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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2010年12月7日(火)

唾液過多、喉の閉塞感 []

西宮市在住 初診時24歳 女性 臨床検査技師
主訴:唾液過多、喉の詰まり。
初診日:平成22年9月22日

(現病歴)
8年前から喉に塊があるような違和感を感じ、詰まったようになり耳鼻咽喉科にて検査する。異常は無く漢方薬(半夏厚朴湯)を処方されるが効果なし。また、4年前から、唾液が多く出るようになり意識して飲み込まないと口の中にどんどん溜まるようになる。病院にて喉の検査をするがこれも異常は無く、精神的なものではないかと言われ、抗不安剤を3ヶ月間服用する。症状の変化無くホームページを検索し来院された。

(既往歴)
小学校:アトピー発症。
中学生:便秘、口内炎もよく出来ていた。
高校生:頭痛、酷いときは嘔吐して寝込む。喉の詰まり感。
20歳:唾液が多く出はじめる。

(増悪因子)ストレスがかかった時など緊張時。
(緩解因子)仕事の後ホッとしたとき、1人でいる時、集中しているとき。

(その他の症状)
便秘、両肩こり、手足の冷え性、口唇上下とも荒れ易い。

(特記すべき体表観察)
脈所見:1息4至、力有り、左の関上と尺位に硬くてカサカサした(枯脈)がある。舌所見:紅舌でやや色があせている、白膩苔、湿潤、やや腫脹している。腹診所見:左脾募、肝相火、臍周辺の緊張。ツボ所見:神道の圧痛、太衝(右)虚中実、太谿(右)虚。

(主訴発症時の生活精神状態)
喉の詰まり感(8年前~)は高校生の時で人間関係などにストレスがあった。
唾液過多(4年前~)は臨床検査技師として実習や課題が多く多忙だった。

(現在の生活環境と食生活)
現在は、一日中パソコン作業や新薬開発の研究や実験などで魂をつめている。食事はコロッケ、肉食、油物が多くストレス時にチョコやポテトチップスを食べてしまう。

(診断と治療方針)東洋医学では、口中に唾液が大量に湧き、頻繁に唾を吐く事を「多唾(ただ)」といい、また、喉の詰まったような閉塞感を「梅核気(ばいかくき)」と呼んでいる。
患者さんは脾の臓が弱っているところ唇の荒れ、唇内側の口内炎、便秘、やや貧血など)ストレス過多となって肝気が高ぶり、更に脾を弱らせたために発症したものと考えた。
肝の臓と脾の臓は密接に関係している。
多唾は、脾虚湿生証(脾が弱ったため余分な水が口に溢れ出る)梅核気は、肝鬱気滞証(肝気が停滞している状態)とする。

配穴:1診目~3診目:百会
4診目~9診目:天枢
10診目~13診目:太衝

(治療経過)
1診目で良く眠れて3診目から梅核気がややましになる。7診目ごろには便通が良くなり、現在唾液も梅核気もかなり改善され、ストレスがかかっても発症しなくなってきた。

(考察)
様々なストレスがかかっても、うまく発散出切る人と出来ない人がいます。彼女は、沈思黙考型でどちらかと言うとストレスを内に溜め込み易いため、気の流れが停滞しがちです。
その上、誰もが経験するようにストレスで過食になりそれが脾に影響を与えてしまいます。脾の臓は血液を生成したり、水分をうまく代謝したりする作用があります。治療後、肝の気を巡らすことにより、便通と尿の出が良くなり身体の中の水分が排出され、唾液が溜まらなくなったのです。
彼女の様に、身体を治していけば多少のストレスには負けない身体になり、性格もよい方向に発揮されます。

2010年9月10日(金)

頭痛 []

豊中市在住 初診時26歳 女性 公務員
主訴:頭痛
初診日:平成20年4月

(既往歴~現病歴)
小さい頃から胃腸が弱く、食べ過ぎるとよく下痢をしていた。12歳の頃から、偏頭痛が発症し、目の前にチカチカした眩しさを伴い焦点が合わなくなってくる。痛みは、氷を食べた時のようなキーンとした激しい痛みで、嘔吐すればすっきりし頭痛も楽になる。この頭痛の繰り返しで学校も休みがちだった。中学、高校とバレーボールクラブに所属していたが、どちらかと言うと休みの日によく頭痛が発症。
就職してからストレスがかかると下痢になり、過敏性腸症候群と診断される。頭痛は、月に2回ほど起こるが、最近一週間前にも痛くなり、鍼灸院に通っているお姉さんの紹介で来院される。

(頭痛の増悪因子):肩こり時、雨の前の日、ストレス、夏、生理中など。
(頭痛の緩解因子):夜、11月から3月の間。

(その他の主な症状)
生理痛、冷え性(特に足)、時々胸焼けする、口内炎が出来やすい、寝つきが少し悪い。

(診断と治療方針)
頭痛は、大きく分けて外感病(風邪が引き金になるもの)と、内傷病(血虚、気虚、血瘀、痰濁、肝陽上亢など)からくるものとに分けられる。
患者さんは、体質的に胃腸が弱く、ストレスにより下痢を起こす上、口内炎がよくでき、頭痛は夏に悪化、比較的涼しい期間は起こらないことから、この頭痛は、胃腸の弱りと熱が関係していると考えた。
胃腸(脾胃)が弱いと肝気が高ぶりやすくなり、また肝気が高ぶると胃腸に問題が起こることは、肝と脾胃のつながりからも考えられる。(東洋医学ではストレス(緊張)がかかるると肝の気が上昇過多になるため「肝気が高ぶる」とも表現する)それは、嘔吐する事によって、頭痛が楽になることからも明らかである。また肝気の高ぶりとそれに伴う熱化は舌診(下記写真)からも十分うかがえる。

以上の理由から、この頭痛は「肝火上炎証」とし、百会穴、肝兪穴、神道穴、後谿穴のいずれか1穴を適宜使用し、治療をする。

(治療経過)
週1~2回の治療を開始してから、1年半の間に軽い頭痛が6?7回程度起こっただけで、薬も全く使用せずにすむ。嘔吐を伴ったものは1~2回あったが外食が続いていた時に発症した。今年に入ってからの8ヶ月間は、ほぼ頭痛は起こらなくなった。また、今まであった生理痛が数回の治療から殆ど無くなるなど体調がよくなり、肝火上炎の内熱のとれ方は舌診にも現れている。(下記写真)

(考察)
患者さんは、趣味で絵を描かれています。(プロ級の上手さ)その絵も、温かさやユニークさ、観察力の素晴らしさ、細かさなど見事なもので、描き出すと魂(こん)を詰めてしまう傾向にあります。魂をつめ過ぎたり、様々なストレス(緊張)は、肝気を高ぶらせ、胃腸(脾胃)の弱りに影響を与え助長させます。小さい頃からの頭痛だったため、いつ起こるのかとの不安が常にありましたが、長い間、頭痛がおこらなくなったため、現在はそのようなトラウマも消えました。また、自分の体質を知り、肝火が高ぶったら頭にアイスノンを置いたり、胃腸が弱らないように体調管理にも気を付けておられます。ますます素晴らしい絵を描いていけますように祈っています。

2010年7月31日(土)

子どもの便秘 []

西宮市在住 初診時 3歳 女の子
主訴:便秘

(病状、環境など)
お母さん37歳の時出産。ひとりっ子。
今年5月初旬ごろから便秘がひどくなり、4?5日おきに何とか出るものの硬い便が肛門で止まり、30分ほど苦しむ状態が続く。好き嫌いは無いが、食にはむらがあり普段から少食。来院されたのは6月下旬、6日間便通が無く、益々食が細くなっていくお子さんを心配され紹介にて治療院に来られる。
乳児期、夜泣きはしなかったが肝が高く神経質な性格。顏色は白黄色で赤みが無いが、家ではよく動いてあまりゴロゴロはしていないとのこと。

(治療方針)
肝脾不和証として治療をする。これは、元々肝が高い性格(神経過敏)によって脾の藏(胃と兄弟関係)を弱めたことにより食欲不振になり、脾の運化作用と肝の疏泄作用(全身の気をめぐらせる作用)が低下し便秘になったものと考えた。舌が赤い事やゴロゴロせずよく動ける事から、脾の臓の弱りより肝の疏泄作用の低下の方が優勢と考え、治療は古代鍼銀にて、百会、十井穴、背中の散鍼を中心に瀉法をし、古代鍼金で太白(右)を補う治療を施す。
これら古代鍼は、刺す鍼ではなく接触するだけの鍼で全く痛みはなく、当院では主に子ども用の鍼として使用している。治療時間も1分以内に終わり喜んで受けてもらえるのが特徴。

(治療経過)
鍼をした次の日には便通あり。その後、3日に1度治療に来ていただく中、6診目ごろには、排便時も苦しむことなく大き目の便がスッと出るようになる。
現在も2日に1回の排便があり、まったく苦しまずに綺麗な形の排便ができるようになった。胃腸が弱いと反応がある太白穴も初めは自汗していて(湿っていて)ツボの状態は弱っていたが、今はほぼ正常な状態に回復。
肝が高ぶっていたため、舌の先が赤くなっていたのも正常な範囲になり、肝が高いと反応が出やすい肝兪穴の持ち上がったツボもほぼ平旦になり、鍼灸治療の効果を体表観察からも察する事ができる。

(考察)
治療院に来られた時、表情も乏しく非常に緊張しているのが分かりました。
反面、人をじっくり観察できる大人っぽい面も同時に感じました。
このようなお子さんは、親の精神状態も敏感に感じ取り、我慢をしてしまう傾向にあります。子どもは、親が思っている以上に、小さくても親に気を使ったりしています。
お母さんには、「お母さん自身が忙しくバタバタされていませんか?」と問うと、確かに忙しいとのこと。
母親の精神状態は100%子どもの精神や体調に影響を与えるので、いつも何らかのアドバイスをさせて頂いています。小さいお子さんの便秘が最近増加傾向にありますが、便秘は緊張の現れです。精神的な緊張が影響するのです。子どもはお母さんの鏡です。お母さんのストレスや精神の緊張(多忙も含め)などを知っていくことは子どもを救っていく道につながると信じます。
このお母さんは非常に誠実な方で、子どもの体調にも真剣に悩んでおられました。
このように子どもの不調をいつかは治ると放置しないことは最も大事なことだと感じます。
そして、綺麗な子どもの身体に出来る限り薬を使用せず治癒していく鍼灸を知って欲しいと願います。

2010年7月16日(金)

不妊症 []

神戸市西区在住 初診時 32歳 女性 パート
主訴:不妊症

(病状、環境などの変化)
幼少の頃から手足が冷え、しもやけがよく出来ていた。
また、小児喘息だったがスイミングに通いだしてから改善する。
学生時代、運動は全くしなかったが、社会人になってからテニスやフラダンスに通い、運動の後は身体がすっきりする。
21歳から販売業に従事。立ち仕事だったが体調の変化は無く健康だった。
28歳で退職、結婚し神戸に移り住む。妊娠しないため病院にいくが、本人は検査での異常は見つからなかったが、ご主人の精子の数が少なく状態もあまりよくなかった。
タイミング療法に始まり、人工授精も10回施すが妊娠せず。その後、体外受精1回目に着床したものの9週目ごろ流産してしまう。その後も体外受精に数回チャレンジするが妊娠はしなかった。ご主人の帰宅は、9時?10時ごろで神経を使う仕事の上、運動も全くしていない。
紹介にてご夫婦揃って治療に来られる。

(その他の主な症状)
貧血症状、肩が凝る、目が眩しく乾燥する、胃が時々もたれる、冷え性(手足)など。

(治療方針)
肝鬱気滞証>脾虚証>腎虚証
舌の色あせ、白い苔、やや舌がはれぼったい状態である事、爪の状態や脾兪、胃兪の穴の反応と上記の自覚症状である、胃のもたれ、目が乾燥、手足の冷えなどを合わせ、脾の臓が弱る事によって、血の生成が不足し、上記のような症状が出現したと思われる。
脾の臓を中心として、脾と腎、脾と肝の関係も相互に悪化していると判断。
しかし、身体全体の状況は、フラダンス1時間半しても疲れることなくすっきりし、気のめぐりも良くなり身体が温まる事等から、脾の気虚を意識しながらも肝の疏泄(気を巡らす作用)の向上を考え、初期は後谿穴に置鍼を施す。9回目以降は、肝兪穴か脾兪穴のどちらかに鍼をする。

(治療経過)
週1?2回、御夫婦一緒に治療に来られる。仕事が多忙であったり、運動不足などで便秘になり肩こりも増すが、治療をする中で改善、貧血症状もほぼよくなった5ヵ月後、18回目の治療で自然妊娠が判明。
つわりも全く無く現在12週目で母子共に健康な状態である。

(考察)
ご主人は、運動不足の上、口内炎がよく出来たり左脇腹によくヘルペスができるなど疲れやすいと言われてましたが、照海(左)の鍼で体調が整い(上下のバランスがよくなる)元気になっていかれました。ご夫婦で一緒に来院された事はよかったと思います。奥さん自身も、検査に出ない所のご自分の体調を知り、精神的に苦痛を感じていた不妊治療を中止されたことが治療の効果をよりアップしたものと思われます。
御夫婦とも自然妊娠できたことに非常に驚かれ、その後も体調管理のため続けて鍼灸治療に通われています。

2010年7月14日(水)

妊娠に伴う浮腫 []

尼崎市在住 26歳 女性 主婦
主訴:浮腫(足>顔)

(病状・環境などの経過)
20代前半に左顔面にヘルペス、膀胱炎など患った他は健康だった。
23歳で初めて妊娠。6週目で子宮外妊娠となり赤ちゃんは駄目になるが、2年後再び妊娠。10週目で切迫流産しかかるも何とか持ちこたえる。つわりは軽かったが、9ヶ月に入った頃から浮腫がひどくなり、足がパンパンに腫れあがる。顔の浮腫みも出たが圧倒的に足のほうがひどかった。
出産前は1日何キロも歩くなど、かなりの運動をするが浮腫の改善は見られず、平成22年7月中旬、予定通り陣痛が始まる。子宮口がなかなか開かず微弱陣痛のため、陣痛促進剤を使用し、吸引分娩にて3日後やっと無事に出産を終えた。出産時出血が多く、動悸、ふわふわしためまいなどの貧血症状(検査の結果も貧血)がおこり、鉄剤を服用するもなかなか改善されず、浮腫も出産前よりひどくなっていった。体重も戻らず44キロから51キロまで増加してしまう。
このような状況の中、鍼灸院に来られているお義母さんから鍼灸治療を勧められ、往診にて、産後1週間目から治療を始める。

(その他の主な症状)肩こり、夜間尿3回、残便感有り軟便

(治療方針)体表観察にて舌の淡白色と白苔、顔面蒼白、足の冷えなどから貧血(血虚)の症状が酷く、背中の上焦(上のほう)の肌理(毛穴)が開き、筋縮穴の圧痛、舌の尖端に赤い点々(紅刺)がある事などを考え合わせ、血虚による脾虚証>肝鬱気滞証とし治療をする。
三里穴のお灸(左右の熱さが調うまで)と心兪穴(左)に鍼を施す。

(治療経過)
1回目の治療で尿の出がかなり良くなり、身体が楽になる。2診目後、足の指の付け根に少しだけ皺が出始める(浮腫やや改善)。4診目で足の浮腫は完全に消失し、貧血症状も改善された。多量の尿排出と共に体重8kg減となり身体も軽くなる。

(考察)
東洋医学でいう「脾の臓の機能」のひとつに「運化を主る」とあります。運化には、水穀の運化(栄養分を全身に巡らせる機能)と水湿の運化(水分代謝をする機能)の2つがあります。
この患者さんは、出産での出血多量により脾の臓の機能を著しく低下させ、水湿の運化に影響を与え浮腫が出現したものと思われます。また、水穀の運化は、胃の臓(胃袋に入った飲食物を消化)と協力し、それを血の源となる栄養素(水穀の精微という)の生成と運化を行っているのです。
利尿剤も使用せずこのように早く浮腫が改善したことは、三里(多気多血の穴)の灸によって血を増やしたことにより、脾の臓が運化作用を取り戻し、早い治癒につながったものと思われます。
三里の灸もはじめは21壮まですえないと左右の熱さが整う(同じになる)ことがなかったが、3回目には5壮で整うなど顕著な効果が見られました。(早く整うことは良好な証拠)
現在母子共に健康な状態にあり初めての鍼灸の効果を実感して頂いています。