ENGLISH

MAIL

WEB診療予約

実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

MENU

症例

2011年4月6日(水)

自律神経失調症、パニック障害 []

主訴:自律神経失調症、パニック
三田市在住 女性 41歳 主婦
初診日:平成22年10月中旬

(現在の症状)
最近、特にイライラ感が増し、脱力感、下腿の浮腫み、不眠などがひどくなる。ご主人にも素直になれず、反抗期に入った子どもに対しても辛くあたってしまう。

(既往歴)
22歳で語学を生かし旅行会社に就職するが、仕事がかなりハードで24歳時には持病の喘息が悪化。結婚後は温暖な地域に引越し喘息はおさまる。

妊娠しないため不妊治療を開始するが、35週目で切迫早産する。お子さんは、広汎性発達遅延などの障害があり、4歳でやっと自立歩行、意思疎通の会話が出来るようになる。
この間の様々な苦労は非常に大きく、座って食事をした記憶が無いほど。心身ともに限界になる。ここから車のブレーキを踏む足やペンを持つ手が震えだし、過呼吸になるなどのパニック症状が出現。心療内科にて薬を服用しながら子育てに奔走する。(約7年間薬服用)

36歳のころ、生理時小さな血塊が多数出るようになり婦人科へ。子宮内膜症、卵管閉鎖、子宮腺筋症など等、婦人科疾患が多数発見され、卵巣膿腫の手術を行う。
39歳時、現在の地に引越し、息子さんは特別支援学級に入学。ご主人は子供が年長さんの時から単身赴任となり、三田に引っ越してからは高知県へ赴任、週1回自宅に帰ってくる生活になる。更に三田へ引越し時に頚を痛め「頚椎症性神経根症」との診断を受け背中や足など様々なところに痛みが発症する。

(その他の症状)
・1ヶ月ほど前から喉が締め付けられ食事が喉を通らなくな る。(流動食)
・尿回数が、10回から20回と多い。(尿痛、濃い黄色の尿)40歳時子宮筋腫摘出後から。
・耳鳴りや頭痛が頻繁に起こる。
・花粉症や副鼻腔炎がある。(特に1月から3月ごろひどい)
・腹痛後下痢になる。
・口角炎ができ易い。

(特記すべき体表観察)
・顔面診:全体に白と青い顏色、目の上に青い筋がある(右>左)、心・肝の部位が白く抜けている。→肝気の高ぶりが非常に顕著。
・舌診:暗い紅色の舌色で、舌の先に多数の紅い点々がある。白い苔がべったりと厚く付いている。→舌先の赤い点々は気が上逆している姿。苔の厚さは胃の負担を示す。
・脈診:滑脈で、左の関上の位置に硬い脈が見られる。脈力幅とも有力。→実の脈。
・手の小指球が赤い。→身体の上部の邪熱が考えられる。
・原穴診:全体的に左原穴が虚、内関のみ熱感。右の太衝、合谷が実の反応。→心の臓と肝の臓の邪熱や実の反応が顕著。
・背候診:督脉上ほとんど全てが強い圧痛が見られる。両方の脊中起立筋が硬く持ち上がりが顕著。両方の志室の冷え。→上部の緊張、下部の弱りが見られる。

(診断と治療方針)
仕事など普段から徹底して頑張ってしまう性格の上、お子さんの障害をしっかり受け止め、彼のために様々な病院、訓練の場へと奔走する中、肝気が常に高ぶっている状態にあった。
肝気の高ぶりが昂じてしまうと、心の臓に影響を与え不眠などが発症し易くなる。

また、肝気とともに熱が上昇し易くなり、手や足(東洋医学では手や足は部分で捉えると上部(頭)にあたる)などが震えるという症状が起こる。(丁度、焚き火などの陽炎のように上の熱が震えを誘発する。)運動不足や生活の中に緊張状態が長く続き発散が出来なくなると、エネルギーの逃げ場がなくなり、パニックや体痛などの症状が容易に出てくる。
また、その緊張から来る肝気の高ぶりは、普段からの薬多様などで胃腸を弱らせていると、肝気横逆といって腹痛、下痢など脾胃に影響が出てくる。

様々な症状の中心は肝気の高ぶりにある。肝気の高ぶりが心にまで影響を与えていることから、心(心神)に直接アプローチするため、心兪穴を使用し不眠の改善を狙う。
次に、肝気の高ぶりに対し、一番反応が出ているツボを使用。肝気の本来の伸び伸びした状態に戻すため肝に関係の深い、百会、後溪、太衝などのツボを使用する事とする。

(治療経過と効果)
初診時~9診目:心兪穴(右)
★気持ちが楽になり、よく眠れるようになる。

10診目~12診目:百会穴(右)
★前日疲労の中、車の運転をし少しパニックに。パニックを収めるためにツボを変更。

13診目~22診目:後溪穴(右あるいは左)
★13診目パニック状態、口角炎で来院。22診目も親子三人で食事に出かけた次の日にパニック。治療院で暫く泣いて治療後すっきりして帰宅。

23診目~25診目:太衝穴(右)
★25診目は1ヶ月ぶりに固形のもの(サンドイッチ)が食せたと喜ばれる。体の痛みの10→3に緩和。術後、頭の上がスッとした。

26診目~39診目:後溪穴
★初診時の背中の脊中起立筋の異常な持ち上がりが平らになる。
★足の浮腫みもなくなり尿の回数も普通になる。
★腹痛、下痢が消失する。
★現在、子供さんやご主人に対する感謝の心が出てくる。また旅行などにも行けるようになる。

(考察)
患者さんは、本当に熱心に鍼灸を、また私を信じて治療に通われました。その事にまず感謝したいです。当初は、背中も丸く、目もうつろで、話し出すと頭が小刻みに震え目も鋭くなるといった感じで、非常に肝気が高ぶっている事が明らかでした。
余程、生活の中に緊張状態が長く続いているのだと感じました。
少しずつ治療の過程で彼女の話をお聞きすると、本当によく頑張ってこられたと涙が出る思いで治療にあたりました。
ここまで良くなったのは、彼女が、自分の思いを素直に話せたことが大きいと感じます。
よって、心の臓への影響はひどくなく肝気の高ぶりがメインだと分かり治療もし易いのです。また非常に注目したことは、実は、このように、パニックになり涙が出ている時は、体の痛みは無くなるのです。つまり、感情が外に出せている時は、体の痛みは無いのです。
本人もそのことに気づいて下さり、「痛みはあっていいんだ」と思えるようになってきます。
また、泣いている自分を客観的に見れるようになり「悲しくて泣いているのではない」と感じてきます。それから、見る見るうちに良くなっていきました。
表情も豊かになり本来の美しさが出てきてこちらが驚くほどです。

現在、関東大震災で被災された全員の方が、心の痛み、魂の痛みを訴えておられます。
それは、表面に出てない人も多くおられると感じます。
先日もある番組で、臨床心理士の方が、「体に反応が出てきているのはいい反応です。心が立ち直ってきている証拠。心の傷が深いと表面には出てこない。」と語っておられました。泣いたり体に反応が出ているのはまだ大丈夫だと・・・人間の精神と身体は想像以上に密接に繋がっている。その事を謙虚に見つめていく医療をと切に願うものです。

記事検索

カテゴリー

最近の記事

月別バックナンバー