症例

2016年07月27日(水)

一過性意識障害 [神経内科]

昨年10月に「一過性の意識障害」が主訴で来院された30代女性の症例です。

【症状】
約1年前夏頃から1年の間に突然意識が無くなり外出先で倒れる事7回(数時間意識が戻らず)。加えて、月経前に帰宅直後、玄関先で意識を失う事が毎月のように起こり、月経中(特に一日目)は外出先で意識が無くなる。

【随伴症状】
・立ちくらみ、フワフワとした眩暈(地に足がついていない感じ)と動悸。 

・食欲減退、嘔気(嘔吐なし)

・後頚部の張りがひどく首の回旋不可(左右共)。

・便秘と軟便を繰り返し、排便後栄養が全部出る感じがして疲労感が増す。(以前は便秘傾向)

・往復40分の徒歩通勤で疲労感。ビタミン剤を服用してお昼動ける。

・無汗(入浴時、運動時も)。入浴後息切れ。

・寝つき1〜3時間かかる、多夢。

【増悪因子】
肩こり〜頭痛時、疲れすぎた時(月経前と月経後1週間に疲労感増悪)

【緩解因子】
肩こりに関して:1〜2時間横になる、頭頂部の指圧。

【病因病理】
この患者さんは、様々なストレスがあっても中々発散することが苦手で内にこもってしまうタイプです。発散できないと、(肝)気の巡りが停滞してしまいます。

彼女の場合は、慢性肩こりが悪化してから発症していますので、肝気の停滞が体の上部に起こりやすい傾向にあります。地に足がついてないと感じるのもこのためです。

更に、悶々とした悩みが継続すると、脾胃に影響がでます。それは、食欲不振や便秘や軟便からも分かります。

脾胃は気血生化の源と言われているように、脾胃の弱りが継続すると栄養不良になり気血が不足し、貧血症状等が現れます。月経中の動悸や疲労感等からもわかります。

そして、血が不足すると、精神が不安定になったり、不眠になり易いです。不眠になると血を養えず更に不安感が増すという悪循環に陥ります。

月経中に発症するのは血虚(不足)のためで、月経前に発症しているのは、子宮に血が集まって髄海(脳)に血が不足するためと考えました。脈や舌、その他ツボにもそれらの反応が表われていました。

よって、証は、肝気上逆<心血虚証による意識障害として治療していきました。

【治療と経過】
1診目は打診を使用して、上に上がった気を下す治療をしました。2診目以降は、後渓を中心に、血を補いつつ上の気を下げ精神を安定するように治療していきました。
時々、配穴を三陰交に変えたり、脾兪を補ったりしていきました。

4診目ごろからよく眠れるようになってきました。強いストレスがかかると不眠になり、胃痛(空腹時痛は胃酸過多傾向→胃気逆)が生じます。

現在まで週1回の鍼治療を始めて2か月後の年末と春3月の2回倒れましたが、春は月経前でしたので、月経前には詰めて治療するようにすると、倒れなくなりました。

現在治療継続中です。経過は良好で多少のストレスがかかっても月経時でも倒れなくなりました。

【まとめ】
一過性の意識障害を東洋医学では「暈厥(うんけつ)」と言います。
『症状による中医診断と治療』では、「突然に意識が消失して四肢(手足)が冷え、一定時間の後に覚醒して、失語・顔面神経麻痺・半身不随などの後遺症を伴わないこと」とあります。

このような意識障害の症状には、鍼治療の効果大です。ただ、弁証分型も上記の著には6つ程挙げられており、多面的観察をしっかりして総合的に判断する必要があります。

また、その時点での証だけでなく、病因病理を把握して病の流れをつかむことが重要です。

実際この患者さんも、初めは虚>実を中心に治療していきましたが、治療過程で右内関というツボに熱を持って張ってきたり(沈んでいたツボが浮いてきたと考えます)、細脈が弦脈に変化したりしてきましたので、

治療戦略を変える(実>虚)必要があります。よって百会や督脈等実側のツボを時々使用しています。

身体からしっかり治療していけば多少のストレスにも強い心神になり根治できると考えます。









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