理を止めなくても卵巣のう腫が再発しない事を希望し友人の紹介にて来院される。

(その他の症状)
・最近、考え事をすると寝付きが悪くなる。
・高音の耳鳴りが起こる。
・立ちくらみがする。
・手足が冷える。
・左の腰が冷えると痛む。

(その他の問診事項)
飲食:お寿司、果物、アイスクリーム等を好む。飲み物は温かいお茶、コーヒーを好む。
イライラすると甘いものを過食する。
二便:便通良好、小便1日に6~8回淡黄色。
睡眠:考え事をしていると寝つきが悪くなる。

(主な体表観察所見)
顔面気色診:肝の部分が青白く抜けている、口の周辺に出来物が多い。
舌診:紅舌、舌尖紅点多数、舌辺剥けて紅点有り、舌の中央から奥に白苔。
脈診:1息4至半、幅力共有り、左尺位弱い。
原穴診:左神門・大陵・合谷・陽池虚、右京骨・照海虚、右太衝実。
腹診:右脾募から肝之相火、胃土緊張。
背候診:右肺兪~心兪虚中実、左肺兪~心兪実、右肝兪~三焦兪実。
その他:三陰交左実。

(診断と治療)
生理を薬で止めてから、身体が怠くなり気分の低迷がみられるという事から虚実(気血の滞りか不足か)の問題と心神の問題を考えてみることに。

体表観察所見から、舌診では舌先から舌辺が赤く紅点が多い事、右太衝穴の実、腹診の右肝之相火の邪、右肝兪穴、左心兪穴等の反応から、肝気の停滞と心神の問題(ストレス過多)を考慮する。簡単に言えば、心も身体も程よい発散が出来ていないと判断。

虚実で言えば、相対的な虚(血虚)は見られるものの、全体には実傾向。
よって、心神(精神)安定させ、肝気を巡らせることにより相対的な血不足も改善するツボ、後溪穴を中心に治療を進めていく事にする。

(治療効果)
4診目の時、服用している生理を止める薬、ホルモン剤を止めたいことを病院にて相談に行かれ中止する事に。生理を1年半止めていたためか、生理がくる気配が無かったものの9診目に量も普通量の生理が始まる。その後順調に生理が来るようになる。

32診目に病院に行き検査するが、医者から子宮も卵巣も全く問題なく血も溜まっていないのでもう来なくていいと言われる。現在も週1回治療継続中。

(考察)
薬から離れることは、ある面、勇気のいることだと思います。ましてやご結婚前の女性です。その中、鍼灸を信じて下さりこちらの方が感謝しています。

彼女は、我慢強く様々なストレスを、誰かに話すことより、寝ることの方が発散方法になっていたようです。きっと、誰にでも心配をかけたり出来ない甘えベタなのでしょう。
長年の気血の停滞が、瘀血という病理産物を生んで卵巣嚢腫になったのだと思われます。

発散方法にも色々有りますが、話すことや運動などは気血の巡りを伸び伸びとさせ易くします。これからもお散歩と共に、少しずつでも思っていることを信頼できる誰かに率直に話してみてもいいのではと思います。

ともかくも、病院にもう来なくていいといわれました!との彼女の嬉しそうな顔が印象的で何より嬉しかったです。

2013年2月12日(火)

右殿部痛 []

大阪市在住 男性 79歳
主訴:右殿部痛(+ふくらはぎ・足甲痺れと冷え・足裏浮腫み等)
初診日:平成24年8月下旬

(現病歴)
昨年のゴールデンウィーク明けに1週間ゴルフをした後、2日後から右殿部痛、ふくらはぎがジンジンし、足の甲が痺れて冷え、足裏が腫れぼったくなる。500メートル程歩くとこれらが出現する。5~6分休み殿部を叩くと痛みはマシになる。
整形外科では、神経を痛めたことと、脊柱管狭窄症が原因ではないかと言われる。マッサージや牽引、電気治療を2ヶ月受けるがその直後のみ痛みはましになるがまた元に戻る。薬を服用しても変化は無し。入浴で温めたり、じっとしているとましになり、動くと痛みは増す。
現在治療中のお嫁さんの紹介にて来院される。

(既往歴)
48歳時:腸閉塞手術。
53歳時:胃悪性ポリープのため3分の2胃切除。術後も腸閉塞数回。
60歳頃:両耳鳴り。
65歳時:前立腺肥大。

(その他の情報)
飲料:冷飲を冬でも好むが潤す程度。
尿:尿勢・切れともに悪い、夜間尿3回。
寝汗:有り。
睡眠:入眠に30分かかる。

(特記すべき体表観察)
顔面診:心・肝・腎の部分が色抜けている。
舌診:紅舌、白二苔(白い苔が張り付いている)、やや舌に力なし。
脈診:1息4至、脈幅力ともまあまあ有り、両尺位弱。
原穴診:虚:左太淵・神門・外関・照海・申脉。
虚中の実:右太衝。右天井冷え。
腹診:左大巨、胃土、右肝之相火、右少腹急結。
背候診:左肺兪~督兪虚中実・肝兪~三焦兪まで実、左志室虚、右胃兪~大腸兪まで実。17椎下周辺の黒ずみ。

(診断と治療)
証:腎虚・足太陽膀胱経の経気不利。

60歳頃より低音の両耳鳴りや、その後前立腺肥大が見つかり、現在尿勢・尿切れともに悪く夜間尿も3回に及ぶ。これは、東洋医学的にみれば腎の臓の機能が低下している事が原因として考えられます。
実際に体表を観察していくと、腎の臓のツボが非常に虚(弱い)しています。それが腎と表裏関係になる膀胱の腑にも影響を及ぼし、膀胱経絡上の気血の流れが悪くなり痛みや浮腫が起こったのではと考えました。

治療は、初めは大巨(右)等を使用し腎を補っていき、5診目ごろから外関と臨泣の2穴を使用していきました。
10回の治療で、痛みも緩和されゴルフにも行き楽しまれておられます。

(考察)
患者さんは、実年齢とはかなり違って本当に若々しく背筋もピンっとされ、様々な事にも挑戦なさっておられます。

私の師匠はよく年齢より若く見えることは非常に大事な事だと言われています。それは、その方の「神(しん)」を見ることに通じているからと考えます。古代から神の有る者は生命力が盛んだと言われている通りです。

神(生命力)を見るのは、姿、顔だけでなく舌、脈などにおいても同様です。この患者さんは全体的に神がしっかりしておられるので治りも速かったのでしょう。

半面、細かく探っていくと、動くと痛みが増すという事や、その他の所見から虚(弱り)も見られましたので虚、特に腎の虚を意識し治療をしていきました。

100歳までもどうかお元気で若い人たちに希望を与えていただきたい心から思います。