症例

2011年04月27日(水)

肺がんに伴う咳と左肩甲骨激痛。 [ガン関係]

西宮市在住 男性 55歳 管理職
主訴:肺がん(右下部)による咳と左肩甲骨激痛。
初診日:平成22年11月初旬

(現病歴)
4年前、大阪に転勤になってから毎年10月から3月までの期間咳が出るようになり、検査を受けるが毎回異常なし。
55歳の今年1月は、咳に加え左肩甲骨辺りの激痛が続き検査するがやはり原因不明といわれる。
4月病院を変え再検査。結果、肺がん(ステージ3b)といわれ、リンパにも転移が見られた。休職し6月から抗がん剤治療に入る。1クール3週間の抗がん剤で激しい嘔吐、白血球低下、体重10キロ減少、嘔吐のため逆流性食道炎などの副作用が激しく食欲が全くなくなり点滴にて栄養剤を入れる。
更に咳止めの薬を服用してから頻尿になり現在も同症状継続。(夜間尿4回、昼13回以上)
10月初旬、CT検査にてガンは大きくなっていたため11月から抗がん剤再開予定だが、体力、気力ともになくなり鍼灸院に来院される。

(その他の症状)
・頭、首、肩、背中が痛むため、上向けに寝れない。右横にして寝る。
・一日中ゲップが出る。
・黄色い痰が出る。
・胸が苦しい。
・眩暈がする。
・雨の日に身体が重くなる。
・よく便秘になる。
・胃がもたれたり張ったりする。
・扁桃腺をよく腫らしていた。

(その他の特記すべき問診事項)
食事:ガンになるまでは、油物、キムチなどが好きだった。チョコなども食べたくなる。
飲酒:普段から強いほうでは無かったが、大阪に転勤してから仕事上飲み会が多かった。
二便:仕事をし出してから便秘。3日間出ないと薬を服用。臭いきつい。兎糞状。尿は勢い切れ共悪い。
運動:社会人になってから多忙のため運動をしなくなったが、最近はウォーキング20〜30分出来るようになる。
入浴:41℃10分間湯舟につかり、すっきりして疲労感は取れる。のぼせない。
環境:自宅が線路沿いで窓も開けられないほど空気が悪い。

(特記すべき体表観察)
望診:痩、心・肝が白く抜けている、顏色は黄色。
舌診:紅舌でやや色が褪せている、白い苔、舌先赤い点点、舌の縁苔が無し。
脈診:1息5至、緩滑枯脈、寸口関口右とも弱、2指押し切れる
原穴診:虚:左太白・太谿・丘墟、虚中の実:左太衝・衝陽
    実:右合谷、左臨泣、左列缺(熱感)
腹診:左脾募、右肝相火、胃土。
背候診:筋縮、右肺兪(虚)、左肺兪(熱)、両心兪、督兪から胆兪(左)実熱、背中上部薬疹多数。

(診断と治療方針)
東洋医学において、ガンの形成は極めて複雑としながらもその原因を、北辰会では、★肝鬱気滞(かんうつきたい)★瘀血(おけつ)★湿痰(しったん)★邪熱(じゃねつ)の4つが結びつき塊(ガン)を成すとしている。また、これらの4つを結び付ける接着剤のような役割をしているのは肝鬱気滞と言われている。(藤本蓮風著「鍼灸医学における実践から理論へ」より)上記の患者さんの情報からこれらを説明すると。

★肝鬱気滞→仕事などのストレスによる過度の緊張などの精神的刺激により、気の動きが停滞している状態。気と共に血の流れも悪くなる。自覚症状としては肩こり・頭痛・便秘などになる。
★瘀血→気血の流れが悪い状態が長引くと、気血が弱い場所(患者さんにおいては肺)に停滞しそこに塊を形成する。
★湿痰→飲酒、油物、刺激物の摂取過多を含む食事の不摂生により、身体の中に痰が形成。胃腸の動きが悪くなり胃もたれやゲップなどがひどくなる。
★邪熱→子どもの頃から発熱しやすく扁桃腺を腫らし易いなど熱体質であることや、ストレス、酸性食品摂取過多により身体の中が熱化しやすい状態になり邪熱という形となる。

更に、ガンの発生は、正虚邪実(せいきょじゃじつ)といい、何らかの原因で「正気=生命力・抵抗力」が低下し非常に疲れやすくなっている所へ(正虚=正気の虚(弱り))、上記の様な気滞・瘀血・湿痰・邪熱などの邪実(邪気の実(過剰))が侵襲し、ガンを発病させる。肺にガンが発生した事は、よく風邪を引いたりするなど元々「肺経」が弱いところに喫煙などで更に肺を痛めたためではないかと考える。

(治療方針)
初診:列缺(左)2番鍼 10分置鍼
2診目〜16診目:後溪穴 2番 20分から30分置鍼
17診目〜19診目:照海穴 2番 25分置鍼
20診目〜24診目:後溪穴 2番 30分置鍼
25診目〜26診目:太衝穴 2番 30分置鍼
現在34診目治療継続中。

★3診目には咳はかなりましになる。抗がん剤治療後食欲は無いが食べれた。嘔吐なし。
★5診目にはよく眠れて食欲も有り。散歩20分後疲労感なし。咳は殆ど出なくなる。
★6診目にはほとんど背中の痛みは無くなり上をむいて眠れるようになる。抗がん剤を打つと便秘になる。
★8診目体重変化なし。(48キロ)食欲あり。膝ががくがくする。歩くと息切れ。
★14診目抗がん剤後も白血球は下がらず。腫瘍マーカーは減少。30分散歩しても疲労感なし。
★19診目毎日排便あり。体重が少しずつ増えてくる。
★25診目には体重が増えてくる。体調すこぶる良し。腫瘍マーカーが正常になる。

(考察)
初めてお顔を拝見した時は、ガン特有の顏色と痩せ方に愕然としましたが、脈力や舌の状虚をみて正気(生命力・抵抗力)は、まだあると確信しました。しかし、抗がん剤治療でかなり正気が弱らせていたため、かなり慎重に治療を進めていきました。
正気の弱りの度合いを示すものとして、脈、舌、顔面診と共に、北辰会では入浴後や運動後疲れるかどうかを重要視していきます。

ガンは明らかに邪熱です。熱が主体なのです。ツボの熱感を診ればあきらかです。患部やツボを手で触ればすぐに感じることです。恐いのはその熱が血を蒸して貧血状態にしたり、また血絡を傷り出血させたりしますので、血虚の状態を慎重に診ていきます。
西洋医学では、白血球の状態や貧血の状態を検査しますが、北辰会方式では舌診等からそれらの状態はかなり正確に把握できるまでになってきています。

患者さんは鍼灸治療をされてから、抗がん剤治療を継続されても食欲はあり、歩く事30分も疲労感無くどんどんお元気になっていかれるのが目に見えて分かりました。
現在は腫瘍マーカーは正常値になり、6クールの抗がん剤治療も無事終了し、ガンは検査においても完治されました。

師匠藤本蓮風先生からも何度かご指導をいただきました。先生は、現在も数多くのがん患者さんの治療に携わっておられ、かなりの成果を出されています。
先生は常に、大事なのは正気が十分であるかどうかが決め手なのだといわれます。正気の状況が今だ邪気と充分に戦える状況にあるかどうか。
たとえ西洋医学の診断が深刻であったとしても、正気の衰弱がひどくなく、邪気に充分戦いを挑む事が可能であれば回復するといわれています。

正気が弱っているところにドンドン容赦なく抗がん剤などの化学療法で治療をすることは、更に抵抗力を弱め、実はガンの増殖を早めてしまうことを知っていただきたいです。ガンのみを主体にするのではなく、こちらの正気の有無そして心身全体の人間を主体にした治療法が重要だと感じます。



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