ENGLISH

MAIL

WEB診療予約

実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

MENU

症例

2011年1月5日(水)

偏頭痛 []

守口市在住 来院時14歳 男子
主訴:偏頭痛(特にこめかみ、側頭部)
初診日:平成22年9月下旬

(症状・環境などの経過)
2週間前から今まで無かった頭痛が発症する。
閉所恐怖症のためMRIに入ることが出来なかったため、CTスキャンで検査するも異常はなく薬を使用。薬効果無し。

現在受験のため運動クラブを引退し、塾に週4回通う。塾ではあまり痛くならないが、学校では痛む。
どちらかと言うと遊んでいる時よりじっとしている時の方が頭痛は頻繁に起こる。また雨の日も頭痛は酷くなり最近痛みで学校を休む時がある。

(その他の症状)
・冬乾燥して身体が痒くなることがある。
・緊張したり、風邪を引くと下痢になり易い。

(特記すべき体表観察所見)
脈診:1息4至半、弦滑脈、力有り、幅有り。
舌診:暗紅色(全体的にやや色あせ)、舌先強い紅色、苔白
穴状態:右外関冷、太白左冷、太谿左冷、照海左冷、背中こそばくて触診困難、左心兪虚中実など。
腹診:右脾募~胃土まで邪実、左天枢。

(診断と治療方針)
証:肝脾不和証
東洋医学では頭痛の原因を10種類ほどに分類している。
この頭痛は、運動クラブを止め、受験勉強や将来の進路を考える中で発症している。運動を止めたことによって気が緩まず緊張状態になっていたところ、受験勉強などのプレッシャーが肝気を更に高ぶらせる結果となり偏頭痛が起こったものと考えた。
肝気の高ぶりは、背中がこそばくて触れない、閉所恐怖症、腹診の邪、舌の紅点などに現れている。

また、頭痛が側頭部やこめかみあたりの胃の経絡上にある。普段から緊張すると下痢をし易い体質であることから、肝気の高ぶりが脾の臓(胃腸)に影響を与えたと思われる。脾の臓の原穴である太白穴などの反応や舌上の苔の厚さ、雨の日に悪化する事(脾の臓は湿気を嫌うため)からも証明できる。このような肝と脾の関係を「肝脾不和証」と呼ぶ。

(治療結果)
心兪穴に5番鍼で15分置鍼。(1診目~6診目まで同治療)

1診目:頭痛が1ヶ月近く楽になる。
2診目:(1ヵ月後来院)雨の日に頭痛発症し学校を休む。
3診目:治療後6日間、頭痛は無かったが1回だけ起こる。
6診目:以降頭痛は風邪を引いても起こらなくなった。

(考察)
東洋医学での肝というのは、肝臓を含む肝の機能を指します。肝の臓は「五行」で言えば「木(もく)」にあたります。
北辰会代表、藤本蓮風先生の著書「臓腑経絡学」の中に「木というのは、上下にのびのびと伸びていく。
この事を「条達(じょうたつ)作用」という。これは肝の臓の持つ自由に伸びようとする、あるいは外へ発散しようとする性質を示したものである
精神的圧迫によってこれらが出来ないと、肝の臓を傷ることになり肝気鬱血(肝気が滞る状態)疏泄障害(気のめぐりが悪くなること)を起こし、様々な病証を生じていくのである」といわれています。
閉所恐怖症もまさしく、心身共に伸び伸び出来ない状態が続いたことにより、狭いところにじっとしていられなくなるのです。

1回の鍼で頭痛がかなり改善され、6回の診察で完治しましたが、養生指導として歩く等、よく身体を動かすようにアドバイスをしました。
実際、じっとしている時に頭痛が酷くなることからも、運動は気を巡らすためには必要です。しかも10代と若い上、今までスポーツで発散させていただけに、運動は必要不可欠です。薬のみの処方では胃の弱い人なら尚更、根治するのは難しいと感じます。