故 和先生の所感

 父の後を継いで鍼灸師として半世紀が過ぎました。その間、日進月歩のすさまじい西洋医学の発展の中、三千年の歴史の間、受け継がれてきた古色蒼然たる鍼灸術で病気の人々と関わっている自分が、「これで良いのだろうか?」とよく自分に問いかけたものです。
  一方、鍼灸治療は医術として認められず、健康保険制度から除外され、科学性を持たない野蛮な古代の異教として、病気の治療術としての認識は人々の間に殆ど消え去ってしまいました。
  しかしこの間、鍼灸の治療を求めて来られる患者さんは無くなった訳ではなく、一生治らないだろうと宣告された方や原因不明の病気で苦しんでいる人たちが病の苦痛から、何とか開放されたいと一路の望みを托して治療を受けに来られています。

 このような西洋医学の時流の中で、私共の使命として病める方々の迷い苦しみ、
嘆きと同苦し、治癒させていただく事にのみ力を尽くしてまいりました。
  西洋医学のミクロ的分析は驚異的に人体内部の構造や仕組みを明解にいたしました。
が、東洋の見方は天人合一という宇宙と人間は一体であり、自然を離れて人間の存在は有り得ないというダイナミックな考え方です。宇宙を織り成す地水火風空は人間の生命のそのものの現象として見ていきます。
  陰と陽の調和、そこに生ずる運動は命の波動として近年注目を集めて参りました。
  人間の生命が如何に生命を輝かせ、より健康に、より快適に生きようと努力しているかという証を、胃之気(元気)という現象の中で捉え、脈に触れ経絡というルートの流れをみていきます。そしてその流れに点在する穴は、体内の変化を如実に伝えるセンサーとして皮膚の表面に散りばめられているのです。
  身体全体が自然治癒力のスーパーマンというところでしょうか?
  元気(胃之気)とは、命そのものの謂であり、ご自分の生命そのものがエネルギーを出し、良いお薬をつくり、バランスを整えようと努力している事を、もう一度確認してみてください。

自分で守る 自分の健康

<免疫力を高めよう>

21世紀 人類は事前環境の破壊の中でサーズや鳥インフルエンザ等の強力な感染症の拡大に「目に見えない敵との闘いが始まりつつある事を誰もが感じています。

医療事故や慢性疾患に対応しない医療現場から「統合医療学会」が発足しました。

アリゾナ大学のアンドリューワイル博士は「人には治ろうとする力が存在し、そのスイッチがある」(引用本名明記)と30年末自然療法の研究を続けて来られました。病気を治さない何かがある?と発足したのが統合医療です。

「自分の健康は自分で守る」といった考え方がそれぞれの中で芽生えており、
大変、悦ばしい現象です。

東洋医学は「未病を治す」予防する事を原点として

1.人間と自然との調和
2.生活の在り方(食・運動・睡眠)
3.心の持ち方


等を中心にすぐれた養生法や治療法を伝承して参りました。

その中で元気は「胃の気」ともいわれ生命力を維持する大切なエネルギーが
つくられる脾胃が重要視されております。

胃の気が全身をくまなくめぐる時血液もよくめぐり免疫力が備わってくるのです。

今回は胃の気を守るためご自身で気を付けられることを食生活を中心に列挙してみたいと思います。
ご参考になれば幸いです。



1.食生活を考える

A.バランスの良い取り方
全体食(丸ごと食べられる)が最高の自然食。
肥満の人の多くは偏食(炭水化物、脂肪、糖質のとりすぎで野菜ミネラルが不足している)

B.旬の命をいただく

春・・・苦みのたけのこ、山菜、よもぎ→冬期によどんだ血液の浄化
夏・・・キュウリ、トマト、ニガウリ、冬瓜→暑気をはらい夏負けや食中毒に対応
秋・・・柿、梨、栗、銀杏、南瓜、山芋→夏の疲れを取り、呼吸器を守る
冬・・・根菜類、鳥獣肉、魚貝類→精力を養い体を温める

C.身土不二
新鮮なもの、生産地の確認、生産方法(自然農法)

D.五味
甘、酸、苦、辛、塩味

E.自然なものを選ぶ
加工品、添加物をさける(白米、白パン、白砂糖-ミネラル、ビタミンの欠落)

2.正しい食べ方

A.自分の体に合った食事
年齢と運動量に応じて選ぶ
成長期-青年期労働する人→高カロリー
老齢期-デスクワークの人→低カロリー

B.腹八分目に医者要らず(貝原益軒養生訓)
8分目〜6分目 *良く噛んで食べる

C.朝食用の炭水化物は頭の回転のエネルギーになる。
肥満気味、新陳代謝の悪い人は炭水化物、脂肪、糖質を控えめにし、蛋白質、ビタミン、ミネラルを中心に取る

D.熱い物、冷たい物は避ける(常温が良い)
E.間食は出来るだけ控えた方が良い。
季節の果物、蜂蜜、黒砂糖等を選ぶ

3.日常生活の注意

A.適度の運動。手足をよく動かすと脾胃の働きが活発になる。

B.睡眠、早寝早起、脾胃が弱いと長い睡眠が必要となる。

C.くよくよと思い患うと脾胃の働きが悪くなる。

ストレスは脾胃の機能に異変をおこす。(カルシウムが消耗するので普段からミネラルを補給する)暴食又は食欲不振等又胃酸過多

E.中高年以降、下半身ばかり太る人は脾胃の働きがにぶって、新陳代謝の低下をおこして
  いるので食べ過ぎに注意。


元気(免疫力)を維持するまとめ

 1.正しい食事・睡眠
 2.自然との調和
 3.心は楽観的、自分を受け入れる
 4.目的意識を持つ
 5.体を冷やさない