症例

2015年12月16日(水)

卵巣嚢腫による不正出血と下腹部痛 [婦人科系疾患]

【主訴】卵巣嚢腫による不正出血と下腹部痛
【患者】40代 女性
【初診】平成27年3月

【現病歴】2年前、左下腹部激痛と不正出血が1か月続いたため、病院に行くと両卵巣に嚢腫が見つかる。鎮痛剤を1日3回服用するも緩解せず右卵巣を摘出。術後腹部の激痛は緩解したものの、術後から生理不順になる。(生理周期延長、出血量の増減、月経が10日以上続き貧血で動悸や立ちくらみが起こる等々)。
また、左下腹部痛(しくしくした重い痛み)が月経後から次の月経まで続き鎮痛剤を1〜2回/日内服する。月の殆どは鎮痛剤を服用している状態にあり、医者から左の卵巣手術を勧められるが断り鍼灸院に来院される。

(月経状況)初潮時から生理痛有(1日目から2日目)。下腹部刺痛。血塊なし(手術前は血塊多)、生理前にイライラし、月経後落ち込む。月経後は貧血症状が出て疲れ横になりたい。月経前軟便、月経中普通便、月経後は兎糞状便(便秘薬を内服)。

【その他の症状】
・卵巣嚢腫摘出術後から、下肢が冷えやすい、重だるい腰痛、むくみ(顔>下肢)、のぼせ(夕方疲れた時と冬に多い)、考え事で不眠になる。
・不妊治療を試みるが卵子が出来ない。

【弁証】
脾不統血証・気滞血瘀証

【各種弁証】
八綱弁証;裏(表証所見なし)、虚(脾不統血)、実(気滞血瘀)

臓腑弁証;
脾不統血:不正出血が少量でダラダラ続く、薄い赤茶色、生理前軟便、月経後の脱力感と落ち込みや気分低迷。雨の日は体が重だるく腹脹し易い、帯下(水っぽく多量、臭い痒み無)、緊脈(初診時月経13日目)、胖大歯根有り、淡白舌、白二苔、両太白〜公孫の虚(右>左)、右脾兪虚。

気血津液弁証;
気滞血瘀:月経前にイライラし月経後緩解、月経痛刺痛、血塊有り、ストレスで便秘。舌腹に数個の血腫有り、太衝、三陰交、肝兪反応有り、少腹急結(左)。

正邪弁証;
正気虚(ダラダラ続く不正出血、月経後横になりたい、運動で疲労感増、舌色褪せ、やや胖嫩、脈左2指押し切れる)
邪気実(入浴後や排便後に身体がすっきりする、月経前イライラ、脈力あり)
不正出血は正気の虚メインで、卵巣嚢腫は邪気実と考えるも、正気虚の状態から、邪気実の瀉法は慎重に考える。

【病因病理】
患者さんは、幼い頃から考え事で寝つきが悪く、環境変化で便秘する等神経質な性格だったようです。また中学生の頃から月経痛が酷く鎮痛剤を服用し続けていた為、胃がシクシク痛むことが多い上、肥厚甘味の食を好み、脾胃に常に負担をかけている状態でした。


脾胃が弱いところ、仕事でも人一倍頑張り肝気を高ぶらせる生活が続いたことで、月経痛が増悪し下焦に湿痰や瘀血が形成されたものと考えました。実母も子宮の病であったことからも下焦の弱りが似ていた可能性もあります。右子宮摘出後、腰痛やむくみ、冷え等が出現したことから下焦に負担をかけた可能性もあります。

不妊治療も試みられますが、採卵が出来なかった事からも、気血生化の脾胃が弱り、月経時の多量出血や瘀血等から血虚傾向になり、妊娠に必要な肝腎の陰血不足を招き、衝任(衝脈と任脈)を滋養できず不妊になったものと考えました。
以上の事から脾の統血作用が低下し不正出血が出現したものと思われます。


【治療方針】
益気健脾>疏肝理気(化瘀)

正邪弁証から、不正出血は正気の虚メインで、卵巣嚢腫は邪気実を考えましたが、正気の虚を先ず補い、邪気実は正気虚が改善に向かってから瀉法を加えて散らす方針とします。

【治療と結果】
1〜5診目まで:公孫穴(虚側)
6〜9診目まで:脾兪(虚側)
10診目 蠡溝
11診目〜12診目まで 後渓
13診目:太白整えの灸11壮
14診目〜19診目 後渓
20診目〜26診目 太衝
27診目〜後渓(現在も継続)


初診から脾の弱りを補う為に虚側の公孫と脾兪を補うと、ダラダラ続いていた不正出血が止まったため、補血と心神安定の目的で後渓を使いました。

途中、10診目の蠡溝(れいこう)は、左の子宮自体に熱感があり患部が痛んでいた為、肝経で子宮に繋がるツボで熱感を取りました。即効性がありました。
13診目の太白のお灸は、少し出血した後、疲労感があったため益気を目的に使用したものです。

脾の気(健脾)を補う治療で不正出血は殆ど止まりましたが、子宮のジクジクした痛みがあり鎮痛剤を服用されてました。治療を進めるうちに身体が軽くなり、15診目頃から殆ど鎮痛剤を使用しなくてもよくなり、月経も一週間で終わるようになり、仕事にも復帰されました。
まだ無理をした時は腹部が重くなったり、月経痛も出現しますので治療継続中ですが、月の殆ど鎮痛剤漬けの生活から、殆ど鎮痛剤を使わなくても良くなり鍼の効果を実感して頂いています。

肝、脾、腎と言えば最も肝腎要の臓です。この三者が身体の中で連携して健康を維持していると言ってもいい程です。

患者さんはこの三者のバランスを大きく崩して病が発症しましたが、常にこのバランスを調整しておけばお母さんと同じ病に倒れる事はありません。

この未病治が東洋医学の凄いところでもあります。





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