西宮市在住 4歳 女の子
主訴:脱髪
初診日:平成25年1月18日
(現病歴)
昨年の12月18日から4日間40℃の発熱があり、気管支炎や結膜炎、副鼻腔炎も併発し入院する。血液検査は異常なし。入院して2日目の朝、髪の毛が10数本抜けていることに気づく。
その後、抜け毛は見られなかったが、今年のお正月の朝、束になって脱髪していた。(数えると120本程)皮膚科にて検査するも異常なし。
その後、ドンドン髪が薄くなってきているように感じる。特に頭頂部が目立つ。別の病院にて「びまん性脱毛症」と診断される。薬を数回使用するも抜け毛が治まらずホームページにて当院を知り来院される。
(既往歴)
・1歳時に風邪から40℃の高熱。その後、突発性発疹が全身にできる。
・2歳~昼寝をほとんどしなくなる。寝付きは20分後、寝ているとき半眼になっている。
・3歳から幼稚園に通うが、年に2回夜1-2時に38℃の発熱がある。時期は不明。翌朝には汗をかいて解熱している。
(七情)
しっかりしていて幼稚園では自分で何でもする。「早く大人になりたい」と言う。
パパが仕事で多忙のため中々会えず、幼稚園の先生に「うち、休みの日にパパいないの・・・」とよく言っているとの事。
ママは子育てに3歳ごろまでイライラしていたので、ママの目を気にしていた。
(診断と治療)
脱髪にも虚と実があります。大きく分けて突然に抜け落ちるのは実で、徐々に抜けていくのは虚に属します。お子さんの脱髪は実がほとんどです。(子どもは陽体ですので実熱に傾き易い)彼女のように、発熱後に髪が突然抜け落ちるのは、「内風(ないふう)」が原因ではないかと思われます。
火がおこれば陽炎(かげろう)のように上部に風がおきますが、熱のためにそれが身体の中でおきる事を内風といいます。
この内風のために髪の毛が抜け落ちる事があります。1歳の頃からよく発熱されていることからも、熱を原因とした脱髪であることは明らかです。
治療は、刺す鍼を使用せずに、古代銀鍼を使用して、熱、特に上部の偏った熱をとり、内風(身体の中でおこった風)を抑える治療を試みました。
(治療結果)
熱感のある百会、手の十井穴、背部右の肝と胆を中心に散鍼を行いました。
便通が毎日良くなり、6診目ごろには殆んど脱毛は無くなり順調に回復しました。
腹部やお臍周辺の緊張も10診目を過ぎた頃から無くなってきました。
(考察)
この子は、本当に大人っぽい4歳で、大人以上に感受性が強いと感じました。
このようなお子さんは、我慢強くワガママを言いません。
大好きなパパと中々会えないことも我慢し、ママも子育てに大変なんだと察して我慢し、発散が少なく体の中に熱を溜め込みやすくなっていったのだと思います。便秘なども身体に熱を溜め込む原因のひとつとなります。
お母さんがこのように治療に連れてきて下さって親子ともに救われたのではないでしょうか。親子の絆は黙っていても通じ合うものです。今後、お母さんも彼女も上手に発散しながら(いろんな方法がありますので自分に合った発散法で)気を巡らし、変な熱を溜め込まなければ、熱を出すことも少なくなりますし大きな病気をすることも無くなります。
今も鍼灸治療に来てくださっていますが、鍼灸治療こそ気の滞りを通じさせていくのに適しています。彼女の我慢強さ、感受性の強さが今後も益々いい方向に活かされますように願っています。
宝塚市在住 女性 28歳
主訴:両卵巣のう腫再発予防
初診日:平成24年5月初旬
(現病歴)
3年前、腹部の激痛のため内科に行き腹膜炎と診断される。薬で痛みは治まったが、念のため婦人科で検査を受けると両卵巣のう腫が見つかる。
1年の間に大きくなったので、2年前卵巣のう腫の摘出手術を受ける。
術後、1年間生理を止める注射を打ち、その後の1年間は錠剤にて生理を止め現在も継続中。3ヶ月に1回検査を受けている。たまに、少量の鮮血がある。
生理を止めてから、周期的に身体が怠くなり気分も低迷して仕事を休んでしまうことがあり、生理を止めなくても卵巣のう腫が再発しない事を希望し友人の紹介にて来院される。
(その他の症状)
・最近、考え事をすると寝付きが悪くなる。
・高音の耳鳴りが起こる。
・立ちくらみがする。
・手足が冷える。
・左の腰が冷えると痛む。
(その他の問診事項)
飲食:お寿司、果物、アイスクリーム等を好む。飲み物は温かいお茶、コーヒーを好む。
イライラすると甘いものを過食する。
二便:便通良好、小便1日に6~8回淡黄色。
睡眠:考え事をしていると寝つきが悪くなる。
(主な体表観察所見)
顔面気色診:肝の部分が青白く抜けている、口の周辺に出来物が多い。
舌診:紅舌、舌尖紅点多数、舌辺剥けて紅点有り、舌の中央から奥に白苔。
脈診:1息4至半、幅力共有り、左尺位弱い。
原穴診:左神門・大陵・合谷・陽池虚、右京骨・照海虚、右太衝実。
腹診:右脾募から肝之相火、胃土緊張。
背候診:右肺兪~心兪虚中実、左肺兪~心兪実、右肝兪~三焦兪実。
その他:三陰交左実。
(診断と治療)
生理を薬で止めてから、身体が怠くなり気分の低迷がみられるという事から虚実(気血の滞りか不足か)の問題と心神の問題を考えてみることに。
体表観察所見から、舌診では舌先から舌辺が赤く紅点が多い事、右太衝穴の実、腹診の右肝之相火の邪、右肝兪穴、左心兪穴等の反応から、肝気の停滞と心神の問題(ストレス過多)を考慮する。簡単に言えば、心も身体も程よい発散が出来ていないと判断。
虚実で言えば、相対的な虚(血虚)は見られるものの、全体には実傾向。
よって、心神(精神)安定させ、肝気を巡らせることにより相対的な血不足も改善するツボ、後溪穴を中心に治療を進めていく事にする。
(治療効果)
4診目の時、服用している生理を止める薬、ホルモン剤を止めたいことを病院にて相談に行かれ中止する事に。生理を1年半止めていたためか、生理がくる気配が無かったものの9診目に量も普通量の生理が始まる。その後順調に生理が来るようになる。
32診目に病院に行き検査するが、医者から子宮も卵巣も全く問題なく血も溜まっていないのでもう来なくていいと言われる。現在も週1回治療継続中。
(考察)
薬から離れることは、ある面、勇気のいることだと思います。ましてやご結婚前の女性です。その中、鍼灸を信じて下さりこちらの方が感謝しています。
彼女は、我慢強く様々なストレスを、誰かに話すことより、寝ることの方が発散方法になっていたようです。きっと、誰にでも心配をかけたり出来ない甘えベタなのでしょう。
長年の気血の停滞が、瘀血という病理産物を生んで卵巣嚢腫になったのだと思われます。
発散方法にも色々有りますが、話すことや運動などは気血の巡りを伸び伸びとさせ易くします。これからもお散歩と共に、少しずつでも思っていることを信頼できる誰かに率直に話してみてもいいのではと思います。
ともかくも、病院にもう来なくていいといわれました!との彼女の嬉しそうな顔が印象的で何より嬉しかったです。
大阪市在住 男性 79歳
主訴:右殿部痛(+ふくらはぎ・足甲痺れと冷え・足裏浮腫み等)
初診日:平成24年8月下旬
(現病歴)
昨年のゴールデンウィーク明けに1週間ゴルフをした後、2日後から右殿部痛、ふくらはぎがジンジンし、足の甲が痺れて冷え、足裏が腫れぼったくなる。500メートル程歩くとこれらが出現する。5~6分休み殿部を叩くと痛みはマシになる。
整形外科では、神経を痛めたことと、脊柱管狭窄症が原因ではないかと言われる。マッサージや牽引、電気治療を2ヶ月受けるがその直後のみ痛みはましになるがまた元に戻る。薬を服用しても変化は無し。入浴で温めたり、じっとしているとましになり、動くと痛みは増す。
現在治療中のお嫁さんの紹介にて来院される。
(既往歴)
48歳時:腸閉塞手術。
53歳時:胃悪性ポリープのため3分の2胃切除。術後も腸閉塞数回。
60歳頃:両耳鳴り。
65歳時:前立腺肥大。
(その他の情報)
飲料:冷飲を冬でも好むが潤す程度。
尿:尿勢・切れともに悪い、夜間尿3回。
寝汗:有り。
睡眠:入眠に30分かかる。
(特記すべき体表観察)
顔面診:心・肝・腎の部分が色抜けている。
舌診:紅舌、白二苔(白い苔が張り付いている)、やや舌に力なし。
脈診:1息4至、脈幅力ともまあまあ有り、両尺位弱。
原穴診:虚:左太淵・神門・外関・照海・申脉。
虚中の実:右太衝。右天井冷え。
腹診:左大巨、胃土、右肝之相火、右少腹急結。
背候診:左肺兪~督兪虚中実・肝兪~三焦兪まで実、左志室虚、右胃兪~大腸兪まで実。17椎下周辺の黒ずみ。
(診断と治療)
証:腎虚・足太陽膀胱経の経気不利。
60歳頃より低音の両耳鳴りや、その後前立腺肥大が見つかり、現在尿勢・尿切れともに悪く夜間尿も3回に及ぶ。これは、東洋医学的にみれば腎の臓の機能が低下している事が原因として考えられます。
実際に体表を観察していくと、腎の臓のツボが非常に虚(弱い)しています。それが腎と表裏関係になる膀胱の腑にも影響を及ぼし、膀胱経絡上の気血の流れが悪くなり痛みや浮腫が起こったのではと考えました。
治療は、初めは大巨(右)等を使用し腎を補っていき、5診目ごろから外関と臨泣の2穴を使用していきました。
10回の治療で、痛みも緩和されゴルフにも行き楽しまれておられます。
(考察)
患者さんは、実年齢とはかなり違って本当に若々しく背筋もピンっとされ、様々な事にも挑戦なさっておられます。
私の師匠はよく年齢より若く見えることは非常に大事な事だと言われています。それは、その方の「神(しん)」を見ることに通じているからと考えます。古代から神の有る者は生命力が盛んだと言われている通りです。
神(生命力)を見るのは、姿、顔だけでなく舌、脈などにおいても同様です。この患者さんは全体的に神がしっかりしておられるので治りも速かったのでしょう。
半面、細かく探っていくと、動くと痛みが増すという事や、その他の所見から虚(弱り)も見られましたので虚、特に腎の虚を意識し治療をしていきました。
100歳までもどうかお元気で若い人たちに希望を与えていただきたい心から思います。
西宮市在住 女性 43歳
主訴:生理前のイライラ
初診日:平成24年6月初旬
(現症状)
約3年前頃から生理前の便秘とイライラがひどく、ご主人にきつくあたってしまう事と、生理の2~3日目からレバー状の血痕がひどく経血量も多かったため、ピルを服用するようになる。ピルを服用してからは、血塊量は減少したが経血量は変化なし。イライラもましになったが、医者からピルは閉経するまで服用するように指示される。また、ピルを服用してから4kg体重が増えて、食事等気を付けても痩せなくなった。2年前からは生理前に腰痛がおこるようになる。ピルは止めたいものの、自分ではコントロールしにくいイライラのため友人の紹介で来院される。
(既往歴)
23歳の時、出産してから生理前のイライラが出始める。この時、ご主人の出張や引越し、子育て等かなり多忙にしていた。また同時期に食後1時間後、右の背中が激痛になることがあったが、すぐ消えるのでそのままにしていた。結局40歳の時に胆石が見つかり胆のうを摘出する。現在も食べ過ぎると同じ場所が痛くなる。高音の耳鳴りと耳閉感がある。
(生活環境)
・1年前ごろから内容的に不規則なパートの仕事に就く。
・お子さんが高校生になり少しホッとして気分が落ちる時がある。
(その他の特記すべき問診情報)
食事:味付けは濃い方。飲み物は一気にゴクゴク飲む方。コーヒーも多い。
発汗:あまり汗をかかない。
睡眠:熟睡感が無く、朝4時に目覚め、寝るのに30分はかかる。
二便:便秘のため薬を使用。
(主な体表観察所見)
舌診:暗紅色、薄白い苔、舌に力はいる。舌裏はやや淡紅色。
脈診:弦脈で1息4至、脈力脈幅共に有り、左尺位が他に比べて弱い。
原穴診:虚(左後溪、左照海、右太白)実(左臨泣、右太衝、右衝陽)
虚中実(左臨泣、左太衝、左衝陽)
背候診:左肺兪~心兪実、右肝兪~胃兪まで実、神道・命門・十七椎下などの圧痛。
腹診:右脾墓から肝の相火、胃土邪実。
空間診:百会、懸枢は右上に実。
(診断と治療方針)
肝鬱化火(かんうつかか)証>腎虚(じんきょ)証
全ての気の巡りを支配しているとされる肝気が長く停滞しているため、熱化してイライラし易くなったと考えます。このように、上に気が常に昇っていることから、下に位置している腎の気が空虚になり、上下のアンバランスを更に増長させたものと考えます。
体表観察をしても、肝がメインですが、舌裏のやや色褪せと腎の脈の弱さ、腹部における腎の弱り具合などから、肝と腎を同時に動かす穴を使用しながら、徐々に肝の熱をダイレクトにとる治療方針へ変更しようと考えました。
(配穴)
初診から3診目まで:照海穴。
4診目から5診目まで:天枢穴。
6診目から8診目まで:百会穴。
9診目から:太衝穴。
(治療効果)
鍼をしてから睡眠状態が良くなり、6診目前からピルの服用を中止する。その後の生理は、イライラする時はあるものの今までよりかなり楽だった。その後、何か行事などがある時は心配なのでピルをたまに服用するも、18診目ごろからピルなしでもイライラが無くなる。また、便秘薬も服用せずに快便になる。
現在も、2週間に1回程の間隔で鍼灸治療を継続中。
(考察)
生理前の自分では止められないようなイライラは、肝気のうっ血(停滞)から火邪に転化してしまう為と考えられます。イライラすると頭に血がのぼるとは正にこのことです。
東洋医学では「将軍の肝」とされる荒々しい性格の肝の臓は、精神的にある程度伸び伸びと発散していることが肝本来のやる気や勢いを生みます。
彼女の場合は、心配事や多忙など日々の生活に追われ過ぎて起こったものでしょう。
生活自体は多忙のままのようですが、治療をすることによって気を巡らせると、過度のイライラという症状は起こらなくなります。また、治療をしてから生理の問題だけでなく、便秘解消やよく眠れるようになったことも肝気のめぐりが良くなった証拠です。鍼治療で体全体のバランスが整えられたのです。
どの人も日常生活において、多忙や心配等々、気が滞るような事ばかりかもしれません。
どうか身体が悲鳴をあげる前に、身体から調節し、快適な清々しい気分で毎日を送られますことを願っています。
西宮市在住 8歳 女子
主訴:腹痛、便秘
初診日:平成24年12月下旬
(現症状)
小学校1年生の夏ごろから便秘になり、5日目に病院にて浣腸で排泄(粘稠で緑色の臭い便)。それ以降、便が出ない時は、坐薬か浣腸を使用するようになる。
昨年12月の初旬に5日間ほど自力で便が出たが、腹痛が酷いため大きな病院にて検査をする。腸にたくさん便が詰まっているため、「1年半くらいは毎日浣腸しないと自力では無理です」と医者から言われる。現在、浣腸してコロコロ便か未消化便が出るが、起床時と食後2時間経つと必ず腹痛(お臍の上下が痛む)になる。力みすぎて排便後はぐったりしている。硬い便の時は、排便後も腹痛は治まらない。
(家庭環境)
2歳の妹と両親の4人家族。主訴発症当時、習い事(あまり好きでないのも有り)が多く忙しい上、祖母が入院したため友人宅へあずけられたりしていた。
母は仕事をしながら、祖母入院前までは、母親自身も習い事等、多忙な毎日をおくっていた。
(本人の性格)
一人っ子の時から感受性が強く人の気持ちに敏感。小学校入学時ごろ妹さんが誕生。同時に、夢をよく見るようになった。(剣を持ったママに追いかけられる夢や、パパに意地悪される夢など)実際夢を見ながら叫ぶことがある。
(主な体表観察所見)
舌診:紅舌、舌先紅、舌先~舌辺に紅点多数。
脈診:滑脈の中に枯脈。
腹診背候診:こそばくて詳細に触診できず。
原穴診:左太溪、後溪、照海が虚。右太衝、内関、合谷が実。特に太衝と内関が熱感強。
(診断と治療)
彼女の腹痛を伴うひどい便秘は、上記の様に精神的な事(妹さん誕生や母親多忙等)が引き金となっています。精神的な葛藤などが本来の腸の動きを停滞させてたものと考えます。これは、中医学では肝脾気滞(かんひきたい)の便秘といって、肝気(様々なストレス)が高ぶりすぎて、脾の臓の運化作用に影響を及ぼして便秘になるというものです。
肝気の高ぶりは、腹診や背候診(こそばくて触れない、督脈上の上部の圧痛等)、舌診(苔はそんなに分厚くはなく、舌が赤く舌先から舌辺にかけて紅点が多数見られる)などからも明らかです。
治療は、敏感な子ですので鍼を刺さずに、古代鍼を使用しました。
(治療結果)
2診目ごろから腹痛が楽になってきて、3診目ごろから便がサッと出るようになってきました。浣腸をすることも中止。腹痛が完全になくなりました。現在7診目ですが毎日排便できるようになりました。
(考察)
彼女は、2年生とは思えないほど大人っぽく、人への観察力がとても冴えていると感じます。何か凄い芸術家になりそうな予感・・・そんな感じの子です。(実際、図工が大好きとのこと)それだけに感受性も強く環境の変化にも敏感です。子どもは大人が思っている以上に口には出さなくても傷つき精神的に堪えてるものです。
このような子どもの体調の変化に気づき、ネットで調べて院に来てくださったお母さんの対応が速くてよかったと思います。
このように親子は一体です。子どもの体調の変化は、何かを親にうったえているものと思い今後も共に進んで頂きたいと心から念願します。