西宮市在住 女性 40歳 既婚
主訴:逆流性食道炎
初診日:平成23年4月下旬
(現病歴)
5年前から食道・喉の違和感、閉塞感、胃もたれが起こり、酷くなると食道あたりがモヤモヤしゲップが頻繁に出るようになる。
食欲も無くなり痩せていくため病院に行くがなかなか医者に症状を理解してもらえず「気分で治せ!」と言われる。症状は益々悪化。空腹感が無く食べると食道が焼けるようなひどい胸やけが起こるなど逆流性食道炎の症状のため入院する。気分も滅入り鬱症状も出るがこれは薬1年間服用し良くなる。
逆流性食道炎の症状は、お子さんのアトピーや喘息などで多忙な毎日を過ごし、お子さんの症状が良くなってきたころ出現した。
服用している薬は漢方薬の六君子湯、ガスモチン、タケプロン、アルドイド、各種サプリなど。
(既往歴)
27歳:メニエル氏病が秋頃になると起こっていた。
29歳:扁桃腺摘出。
32歳:ピロリ菌除去。
(その他の症状)
・首、肩、背中の凝り。
・目が疲れる、かすむ、乾燥する。
・よく便秘になる。
(特記すべき問診事項)
・口の渇き有り。冷飲好むが温飲を飲むようにしている。
・口内炎が出来易い。
・耳鳴り有り。
(特記すべき体表観察)
舌診:暗紅色でやや色が褪せている。舌苔:白二苔、舌の先が赤と黒の点が多数。
脈診:1息4至半、弦脈、脈力幅とも有り。
原穴診:太白虚、太衝虚中実、照海虚、神門虚など。
背候診:筋縮、中枢、脊中の圧痛、両肝兪熱感実、心兪実など。
腹診:右脾募、左肝之相火。
(診断と治療法)
ストレス過剰は胃酸を過剰に出すことは西洋医学的にも知られている。東洋医学では、元来胃腸の弱いところストレスがかかり過ぎたため、下に下がるべき「胃の気」が逆上し、それが熱とともに胃や食道を犯し逆流性食道炎を引き起こしたと思われる。
多忙や神経を使いすぎて肝気が高ぶると、口が苦くなったり、便秘を引き起こし口内炎が出来やすく耳鳴りなども起こしやすくなる。肝気が脾胃を抑えているため肝気の高ぶりを抑える治療を先に試みる。
(配穴と治療効果)
1診目~3診目まで:百会 10分
4診目~10診目まで:後渓 20分
11診目~12診目まで:天枢 25分
治療効果:1診目後タケプロンを服用せずに来院できる。5診目にはゲップの回数が減り便秘が解消されていった。同時に胃もたれが減少し食欲が出てくるようになる。
(考察)
患者さんは現在も多忙にされているにも拘らず、逆流性の症状がかなり軽減されました。これは、胃腸が弱いところ肝気が高ぶった事が原因ですが、胃腸のツボは直接触りませんでした。むしろ肝気を下ろすツボに取穴したことにより、胃腸も改善された典型的な例です。
「脾胃を治するは医の王道なり」とは、脾胃論(胃腸こそが身体の中心)を唱えたことで有名な李東垣という金元時代の医者の名言です。
胃腸を丈夫にすることが他の臓器をも調節していく根本と考えます。
現代に流行している病は、肝気の昂り過ぎ(過剰ストレス)によって脾胃を損ねてしまい発症しているものが非常に多く見られます。
潰瘍性大腸炎、喘息、アトピー、各種癌、うつ症状、胃潰瘍、胃炎などなどです。
本来人間は、やる気と希望をもって生きていこうとする生き物だと思います。それが、やる気なし、疲れる、イライラするという反対の状態の時は自分の体に変調が起きていると気づき早めに対処していきたいものです。