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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2015年11月21日(土)

動悸 []

【主訴】動悸
(その他の随伴症状)過呼吸、手足のしびれ、めまい。

【初診】平成27年7月下旬、39歳 女性。

【現病歴】30代前半、第一子出産直後に1回目の発作、突然の動悸、手足のしびれ、揺れる様なめまいが現れる。出産前の5か月間大きなストレスがあり睡眠不足が続いていた。抗不安薬で上記の発作症状は消え、その後8年間発作は出現しなかったものの、
第二子、第三子を出産し、育児、家事、仕事で多忙な中、2回目のひどい発作が出現する。動悸、過呼吸に加え、頭痛も出現し救急搬送される。ここから毎晩寝入りばなに動悸がして不安と緊張が増すようになる。

【増悪因子】
寝入りばな、乗り物等閉塞された環境、生理前、疲労時。
【緩解因子】
運動、集中時、食事量減らす。

【その他の問診】
・小さい頃よく行事前発熱していた。
・胃もたれ。
・下肢のむくみ。
・第一子出産後から生理痛が消失。
・妊娠時(三人共)貧血診断受ける。
・月経後身体は楽になる。(主訴に変化なし)

【弁証】心肝気鬱>血虚証。

【各種弁証】
八綱弁証:
裏(表証所見なし)
虚(血虚)
実(心肝気鬱)

臓腑弁証
(心肝気鬱)
肝気鬱:イライラ、月経後身体楽になる、喉が詰まる、(体表所見)顔面肝色抜け、両舌辺剥げ、左関上枯弦脈、太衝・肝兪の反応)
心気鬱(閉塞された所や緊張で呼吸困難、動悸、不安感(体表所見)顔面心部位色抜け、舌尖紅刺、両心兪反応、後谿の反応、心下~脾募の邪)

気血弁証
血虚:貧血、爪が割れ易い、月経過少、舌質色あせ、光が眩しい、心兪、脾兪、太衝等の虚の反応等。

正邪弁証
夜になると疲れてくる事や、脈幅も無い事からも正気の虚はあるものの、入浴後、生理後、運動後等に身体がすっきりする、動悸、過呼吸は運動後に変化しない事等から邪実が中心と考えます。ただ、血虚の所見が顕著に見られることや、寝入りばなに動悸が打ち、不安感が増すことから、バックには心血不足があり、血不足により気鬱が更に増すと考えました。(陰陽に分けると、気は陽で血は陰になり、血が減ると相対的に気が勝ち気血の陰陽バランスが乱れます。)
よって、心血を補いつつ気鬱を緩解するように治療をしていくことにしました。

【病院病理】
患者さんは、三人小さいお子さんを育てながら仕事もこなすという超ハードな生活を送られていました。その上 第一子出産前に寝不足が続き、出産後に身内を亡くされるという大きなストレスがありました。肝鬱気滞から、寝不足と心神に大きなショックを与えたことから心肝気鬱となり、動悸、不安感等の症状が発症したものと考えました。

【治療方針】
心肝解鬱
1診目~15診目まで:後谿穴 (2診目のみ申脈)

【治療結果】
1診目後から動悸は10→1~2に激減。3診目には動悸が気にならなくなり、電車の中などの緊張時も寝入りばなにも動悸は起こらなくなる。胃もたれや足の浮腫みも余程不摂生をしない限り解消された。

【考察】
現在も治療継続中ですが短期間でお元気になられました。この後渓のツボの効能がこの患者さんの証(今の時点での身体の状態を東洋医学的に一言で表現したもの)にピタリと一致したからだと思います。(心肝気鬱証<血虚証)

このツボは北辰会代表の藤本蓮風氏が半世紀にわたる臨床を積み重ねる中で、見出された重要穴です。同じ後渓でもそのバリエーションは様々ですので、この証のみに使用するツボではありません。(藤本蓮風著『経穴解説』参照)
またこの動悸は、緊張状態が続いて発症したものです。その緊張状態が少しの緩みもなくマックスに達した時、過呼吸を伴い救急搬送になっています。

更に、寝入りばなの動悸は、ホッとして意識する事なく気が緩んだ状態の時の発症と考えました。それは、この動悸は反対に気が張っていると、ある程度は抑えられるという事でもあります。実際そのようでした。

そこで、血虚の度合いはさほど酷くなく、抑え込んでいる気鬱のレベルが酷いと考えました。ただ、この患者さんの場合は、気鬱を解く事を中心に瀉法(気鬱を除くために邪をたたく事)をするより、少し血を補いつつ、心肝の気鬱も同時に緩解するという方法がいいと思い後渓を使用しました。これは功を奏したと言えます。

鍼の効果はこのように本当にシャープです。弁証を間違えず患者さんに安心感を持ってもらってこそ効果も倍増すると日々の臨床の中で改めて感じた症例です。

2015年10月24日(土)

不安感 []

【主訴】不安感(漠たる不安感によりじっと出来ない)

(その他の症状)不眠、精神不安定(特に怒)、頚肩の凝り、逆上せ、目眩、頭頂部の重さ、耳鳴、腰から下の冷え等

【初診】平成26年7月上旬

【現病歴】
・結婚後の30代の時、家庭内で強烈なストレスが起こり過呼吸や声が1ヶ月出なくなったりした。ここから不眠になる。
(眠剤と精神安定剤服用継続中)また多忙時にギックリ腰によくなる。
・50代で閉経するとホットフラッシュ、頚肩凝り、腰部鈍痛が発症。
・約1年前~精神的ストレスや心配から解かれた後から漠たる不安感が発症し現在に至る。

[増悪因子]ストレス時や焦った時、特に春先、雨天前。
[緩解因子]薬・カイロプラクティック・鍼灸など、何やかや治療してると安心する。

【その他】
・出産4回
・外食多く早食い、間食多い。
・お孫さんの世話など日々多忙。

【各種弁証】
八網弁証:裏(表証所見なし)、虚(腎虚、心血不足)、実(肝鬱気滞)
臓腑経絡弁証:腎虚(腰痛、耳鳴、尿モレ、口渇、手足ほてり、照海、天井の反応)
心血虚(不眠、多夢、不安感、心兪、神門~霊道の反応、舌色褪せ)
肝鬱気滞:ため息、情緒不安定(易怒)、何かしてないと落ち着かない、肝之相火、右肝兪等の反応)
正邪弁証:正気虚(入浴後疲労感あり、排便後少気あり)<邪気実(脈力、脈幅あり、老舌、声有力)*心血虚は見られるものの、脈状が有力等により、その程度は軽いと考えるが慎重に判断する。

【弁証】
肝気上逆・腎虚証>心血虚

【病因病理】
30代からの七情不和(心配事)や多忙さから、常に肝気が欝血(気の流れが滞る事)し易い状態にあった上、4度の出産と年齢を重ねた事で、腎精が不足し更に肝気が上逆した状態になったと考えます。

腎精と陰血は互いに転化し合っていますので、腎精が不足すれば、血に変換する能力も減少します。また、長年の睡眠不足が重なり、陰血不足から不安感や多夢、驚きやすい等の心神不寧という状態に至ったと思われます。

「脾を補うには腎を補うにしかず。腎を補うに脾を補うにしかず」と言われているように、脾の臓である胃腸が腎の弱りをバックアップしてくれますが、

この患者さんは肝気の上逆を下げるために、過食に走り脾の臓に常に負担をかけています。すると、湿痰という病邪が中焦(胃腸)に停滞し眩暈等が発症しやすくなります。この患者さんの眩暈は、頭を動かしたり、体位を変えたときに起こりますので、湿痰の邪が肝気上逆とともに耳中に持ち上げられ停滞した事が原因だと推測しました。

【治療方針】
上記の正邪弁証を考え、下焦である腎を補い肝気を下げる治療方法をとる。(当初週3回来院)

1診目→照海整え灸31壮の後、百会20分(8番鍼)
2診目→照海灸16壮の後、百会20分(同上)
3診目→照海整え灸31壮の後、百会30分(同上)
4診目→後渓30分
5診目→後渓30分
6診目~15診目まで 照海。
17診目~申脈、滑肉門、承満、不容、梁門、太衝など適宜一穴を置鍼。(眩暈の時は主に腹部を取穴)

【考察】
当初、この患者さんは問診の時点で話しが止まらず、爆弾トーク状態でした。また、常に新しい健康法を見つけては、試していいですかと聞かれたり、友人等の発言にも翻弄されておられました。不安であるほどこの様な状態は激しくなっていました。

この様な患者さんが、今ではすっかり落ち着き不安感は解消され、安定剤や眠剤も15診目には廃薬されました。周囲の友人から変わったねと言われるほど落ち着かれパニック等も全くおこらなくなりました。

現在も治療継続中で2週間に1度ほどのペースで来て下さっています。

鍼の効果はどれほど長く患っていても、必ず緩和されていきます。大きくバランスを崩す前に日頃から常にバランスを取とっておくことが如何に大切な事か、また、それが大病を防ぐことになると感じます。

2015年7月15日(水)

パニック症候群、右背中~腰・股関節痛 []

【主訴】パニック症候群、右背中~腰・股関節痛 60代女性
【初診】平成24年10月中旬
【現病歴】
右腰背部痛は20代からあったが、50代後半から右腰背部と股関節に鈍く突っ張る痛みが出現。10m歩くと増悪し、少し休むとまた歩けるという間欠性跛行になる。

パニック症候群は、40歳時、子宮筋線症のため子宮を全摘してから発症し現在も継続。症状は恐怖感で呼吸困難、ジット出来ない、動悸、不眠等。デパスを服用しながら生活している。

[増悪因子]
(腰部痛)歩行時。
(パニック)ストレス時、ジットしていると、不眠、夜中。

[緩解因子]
(腰部痛)右腰を押さえながら歩く、座る等静止時。
(パニック)服藥。

【その他】
・結婚後から様々悩むことが長年続いたり、周囲から頼られることが多く、常に気が張った状態が続いている。
・大食で野菜嫌い、肉・油物が多かった。
・高血圧(40代から)降圧剤服用中。
夜間尿5回足元冷え易く足首浮腫む(60代から)。

【各種弁証】
八網弁証:
裏(表証所見なし)、虚:(腎虚)、実:(心肝気鬱)

臓腑経絡弁証: 
腎虚
腰痛、後屈で増悪、間欠性跛行、夜間尿、足冷え易く夜火照る。
脈右尺位弱、腎経の経穴虚(照海、太溪、腎兪から志室冷)、命門熱感。大巨。

心肝気鬱:
ストレスで不眠・動悸・手足冷・呼吸困難等のパニック、ため息、イライラしやすい、神経過敏、感情の起伏有。
顔面心肝部位色抜け、脈弦脈、舌尖紅刺、神道・筋縮・膈兪~肝兪・心兪から膈兪(左神門・後谿の反応、心下~脾募、右肝之相火実。

【弁証】腎虚証~膀胱経経気不利、心肝気鬱証

【チャート図】下記のチャート図をクリックすると拡大します。

【病因病理】
様々な七情不和が長びく事により、肝気の上逆が過多になると共に、瘀血が形成し易い状態にあったと思われます。

そこへ、出産、肥厚甘味の大食、継続した緊張により、益々気血の流れを停滞させ、40歳過ぎに高血圧や下肢に静脈瘤を形成したと考えます。

40代で子宮線筋症のため子宮摘出した後、パニック症候群を発症されますが、これは下焦の弱りにより心肝の気鬱が悪化し、恐怖感や動悸、不眠等が起こったものでしょう。

右背部から股関節にかけての痛みによる間歇性跛行も、3回の出産、更年期、子宮や卵巣の摘出等により、下焦が極度に弱っている所、若い時のスポーツや左顔面部の怪我等により左右差(左上強打)が右下の弱りに乗じて(腎經の表裏関係にあたる膀胱の経脈に影響し気血が不足し巡らなくなる。)発症したものと考えました。

【治療方針】
腎、膀胱の気血を補いつつ、心肝の気鬱を解く治療を行いました。

1診目~2診目:申脉
3診目~4診目:大巨(右)
5診目から7診目:後谿
8診目から11診目:照海
以後、臨泣、合谷、百会、外関、滑肉門、足竅陰等を使用し、駆瘀血や風寒邪侵入に注意しながら治療。現在84診目。

【治療結果】
4診目で足の酷い痛みは殆ど消失します。また、よく眠れるようになるものの、時々パニックが出るため、配穴を後谿に変更。長年のパニックは28診目を最後に現在まで全く出なくなり、服薬無しでも発症しません。背部から股関節の痛みは、無理をすると痛むため月2回のペースで来院してくださっています。

【考察】
初診時から鍼灸を信頼してくださり(師匠にも治療を受けておられた事もあり)、非常に治療がし易い状況にありました。

長年のパニックに関しては、比較的早く薬も一切使用しなくても起こらなくなりました。ストレスは現在も継続して抱えておられますが、パニックには至りません。これは、心肝気鬱の実が中心であって、体全体の気血の弱りは酷くなかったからでしょう。
しかし、既往歴や年齢的にも腎虚等の下焦の弱りは酷いため、下焦を中心とした治療を継続することで、下肢の痛みも緩和されていくと思います。

2015年6月26日(金)

目眩(めまい) []

【主訴】目眩(めまい)50代女性
【初診】平成27年2月中旬

【現病歴】
10年前1月末、閉経後にメニエール病発症。この頃心配事が多かった。
朝、起き上がり時に回転性目眩と嘔吐(吐くと少しすっきり)が出現。目眩止め内服により30分でおさまるが、1日中フワフワ感が続く。聴力低下、耳鳴り、耳閉感(両)伴う。点滴・内服により、メニエルは3か月で治まるも、その後、9年間、毎年1月末から3月~5月頃迄めまいの前兆(目振、頭全体のしめつけ感、視力低下、目の焦点合わず、嘔気、のぼせ)が発症。前兆出現時に目眩止めを内服することで目眩に至らず。
今年から内服頻度が増え、毎日10時、22時に内服するようになる。

[増悪因子]
1月末~5月頃まで、多忙後、心配や不安な事がある時。
パソコンで目を酷使。下肢冷え、過食(甘味)

[寛解因子]
薬内服

【その他】
・幼少期から現在まで軟便傾向。(ストレスや環境変化で下痢になる)
・幼少期から頻繁に扁桃腺炎で高熱を出す。
・小学生から貧血で立ちくらみよく起こす。(閉経まで)
・パソコン関係の仕事で目を酷使。
・冬に下肢冷え、逆上せやすい。
・梅核気、目やにが多い
・過食すると夜間に動悸がする。
・昨年秋から寝付きが悪く、睡眠薬内服。

【各種弁証】
八綱弁証:裏(表証所見なし)、虚(腎虚)、実(肝気上逆)

臓腑経絡弁証:
肝気上逆・腎虚(腎虚はアンダーライン)

精神的ストレスで悪化、春季に発症、目の充血、逆上せ。
耳鳴り、聴力低下、尿漏れ、腰痛。
(体表観察所見)
顔面診:肝白抜け、腎部位黒抜け。
脈診:弦脈、尺位虚、右関位枯弦脈。
舌診:暗紅褪せ、半嫩舌、舌尖紅、紅点右に偏り、舌辺剥け、舌下静脈怒張色褪せ、白膩苔。
原穴診:虚(左太白、左太衝、右陽池、右後谿、右外関、左公孫、左照海)、実(左内関)
背候診(左志室、京門虚、右肝兪、胆兪実、右厥陰兪~心兪虚、神道。
腹診:肝之相火右、胃土、右脾募、心下、左大巨

肝脾不和
湿痰:ストレスで軟便、主訴に嘔吐伴い過食で悪化、梅核気、目やに多い、過食で不眠や動悸。上記の体表観察所見で脾の穴の反応。

【弁証】肝気上逆、腎虚

【チャート図】 下記のチャート図をクリックすると拡大します。

【治療方針】
幼い頃からストレスがあると軟便になるなど、肝脾不和(ストレスが脾の臓に影響して下痢や腹痛などを起こす状態)傾向だったようです。
その後、2度の出産、流産の後、子宮内膜症を発症されます。小さい頃から扁桃腺炎で高熱を出す等、腎の臓の弱りに乗じて子宮等の下焦に症状が出たものと思われます。(下焦がよわれば肝気が高ぶり易くなります)
そこへ閉経を迎え益々腎精が弱り、耳鳴り、聴力低下、尿漏れ、腰痛などの腎虚症状が増悪していきます。
主訴の目眩(めまい)が、1月末から5月の時期に発症している事から、御本人にとって多忙な時期である事と、春の木気が盛んになる時期であることから、肝気が益々上逆し発症したものと思います。

【治療方法】
治療は、腎虚を補う事と肝気を下げる事を目的に、
初診から22診目まで:照海穴を使用(外関(12診目)陽池(5診目から7診目迄)以外は)
23診目から26診目まで:太衝穴使用。

【治療結果】
2診目から良く眠れるようになり、7診目ごろから毎日、朝晩服用していた目眩止めの薬を5日に1回の内服でも安心出来るようになる。一番発症しやすい2月から4月に治療されてますが、現在は全く薬は使用されてません。
9年間もの間、前駆症状が出たら内服薬で抑えていた症状がこのように短期間で良くなったことは、腎虚はあるものの肝気の高ぶりがより大きかったとも言えます。しかし、ベースには腎の弱りがあるので無理をすれば直ぐに肝気上逆を起こします。
現在も治療継続中です。ともかく鍼の効果をこのように体感していただき感謝致します。

2015年5月23日(土)

偏頭痛 []

【主訴】偏頭痛 20代女性
【初診】平成27年2月下旬

【現病歴】
19歳の時、大学受験当日に下腹部に殴打されるような生理痛(生理前日)が起こり、意識を失い受験出来ず。その後も2~3年に一度、同じく意識を失う程の生理痛が起こる。

2年前、生理痛コントロール目的でピルを服用。その後、経血量が減少し生理痛はマシになるが、主訴の偏頭痛が発症。現在も生理痛の鎮痛剤は手放せない。

10~14日に1回、朝起床時に頚部や肩のつまりと共に頭頂のやや左後ろがズキズキし、頭全体に広がる。2~3回の嘔吐(胃が空になるまで吐く)を伴うが、嘔吐によって緩解はしない。
今年、部署異動後は、規則正しい生活、運動量増加に伴い、頭痛頻度は減少するとともに嘔吐はしなくなったが、頭全体が重くズキズキし考えがまとまらなくなる。
頭痛薬は効果が感じられない。

発症以前から、夜勤による睡眠不足や暑い職場で発汗過多であった。
仕事は人間関係も問題なく楽しい。寧ろ、昔から勉強好きで、男性の中でバリバリ仕事をするタイプ。

[増悪因子]朝>夕方、睡眠不足、多忙、運動不足、飲酒過多等。
[寛解因子]ストレス発散(運動系)。

【その他】
・環境変化、多忙時に便秘する。
・手足がよく冷える。
・腰痛(重だるい)温飲好む。

【各種弁証】
八綱弁証:裏(表証所見なし)・実(肝気上逆・血瘀)・虚(心血虚)

臓腑経絡弁証:
肝の臓:主訴や生理痛が運動で軽減、緊張や環境変化で便秘、脈滑弦・幅力共に有り、肝色ぬけ、肝相火邪、肝兪~胆兪(右)の虚、右太衝虚。
心の臓:睡眠不足で主訴悪化、緊張で脇や手掌に発汗、意識消失、心下邪、神道圧痛、神門~霊道の虚。

その他の弁証:
気逆:頭痛が酷いと嘔吐、舌尖紅絳、紅刺多数、黄苔乾燥。
瘀血:舌所見(暗紅舌、左舌辺瘀班)、刺痛、少腹急結。

【治療方針】
ピルによる生理痛軽減後に頭痛が発症したことから、気滯の位置が頭部(上部)に移行したのではと思われます。運動等により軽減することから気滯>血瘀と考えます。

患者さんは、先天的に心臓の位置に傾き等があり、高校生まで時々胸が締め付けられるという症状があったようです。何か緊張する事があると子宮の激しい収縮があり、意識を失うほどになる等、心の臓の変調から心神(精神)への影響が考えられます。

心神(心の臓の主)と肝魂(肝の臓の主)は陰陽関係にあり、心の臓と肝の臓も相互に補い合いながら精神の安定を保っていますが、心と肝の臓にとって、重要な栄養物質は血です。この心の臓と肝の臓に変調をきたせば血不足になり、血も滞り易く瘀血を生じ、更に心神が不安定になるという悪循環を生じます。

更に、夜勤による過度な睡眠不足や職場での発汗過多が、陰血不足を助長させ、肝気の昂りが酷くなり頭痛が発症したものと思われます。

【証】肝気上逆≫心血虚

【配穴】
1診目~7診目迄:後渓(虚中の実側)、風寒時は外関に取穴。
8診目~12診目迄:太衝(虚側)。9診目のみ申脉。

【治療効果と考察】
鍼灸治療後、頭痛は多少のストレスが罹っても起こらなくなり、生理痛も忘れるほど改善されました。2年前からの偏頭痛がこのように短期間で良くなり、鍼の効果を実感して頂き嬉しい限りです。

このように身体を調える事により、身体と密接に繋がっている心神(精神)にも波動し、突然の意識不明等はおこらなくなります。

現代は異常なストレス社会です。過緊張による心身不調が後を絶ちません。過緊張は、気血を停滞させたり、減少させたりして身体に痛み等の不調を発生させます。そうなると、心のゆとりも無くなります。
鍼で、人の幸せを喜べる、悲しみに同苦できる、本来の人間らしい感覚を取り戻していきたいです。

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