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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2013年4月24日(水)

浮腫(むくみ) []

岸和田市在住 女性 43歳
主訴:浮腫(むくみ)特に両下肢
初診日:平成25年1月上旬

(現病歴)
2年前に骨髄バンクドナー提供した3ヶ月後から、施術場所の左臀部が歩行時しびれだし、左足外側を通り、足首まで痺れが出現し、両方の下半身がむくみ出す。(右>左)、張った感じがあり、冷たく重く感じる。靴下の跡が残る。最近は顔のむくみも気になりだし身体は怠い。雨季や雨の日が特に辛く感じる。他覚的には、脛骨を押さえても凹みは戻ってくる。

(負荷試験)
入浴 スッキリして疲労感が取れる。体のだるさもマシになる。
運動 ウォーキング1時間半でスッキリするが、足が痺れ出すので最近余り運動していない。昼寝をすると体のだるさが増し、動き出すと楽になってくる。

(その他の症状)
・ここ半年の間、月経周期が短くなり、月経期間も6日間から4日になる。
・油物を食すると必ず口内炎ができる。
・飲酒量が多いと翌朝に泥状便(1回のみ)
・ストレスが多いと、過食になり昨年夏に4キロ体重が増える。
2、3ヶ月前から嫌な夢をみてその後寝付けないことがある。
・尿回数は多く10回で量も多い。夜間尿1回。
・汗は少なく、水分摂取量は1日2リットルでミネラルウォーターを主に飲む。

(体表観察)
舌診:淡紅舌、白膩苔、歯痕有り(舌の両方の縁の歯型)
脈診:1息4至半、枯脈。
腹診:心下、左脾募、胃土、右肝之相火。
背候診:右厥陰兪と心兪虚中実、左肝兪から腎兪にかけて実。督脈上の圧痛霊台から命門迄
原穴診:左合谷、太衝、後溪実。右衝陽虚。

(診断と治療)
舌の状態、体表観察情報、入浴運動などの負荷試験情報から、脾(胃腸)の弱り等があるものの、そこが病理の主でなく、気の滞り(気滞)が体の水はけを悪くしているものと考えた。(水分代謝には脾、三焦、腎などが主に関係する)

ドナー提供時に臀部に刺激を与えた事や、冬で汗をかかず発散が少なかった事、ストレスなどが重なり、気の停滞が普段より増した事によって発症した浮腫と診断。

(治療結果)
初診時の治療で熟睡感が得られ、3診目には足の腫れた感じが減少してくる。6診目には顔が引き締まりむくみがとれてくる。同時に、普段から感じていた腰痛も消失。

(考察)
治療を重ねる度に、下腿や顔などを始め、体全体が引き締まり、ドンドン綺麗になっていかれました。舌の腫れぼったさも、無くなりました。2年も悩んでおられた浮腫みが、このように早期に改善された事は、動きの速い肝の蔵の「疏泄(そせつ)作用」が鍼によって、動き出したという事です。つまり、気の停滞が本来排泄されるべき水分までストップさせていたのです。

あとは、自分に優しく、自分を責めないで仕事に取り組めるようにできれば、気がひどく停滞することはなくなってきます。
普段よりよく運動して、気の停滞を起こさないようにする事が大切です。気が停滞すれば、ご自分でも何か詰まった感じがしますので、その事を感じれる程の身体の状態を保って欲しいです。

2013年3月30日(土)

胃炎・ポリープ・逆流性食道炎等の胃腸症状 []

大阪府在住 女性 32歳
主訴:胃炎・ポリープ・逆流性食道炎等の胃腸症状
再診日:平成24年12月

(現病歴)
現在、朝起きた時に胃の痛さが一番きつく、食事をとると治まるという状態が続き検査を受けると胃炎、逆流性食道炎と言われ、ポリープ2個が見つかる。ポリープの除去はしなかった。
漢方薬(平胃散と六君子)と精神安定剤を処方され服用するも変化はなし。
子育てに多忙で、ストレスが溜ると過食になり、神経を使うと舌の先や舌の縁がピリピリすることがある事が現症状。

約1年前に、腰痛と胃炎を訴えられ治療を受けられ、腰痛は2回で良くなり一旦こられなくなる。胃は7年前から調子が悪く、今まで病院で胃炎、逆流性食道炎の他、胃潰瘍の疑い、胃機能性失調症等と言われる。更にさかのぼれば、19歳の頃から毎朝胃もたれがあり食欲が無く便秘をしていた。その上、仕事でのストレスで暴飲暴食を繰り返し、胃痛になると一週間何も食べれなくなり痩せていった。
これ以降、毎年春から夏にかけて同症状が起こるようになる。昨年の秋、胃が絞られるように痛くなり嘔吐。嘔吐後は楽になるがまた痛み出す。

(その他の問診事項)
・飲食:大食で好物は、お寿司、肉料理、チーズ料理。毎食後クッキーやチョコを食す。
・二便:2日に1行でコロコロ便の時有りで、黒に近い色。緊張で便秘する。
・汗:少ないが上半身に多い、熱い汗。
・睡眠状態:熟睡感なし、寝起きが悪い、怖い夢をよく見る。
・生理状態:不定期、痛経有り、初日は常に喉が渇き口臭がする、おりもの臭い有り。2回自然分娩。
・その他:口内炎が良くできる(上あごに)、目が乾燥して疲れる。

(特記すべき体表観察)
舌診:暗紅舌、舌先の紅点多数、白い苔がべったり。
脈診:1息4至半、滑脈、脈幅やや無し。
原穴診:右太白・京骨・丘墟・腕骨虚、右太衝虚中実、左照海・太淵・神門虚。
腹診:右脾募から胃土~肝相火が緊張、左脾募、左少腹急結。
背候診:左肺兪~心兪実、左肝兪~胃兪虚中実熱、右肝兪~脾兪大きく虚、右腎兪至室虚、両胞肓冷感。

(診断と治療)
平素から過食、甘い物を食されることが多く胃に負担をかけておられます。それも、チーズ料理や肉料理等を好まれますので身体に熱を溜め込むことになります。その熱は、口内炎、便秘、熱い汗、口臭、おりもの臭い等々問診からも分かりますし、体表を観察しても特に肝~胃にかけての熱感がひどく出ていました。

また、舌の苔が非常に分厚いことから熱と湿が結びついて湿熱が体内に形成されていることが考えられます。この過食の原因となっているのは子育て等が多忙でご自分が伸び伸び出来ていない事がストレスになっているようです。様々な情報から肝の気が昂り過ぎておこる実タイプです。これらを考慮して治療を進めていきます。

治療は10診もしないうちに胃の調子はよくなられました。ツボは、太衝~後溪~公孫というように変化させていきました。

(考察)
現在、このようにストレスや緊張から過食に走る方、大多数ではないでしょうか。甘いものなどは身近かに直ぐ手に入る環境です。要は、そのストレス度合いや過食の程度がどれほどかという問題だけです。逆流性食道炎や胃炎などを繰り返していると胃潰瘍になっていく可能性は大きいです。胃潰瘍は粘膜に傷が付くわけですからそのまま治癒せず繰り返してばかりですと胃ガンにもなりかねません。

鍼灸治療はその方の今の精神状態と体表所見を考え、この先どのようになっていくかが予見でき、また、その悪い予後を防ぐことのできる優れた治療なのです。

根治してこそ意味があります。また、もっと意味のあることは、自分の身体を医者まかせや薬で目隠しするのでは無く自覚し、無理なく制御できる精神状態にまで高めることが大事ではないでしょうか。
この患者さんが身体から心へ、そして心から身体へ善の循環になりますようにいつも応援しています。

2013年3月11日(月)

脱髪 []

西宮市在住 4歳 女の子
主訴:脱髪
初診日:平成25年1月18日

(現病歴)
昨年の12月18日から4日間40℃の発熱があり、気管支炎や結膜炎、副鼻腔炎も併発し入院する。血液検査は異常なし。入院して2日目の朝、髪の毛が10数本抜けていることに気づく。
その後、抜け毛は見られなかったが、今年のお正月の朝、束になって脱髪していた。(数えると120本程)皮膚科にて検査するも異常なし。
その後、ドンドン髪が薄くなってきているように感じる。特に頭頂部が目立つ。別の病院にて「びまん性脱毛症」と診断される。薬を数回使用するも抜け毛が治まらずホームページにて当院を知り来院される。

(既往歴)
・1歳時に風邪から40℃の高熱。その後、突発性発疹が全身にできる。
・2歳~昼寝をほとんどしなくなる。寝付きは20分後、寝ているとき半眼になっている。
・3歳から幼稚園に通うが、年に2回夜1-2時に38℃の発熱がある。時期は不明。翌朝には汗をかいて解熱している。

(七情)
しっかりしていて幼稚園では自分で何でもする。「早く大人になりたい」と言う。
パパが仕事で多忙のため中々会えず、幼稚園の先生に「うち、休みの日にパパいないの・・・」とよく言っているとの事。
ママは子育てに3歳ごろまでイライラしていたので、ママの目を気にしていた。

(診断と治療)
脱髪にも虚と実があります。大きく分けて突然に抜け落ちるのは実で、徐々に抜けていくのは虚に属します。お子さんの脱髪は実がほとんどです。(子どもは陽体ですので実熱に傾き易い)彼女のように、発熱後に髪が突然抜け落ちるのは、「内風(ないふう)」が原因ではないかと思われます。
火がおこれば陽炎(かげろう)のように上部に風がおきますが、熱のためにそれが身体の中でおきる事を内風といいます。
この内風のために髪の毛が抜け落ちる事があります。1歳の頃からよく発熱されていることからも、熱を原因とした脱髪であることは明らかです。

治療は、刺す鍼を使用せずに、古代銀鍼を使用して、熱、特に上部の偏った熱をとり、内風(身体の中でおこった風)を抑える治療を試みました。

(治療結果)
熱感のある百会、手の十井穴、背部右の肝と胆を中心に散鍼を行いました。

便通が毎日良くなり、6診目ごろには殆んど脱毛は無くなり順調に回復しました。
腹部やお臍周辺の緊張も10診目を過ぎた頃から無くなってきました。

(考察)
この子は、本当に大人っぽい4歳で、大人以上に感受性が強いと感じました。
このようなお子さんは、我慢強くワガママを言いません。
大好きなパパと中々会えないことも我慢し、ママも子育てに大変なんだと察して我慢し、発散が少なく体の中に熱を溜め込みやすくなっていったのだと思います。便秘なども身体に熱を溜め込む原因のひとつとなります。

お母さんがこのように治療に連れてきて下さって親子ともに救われたのではないでしょうか。親子の絆は黙っていても通じ合うものです。今後、お母さんも彼女も上手に発散しながら(いろんな方法がありますので自分に合った発散法で)気を巡らし、変な熱を溜め込まなければ、熱を出すことも少なくなりますし大きな病気をすることも無くなります。

今も鍼灸治療に来てくださっていますが、鍼灸治療こそ気の滞りを通じさせていくのに適しています。彼女の我慢強さ、感受性の強さが今後も益々いい方向に活かされますように願っています。

2013年2月27日(水)

両卵巣のう腫再発予防 []

宝塚市在住 女性 28歳
主訴:両卵巣のう腫再発予防
初診日:平成24年5月初旬

(現病歴)
3年前、腹部の激痛のため内科に行き腹膜炎と診断される。薬で痛みは治まったが、念のため婦人科で検査を受けると両卵巣のう腫が見つかる。
1年の間に大きくなったので、2年前卵巣のう腫の摘出手術を受ける。
術後、1年間生理を止める注射を打ち、その後の1年間は錠剤にて生理を止め現在も継続中。3ヶ月に1回検査を受けている。たまに、少量の鮮血がある。
生理を止めてから、周期的に身体が怠くなり気分も低迷して仕事を休んでしまうことがあり、生理を止めなくても卵巣のう腫が再発しない事を希望し友人の紹介にて来院される。

(その他の症状)
・最近、考え事をすると寝付きが悪くなる。
・高音の耳鳴りが起こる。
・立ちくらみがする。
・手足が冷える。
・左の腰が冷えると痛む。

(その他の問診事項)
飲食:お寿司、果物、アイスクリーム等を好む。飲み物は温かいお茶、コーヒーを好む。
イライラすると甘いものを過食する。
二便:便通良好、小便1日に6~8回淡黄色。
睡眠:考え事をしていると寝つきが悪くなる。

(主な体表観察所見)
顔面気色診:肝の部分が青白く抜けている、口の周辺に出来物が多い。
舌診:紅舌、舌尖紅点多数、舌辺剥けて紅点有り、舌の中央から奥に白苔。
脈診:1息4至半、幅力共有り、左尺位弱い。
原穴診:左神門・大陵・合谷・陽池虚、右京骨・照海虚、右太衝実。
腹診:右脾募から肝之相火、胃土緊張。
背候診:右肺兪~心兪虚中実、左肺兪~心兪実、右肝兪~三焦兪実。
その他:三陰交左実。

(診断と治療)
生理を薬で止めてから、身体が怠くなり気分の低迷がみられるという事から虚実(気血の滞りか不足か)の問題と心神の問題を考えてみることに。

体表観察所見から、舌診では舌先から舌辺が赤く紅点が多い事、右太衝穴の実、腹診の右肝之相火の邪、右肝兪穴、左心兪穴等の反応から、肝気の停滞と心神の問題(ストレス過多)を考慮する。簡単に言えば、心も身体も程よい発散が出来ていないと判断。

虚実で言えば、相対的な虚(血虚)は見られるものの、全体には実傾向。
よって、心神(精神)安定させ、肝気を巡らせることにより相対的な血不足も改善するツボ、後溪穴を中心に治療を進めていく事にする。

(治療効果)
4診目の時、服用している生理を止める薬、ホルモン剤を止めたいことを病院にて相談に行かれ中止する事に。生理を1年半止めていたためか、生理がくる気配が無かったものの9診目に量も普通量の生理が始まる。その後順調に生理が来るようになる。

32診目に病院に行き検査するが、医者から子宮も卵巣も全く問題なく血も溜まっていないのでもう来なくていいと言われる。現在も週1回治療継続中。

(考察)
薬から離れることは、ある面、勇気のいることだと思います。ましてやご結婚前の女性です。その中、鍼灸を信じて下さりこちらの方が感謝しています。

彼女は、我慢強く様々なストレスを、誰かに話すことより、寝ることの方が発散方法になっていたようです。きっと、誰にでも心配をかけたり出来ない甘えベタなのでしょう。
長年の気血の停滞が、瘀血という病理産物を生んで卵巣嚢腫になったのだと思われます。

発散方法にも色々有りますが、話すことや運動などは気血の巡りを伸び伸びとさせ易くします。これからもお散歩と共に、少しずつでも思っていることを信頼できる誰かに率直に話してみてもいいのではと思います。

ともかくも、病院にもう来なくていいといわれました!との彼女の嬉しそうな顔が印象的で何より嬉しかったです。

2013年2月12日(火)

右殿部痛 []

大阪市在住 男性 79歳
主訴:右殿部痛(+ふくらはぎ・足甲痺れと冷え・足裏浮腫み等)
初診日:平成24年8月下旬

(現病歴)
昨年のゴールデンウィーク明けに1週間ゴルフをした後、2日後から右殿部痛、ふくらはぎがジンジンし、足の甲が痺れて冷え、足裏が腫れぼったくなる。500メートル程歩くとこれらが出現する。5~6分休み殿部を叩くと痛みはマシになる。
整形外科では、神経を痛めたことと、脊柱管狭窄症が原因ではないかと言われる。マッサージや牽引、電気治療を2ヶ月受けるがその直後のみ痛みはましになるがまた元に戻る。薬を服用しても変化は無し。入浴で温めたり、じっとしているとましになり、動くと痛みは増す。
現在治療中のお嫁さんの紹介にて来院される。

(既往歴)
48歳時:腸閉塞手術。
53歳時:胃悪性ポリープのため3分の2胃切除。術後も腸閉塞数回。
60歳頃:両耳鳴り。
65歳時:前立腺肥大。

(その他の情報)
飲料:冷飲を冬でも好むが潤す程度。
尿:尿勢・切れともに悪い、夜間尿3回。
寝汗:有り。
睡眠:入眠に30分かかる。

(特記すべき体表観察)
顔面診:心・肝・腎の部分が色抜けている。
舌診:紅舌、白二苔(白い苔が張り付いている)、やや舌に力なし。
脈診:1息4至、脈幅力ともまあまあ有り、両尺位弱。
原穴診:虚:左太淵・神門・外関・照海・申脉。
虚中の実:右太衝。右天井冷え。
腹診:左大巨、胃土、右肝之相火、右少腹急結。
背候診:左肺兪~督兪虚中実・肝兪~三焦兪まで実、左志室虚、右胃兪~大腸兪まで実。17椎下周辺の黒ずみ。

(診断と治療)
証:腎虚・足太陽膀胱経の経気不利。

60歳頃より低音の両耳鳴りや、その後前立腺肥大が見つかり、現在尿勢・尿切れともに悪く夜間尿も3回に及ぶ。これは、東洋医学的にみれば腎の臓の機能が低下している事が原因として考えられます。
実際に体表を観察していくと、腎の臓のツボが非常に虚(弱い)しています。それが腎と表裏関係になる膀胱の腑にも影響を及ぼし、膀胱経絡上の気血の流れが悪くなり痛みや浮腫が起こったのではと考えました。

治療は、初めは大巨(右)等を使用し腎を補っていき、5診目ごろから外関と臨泣の2穴を使用していきました。
10回の治療で、痛みも緩和されゴルフにも行き楽しまれておられます。

(考察)
患者さんは、実年齢とはかなり違って本当に若々しく背筋もピンっとされ、様々な事にも挑戦なさっておられます。

私の師匠はよく年齢より若く見えることは非常に大事な事だと言われています。それは、その方の「神(しん)」を見ることに通じているからと考えます。古代から神の有る者は生命力が盛んだと言われている通りです。

神(生命力)を見るのは、姿、顔だけでなく舌、脈などにおいても同様です。この患者さんは全体的に神がしっかりしておられるので治りも速かったのでしょう。

半面、細かく探っていくと、動くと痛みが増すという事や、その他の所見から虚(弱り)も見られましたので虚、特に腎の虚を意識し治療をしていきました。

100歳までもどうかお元気で若い人たちに希望を与えていただきたい心から思います。

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